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二人の旅はこうして始まろうとする

待ってたか分かんないけどお待たせ致しました!第三話です!


 「ふむ。つまり貴様は『生き続ける呪い』に掛けられ、絶大な力を持つ魔王なら、と思いここへ来たと」

 「はい、そういうことです。まぁ1回目は呆気なくあしらわれましたけど。今回は話を聞いてもらえて良かったです」


 以前に小娘が来たときは「興味ない。失せろ」と切り捨てたからな。まぁ眠かったから仕方がないだろう。誰だって気持ちよく寝ているところを叩き起こされたら不快だからな。


 「お前の望みは分かった」

 「じゃあ!!」

 「だが、俺には貴様は殺せんよ。否――正確には殺せるが、生き続けることを止めることは出来ん」


 そう俺が言うと、希望に満ちていた笑顔が一変、今度は暗い陰を落としている。

 そのような表情をされても、俺にはコイツを終わらせることは出来ない。この世界の誰も、魔王()にそんなことは望んでいない。

 俺は、誰かの望みや願いを受けねば何も出来ない無力な魔王なんだ。



 「それなら!」と言って先に沈黙を破ったのは小娘の方だった。


 「それなら!ここから出て、私と冒険をしませんか!いやほら、私って死ねないからずっと色々な所を巡っているんですけどね。そろそろ一人は寂しいな~って。それに、魔王さんだって外の世界に行けば楽しいだろうし!それにそれに」


 面白いな、この小娘は。


 「いいだろう。お前の旅に同行してやる」

 「ええ、そうですよね。前回みたいに今回も断って……へ?」

 「お前の望み通り外にでてやると言ったのだ。そんな風に"望まれて"しまったら『望みに応える魔王』としては、断るわけにはいかぬだろう?どうした、もっと喜べ。どれ程の時が経ったかは知らぬが、漸く貴様の望みが1つ叶うのだぞ?そんなに蹲ってないで歓喜している様を俺に示してみろ」


 そう、そんな蹲って震えてないでもっと。ん?ふるえて?


 「おい貴様大丈夫か!まさかここに入るときに魔力とやらを使い過ぎたのか!あれは魔法使いにとっては生命線のようナ゛!!」

 「いぃやっったーーーー!!!ついに魔王さんが外に出てくれる!これで私の計画もスタートラインだぁ。あれ?魔王さん、顎を抑えてどうかしたんですか?」


 この小娘は自分がなにをしたのかも理解できんのか。

 貴様のせいだろうが!!と怒りをぶつけたいが、能天気に喜んでいる姿を見ると不思議とそんな気も失せるな。


 「いや、なんでもない。それより、ここを出るんだろう?早く行くぞ」

 「いや、そんな顎を抑えながら言われても大丈夫には見えませんて。それはともかく、私は魔法でスイーっと出られますが、魔王さんはどうするんですか?まさか壁を壊して、とかですか?」


 まったく、コイツは俺をなんだと思っているんだ。望まれれば如何なることもこなす魔王だぞ。脱獄程度なら赤子の手を捻るよりも簡単だ。


 「では行くか」

 「行くか、って言うってことは出るのは問題ないんでしょうけど、道順は分かるんですか?ほら、目を逸らしてもダメですよ。私が先導しますから、ちゃんと付いてきて下さいね」


 道を知らんのは仕方がないだろうが、ここに来たときの記憶は、人だった頃の記憶はとうの昔に擦りきれた。

 どれ程の時をここで過ごしたかは分からんが、この監獄ともおさらばか。



 「魔王さん、私の望みに応えてくれるのは嬉しいですが、ここを出るのは寂しくありませんか。外の世界に不安とかはないんですか。もう誰も、人間だった貴方を覚えていないかもしれないんですよ」

 「何を言う。そのような人間らしい感情など、俺にはもうない。それに過去の俺は過去の俺、今の俺は今の俺。最早別人だ。覚えてる輩が居ようが居まいが関係ない」


 あぁそうだ。俺はあの頃の、何も抵抗出来なかった無力な人間ではない。それに――。


 「それにな、俺は外の世界に少し期待しているのだ。」

 「期待ですか?それはどんな?」

 「寝具は柔らかいのか。飯は旨いのか。そしてもう1つ、人間はどのような悲鳴を上げるのか」


 俺が言うとキョトンとした表情を浮かべたが、すぐにニコリと笑って小娘は口を開いた。


 「魔王さんて欲望に正直なんですね。もっと、復讐だけが目的なのかと思ってましたよ」

 「何も当然なことを。俺は魔王だ、魔王は欲望に正直に生きるものだろう?まぁ人類に復讐するのも目的の1つではあるがな」

 「そんな風に自分のことを言うのもホントに魔王らしいですね」



 「とまぁそんなこんなで、この扉を抜けたら外ですよ。心の準備はいいですか?」

 「あぁ」


 俺は短く答え、重厚そうな鉄の扉を抜ける。

 外に出ると眩しい光が目を灼き、無意識に目を瞑ってしまう。

 そうか、日の光はこんなにも凶悪で、温かな光だったのか。


 「魔王さん大丈夫ですか?ずっと暗闇にいたからこの光は辛いですよね。気が回らずにスミマセン」

 「いや、大丈夫だ。大分慣れてきた」


 今の世界はどのようになっているのか。ほんの少しの期待を胸に目を開くとそは、焔の壁に包まれた氷原だった。


 「魔王さん驚いてます?」

 「ああ」

 「そうですよねぇ、私も最初にこの景色を見たとき、あまりにもいい景色だから氷原のど真ん中で大声で叫んじゃいましたもん。いや~、あれは気持ちよかったなぁ。魔王さんもやります?私耳塞ぎますよ?」

 「やらん」

 「えぇー、ノリが悪いですよ魔王さん」

 「悪くて結構。なんと言われようが俺はやらん」

 「はいはい、仕方ないから引き下がりますよ。」


 小娘が「あぁ、そういえば」と繋げて言う。


 「この島がこんな焔と氷の島になったのって、魔王さんを封印したせいだって知ってます?その表情を見ると、やっぱり知らないみたいですね。なんでも封印には膨大な魔力が必要で、地脈を少し弄くってたらこんなキレイな感じになったらしいですよ」

 「……そうか」

 「あれ、興味なかったですか?」

 「さてな」


 叫びたくなるかは分からんが、こんなにもキレイな景色が出来るなら、捕まっても悪くはなかったかもな。




 「ああぁぁぁあああ!!大事なこと忘れてましたよ魔王さん!!」

 「五月蝿い騒ぐな喧しい!で、なにを忘れたんだ?命か?」

 「違いますよ!命なんて(そんなもの)手放せるなら手放してますよ!!」


 茶化したことを後悔した。五月蝿い。


 「そうじゃなくて!自己紹介ですよ!」

 「そんなもの必要か?互いのことは分かってるだろ。俺は魔王でお前は不死者。お前は殺されたがってる。これで十分だろ」

 「全然足りません!それに小娘とか貴様とか呼ばないで欲しいです。私だけの呼び方で呼んでほしいんですよ」

 「分かった分かった。自己紹介だな。どっちからやる?」

 「じゃあ魔王さんからで」


 俺からか。こういうのは言い出しっぺからじゃないのか。面倒だから口にはしないが。


 「俺は魔王だ。お前も知ってる通り人柱となった人間の成れの果てだ。名前は、もう忘れた。この角と尾は自前だ、いつの間にか生えていた。以上だ」

 「はい、ありがとうございます。では、私も昔は人間でした。生き続ける呪いを掛けられてから何回も死にましたが死にきれませんでした。名前は覚えていません。代わりに色々な呼び方をされていましたね。一番気に入ってるのはシキガミです。死を祈る神で『死祈神(しきがみ)』。縮めて"シキ"って呼んで下さい。私もこれで終わりです」


 驚いたな。こんな陽気で能天気な小娘も、壮絶な過去を送っているのか。


 「まぁ、過去のことはどうでもいいか。よろしくな、シキ」

 「こちらこそ、名前を忘れた者同士よろしくお願いいたしますね。魔王さん」

友達のアドバイスを意識して頑張って書きました。

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