魔王の日常は壊れました
連続投稿です
とある監獄の奥底にソレは居た。
人のような姿にも見えるが、少なくとも人ではないだろう。
ソレは人間には無い禍々しく捻れた黒い角と、伝承にある悪魔のような大きく太い尾を持っていた。
ソレはいつからそこに居るのだろう。100日を越えた辺りで数えるのを止めたから分からない。
ソレは何故そこにいるのだろう。昔のことはよく覚えていない。
分かるのは自分が監獄に入れられていることと、自分が魔王だと言うこと。そしてそれを人々に押し付けられたということだけ。
別に人々を怨んでいる訳ではない。憎んでもいない。ただ死ねないから生きているだけ。外に出るつもりがないからソコに居るだけ。
光届かぬ深淵で、ただ寝て起きて、眠くなったらまた寝て、そんな日々をただ繰り返しているだけ。
一度だけ誰か来た気もするが、それからはまた同じ日々の繰り返し。
ソレは退屈だとは思わない。誰もそんなことは望んでいないから。望まれていないことは出来ない、望まれなければ出来ない。ソレはそういう魔王だから。世界中の人々に望まれて魔王になった魔王だから。
目を閉じてからどれくらいの時間が過ぎただろう。誰もいないはずの監獄に、自分以外の気配と仄かな光を感じて起きると黒いローブがいた。
「お久しぶりですね魔王さん、漸くお目覚めですか。魔王ってのも結構な寝坊助さんですね~。ていうか魔王さん、前に来たときとは見た目が違いますね」
「誰だ貴様、どこから入ってきた」
「どこって……普通にあそこの壁をすり抜けてスイーっと。ていうか、この状況に対してリアクションは無いんですか?」
なにを言っているんだコイツは。壁をすり抜ける?人間にそんな事は出来ない筈だ。いや、俺が知らないだけで魔法使いならばそのようなことも出来るのか?
いや、どうやって入ったかなんてどうでもいいか。
「何故ここに来た。俺に用でもあるのか、それとも魔王を討ちに来たか」
「私の言葉はガン無視ですか。挨拶もないし、私のこと忘れちゃったんですかぁ?」
「なにを言っている。ここに入れられてからは誰にも……いや、一度だけ誰か来た気もするが、まさか貴様が!?」
「はい多分それです!」
あのときの侵入者がこの小娘だと……!だがそれでは何故コイツはあの時と姿が変わっていない。人間はすぐに年老いてゆく生き物だろう。厳密にどれ程の時間が経ったかは分からんが、それでも数十年は経過している筈。それなのに――。
「あぁ、私の外見が変わってないってことに疑問がおありですか?それなら簡単ですよ。貴方と同じで、私も呪われていますから」
読んでいただき有難うございます
とりあえず今日はここまでです。
次回の投稿は……早くて明日です!