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ニライカナイ~過去から未来への夢の形~

山口多聞さまの架空戦記創作大会2015夏「架空の日本軍の決戦兵器を題材とした架空戦記」応募参加作品。

遠くの海上の水平線上に見えた“ソレ”は大きな白い鳥にも見えた。ボーイング747-200を改造したVC-25A≪エアフォースワン≫のコールサインで一般的なアメリカ大統領専用機。


それがF-18とF-22に護衛されながら着陸態勢に入った。ターボファンエンジンもカットしてほぼ滑空状態。高度50m前後。エアフォースワンは海面を舐めるように進入してきた。


「進入速度・進路、そのまま。滑走路オールクリア」


着陸管制担当官が手慣れた感じで誘導する。エアフォースワンはランディングギアを降ろし、滑り込んで来るように着陸態勢に入り、着陸。減速。フワリとその巨大な機体を滑走路に舞い降ろした。


停止した機体のハッチが開き、タラップが下ろされ、今回の主賓の姿が現れ、地上に降り立ちました。スーツを着た人物。世界中の誰もが知る、もしかしたら自国の首相よりも見覚えがある顔。ローマ教皇以上に日々、命を狙われる人物。

整列した海兵隊と周りを警戒するシークレットサービスに緊張が走る。そして同じく整列した日本側の儀仗隊面々も。


「首相、御身自らのお出迎え、感謝します」


「ようこそいらっしゃいました。大統領。さぞ、驚かれたでしょう」


「全くです。まさかエアフォースワンで海上のど真ん中(・・・・・・)に着陸する日が来ようとは夢にも見ませんでした」


そう、ココは。東シナ海の南西諸島西部の島嶼群宮古列島。宮古島の遠く海上沖合のど真ん中の世界最大のメガフロート基地である。今日はココで日米首脳による除幕式が開かれるのだ。


元々は第二次世界大戦中にイギリス、アメリカ、カナダの三カ国による共同研究開発されていた氷山空母を建造する≪ハバクック計画≫をアメリカが引き継ぐ形で研究が細々ながら続行。


特にアメリカ軍は1960年代から70年代にかけて国防高等研究計画局で「Mobile Ocean Basing System Project」と題してシー・ベイシング(移動海上基地)、通称[MOB(Mobile Offshore Base)]などこの種の海上基地施設の研究を実施していた。


が、建設予算と技術上の問題や未知の部分、台風などの自然災害への対処に耐久年数。そして軍用としての有事の際の問題点。


コレは基本的に鋼構造物であるメガフロートの場合、通常の滑走路は攻撃されて滑走路に穴が開いても土で埋めて再舗装で短期間で航空機の離発着能力が回復できるが、海上巨大構造物のメガフロートにはその短時間で修復可能な保証は無く、被害を受けた際の移動も困難。


また潜水艦による海中からの攻撃によるリスクなどにより研究はしたもの戦闘時の問題点解決の予算が多くかかり中断状態で建造も頓挫した。


また同時期に日本側も関西国際空港を建設前の1970年代後半に提案されたが当時、コストや耐久性などの技術的課題が山積し、棄却。その後も海洋国と云う国土面積の少なさなどから細々と研究だけはされ続けていた。


そこでアメリカ側から研究資料を一切合財を日本が引き継ぐ形で研究を続行。折しも普天間基地移設問題による本研究が浮上。


同時期に画期的な超軽量発砲コンクリートや高靭性ポリマーなど革新的な技術の開発に成功し、現実味が一気に帯び、日米の政財界を巻き込んだ一大建造計画はスタート。


特に日本側は2000年に住友重機械工業(現在の住友重機械マリンエンジニアリング)が主導のもと、横須賀沖にて1000m級の実証浮体が建造。


実際にYS-11などを用いた離着陸試験を行った。この時の結果を元に4000m級のメガフロートを建造できると自信満々であった。


そして建造されたのが全長5km、幅5km四方のメガフロート海上移動基地【ニライカナイ】


建造や運用の決め方には政府官僚と政治家と企業家達の喧々諤々な真っ黒なパワーゲームが起きたが、結局は日米共同で行い、基地の運用も双方が行う事となった。


特に日米共同での建造で最大の利点となったのは本基地の動力。コレは核・原子力アレルギーの日本サイドにとってはやりたくともやれない技術なので望外のシロモノであった。


搭載された炉はより安全で高出力のアメリカのロッキード・マーチン社が開発した核融合炉≪高ベータ核融合炉≫を6基搭載(現実には現在開発中。2024年までに実用化予定)


コレにより無限の航行力と莫大な電力、並びに20ktでの航行可能な速力を持つ。核融合炉の耐用年数も半世紀となった。


このメガフリートの建造により日米は建造ノウハウを獲得し、日本側はより大型の10km四方の航空宇宙試験場とロケット発射プラットホーム基地を兼ねた海上移動型の研究開発基地の建造、アメリカ側は〈ニライカナイ〉と同一サイズのモノを中東方面用の海上基地の建設計画≪ユナイテッド・ステーツ≫に着手した。


またツバル共和国やモルディブ共和国など水面が上昇すると水没の危機に見舞われる国や国土面積の少ない島国なども≪海上都市≫としての購入を希望し、建造期間と建造コストの安い1000~2000m級の海上都市建造計画も始動。


さて、除幕式の方はアメリカ海兵隊出身の政治家・俳優・歌手・スポーツ選手も招待されて華やかにテープカット。


メガフロートの周りにはモンタナに飛鳥、天鳳、鶴鳳、ロナルド・レーガンなど日米の戦艦群と空母群に護衛艦隊群の大名行列。


滑走路には最新の第5世代戦闘機を中心に日米の最新鋭機がズラ~リ。その周りにはカメラ片手のミリタリー雑誌の記者に各国武官達。


双方首相のよるテープカットがされたと同時に各艦からの祝砲に日米航空機体による曲技飛行。上手く撮れただろう?漏れ聞く話だとアメリカ側はF-22〈ラプター〉にB-2〈スピリット〉ステルス爆撃機を配備する話だ。


私も通訳として、広報官として情報を探らねば。とっ、その前に。ハー○マン軍曹にサインを頂かねばッ!そう思いながら、このSFの夢の形がどんな花を咲かせ、実を結ぶのか?その幸があらんことを祈りつつ、駆け足!

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