濡れた
まじめな顔をして、
いっしょに死にたいと、ゆう?
砂浜には汚れたサンダルが片方だけ、
濡れた砂に埋もれている。
ヒトデのかたちの掌大の木片が
そのサンダルを掴もうとしているみたい。
そんなバカなこと、あるわけないから、
そんな、バカな……と、つぶやく。
まじめな顔をして、
いっしょに死にたい、なんて、ゆうな。
バカげたふたりの心中ばなしだと
むげに笑い飛ばしもできないじゃない。
いつのまにか、
瀬戸に夕陽が降りてきているので、
わたしの止まっていた時間が
ゆっくりと波のように動きだす。
そして、
死にたいなんて、ゆうな。
ははは、
人生の黄昏とかいうけど、
そのまえにわたしたちの関係は、
沈み切った難破船のよう。
あの、難破船ていう歌謡曲、
明菜さんの真似で、さ、
アカペラで歌ってくれるなら、
心の痛み、まぎらわせるかな?
そっと、あなたの瞳を覗きこみ、
その涙がうかんだ褐色の情熱を
射るように抑えこもうとする。
その眼が覚める夜の訪れを待って、
ふたりの距離をもう一度測りなおそうとするため。
そして、死にたいなんて、ゆうな。
まだあなたは、そんなしあわせなんて、
世界中を探しても見つからないなんていうつもり?
だから、いっそ、死のうと?
バカげた夢とか、幻が、
現実に置換できるかどうかだけは、
なにはどうあれ、
この砂浜の砂つぶをすべて
これから輝き出す星たちの魂の姿だとする、
大げさな嘘も許されるかもしれない、
そこから星座の砂つぶを、
間違えずに掘り出してしまえるなら。
砂浜には汚れたサンダルが片方だけ、
濡れた砂に埋もれている。
さあ、あのサンダルが、サンダル座。
ヒトデのかたちの掌大の木片が
そのサンダルを掴もうとしているみたい。
ね?これが、ヒトデのてのひら座。
そんな砂浜の神話(ホントは与太話)
心にいっぱい詰め込んで、
なぁ、死にたい、なんて、ゆうなよ、な?
心中がイヤとかじゃあ、ないけれど、
(イヤ、それは死ぬのは怖いけど、
(あなたとなら、ね?
(それもありかな?
けど、
心中がイヤとかじゃあ、ないけれど、
そんな嘘みたいな気分で、
死にたいなんて、いわないで。
まじめな顔をして、
いっしょに死にたい、なんて、ゆうな。




