プロローグ ちょっとした序文
ある噂がネット内を跋扈していた。
「死んだ人間は死後の世界で生活し、最終的に現実世界に再生できる?」
という、事実無根、根も葉もない都市伝説がネット上で投稿された。
一時は、ネット廃人たちが、
「んな、噂あるわけねーだろ!!んじゃ、ノシ」
「こんなこと信じる奴いたらゲロワロス」
などと噂を信じる者が絶えそうな流れに窮した。
だが噂を途絶えさせない為に策謀したかのように噂が再燃した。
今度は、妙にリアリティ溢れる内容だが、怪しい広告文句に違いない書き込みが綴られ始めた。
これらが例の一つだ。
「俺、パラディンになったぜ!!」
「私、アークウィザードに到達しました。」
「○○街の攻略はゴミだったな!!」
「こんな街がこの世界にあるのか!!」
ボスはまぁまぁ手強かったな!!
「あのダンジョンは財宝ザックザクやな!!」
「私は、アークメイジにクラスアップしました!!」
「ギルド組むの、結構大変だったよ!!」
「他ギルドとの協力プレイは病みつきですよ!!」
胡散臭さが衰微すると、ソーシャルゲーム内チャットルームの書き込みのように限られたホームページで掲載されていた。
その後も書き込みが留まることはなかった。
掲載元は、ソーシャルゲームのチャットルーム、ネトゲの末端バナー、インターネットの掲示板と複数展開していた。
始めは、チャット、バナー、掲示板などメジャーなツールで展開していたが、マイナーなツールにシフトチェンジせざるを得なかった。
これらの書き込みを鵜呑みにするネットサーファーたちは極小数でしかなかった。
ただ、ゼロではなかった。
オカルト好きや失意のドン底に堕ちたものが冗談半分に実行に移していた。
盲信するほどの人間はいなかった。
実体験ルポを掲載する宗教関連記事編集者やオカルトマニアの好奇心を掻き立てるゴシップほどの脚光を浴びなかったから。
雑誌や三流ルポ、ネットニュースの下位ランキングにすら入らなかった。
しかし、ランキングに食い込まなくとも、デジタルタトゥーになる資質は充分だ。
デジタルタトゥーは書き込まれた時点でデジタルタトゥーなのだから。
然れど、妄言や法螺話が羅列された中で、埋もれるはずの厨二臭い文言は頭角を現していた。
『数多の因果は、死者に、霞を掴むより困難─宇宙の真理を解く方が容易─だが存在証明不能な世界が数え切れない程存在している世界の内の一つに魂が漂流する。』
それは、旗幟鮮明であろう。
疑いの余地はない。
死後を認識出来る人間は未だ嘗て報告されていないのだから…………………………
だが、異世界の存在を知らぬ者と知る者のハンデの差は夥しい。
この『』内の言葉が何のハンデか、誰も理解も納得も出来なかった。
例え、天地の開きほどハンデを有していようと生存率とは直結はしない。