粘土のヤモリ
紙粘土は
僕の手のひら
ひんやりと慎ましく
確かな重さでのっていた
家の窓を這うヤモリは
いつもいじらしく
我が家の灯りを
見守ってくれていたから
僕は
粘土をまあるく捏ねて
そこから一匹
真白のヤモリをうみだした
尻尾は切れても
生えてこないし
なんとなく
がに股で不格好
指先のあとをつけた
窪んだ顔が
ツンと上向きに
精一杯の虚勢を張って
僕のヤモリは
乾かぬうちに逃げていく
窓の外の
白い月
粘土のこびりついた
僕の白い手
浮かび上がっては
何も掴み切れなくて
途方に暮れている
夜もすっかり深まる頃
耳元ですすり泣く声
僕のヤモリ
ずるずる這って
ヒビだらけ
切れた尻尾が生えてこないと
おんおん
おんおん泣くばかり
余った粘土を
丸めて伸ばして
千切れた尻尾にくっつけて
窓の外の
白い月
捏ねて伸ばした
白い尻尾
浮かびあがっては
皆
継ぎ足し継ぎ足し
生きていて
すべて
同じとはいかなくても
月に泣いてる
僕のヤモリ
乾く前に
おかえりよ
お前はお前、と
照らす月
ずりずり這って
ヒビ割れても
僕の白い手
明るい手立てに
汚れている