飛鳥~戦後生まれの不戦を誓った末姫~
山口多聞さまの架空戦記創作大会2015夏「架空の日本軍の決戦兵器を題材とした架空戦記」応募参加作品。
「黙祷!」
2015年8月15日正午。乗員全員で黙祷をした。ココは横須賀基地に停泊中の超特型警備艦≪飛鳥≫の艦上。
正式名称≪大和型改4番艦超特型指揮警備イージス戦艦“飛鳥”≫
あの第二次世界大戦中、世界最大最強を誇った戦艦大和を長女に持つ四女の末姫にして拡大改良された最初で最後の超大和級戦艦。そして最後に建造されたラスト・オーダー・オブ・ラスト・ドレッドノートである。
戦艦飛鳥の建造には紆余曲折の様々な出来事があった。まず史実より早いペースで大和・武蔵の両艦が建造され、太平戦争前に滑り込みで両艦ともに就役。
3番艦の信濃も先行する形で建造されたが、アメリカ・ドイツが20インチ砲、51cm砲を搭載した戦艦の建造を計画との情報をキャッチ。
情報を入手した大日本帝国海軍は4番艦は文字通り不沈戦艦を目指す為に大和級をベースに拡大改良した超大和級の建造をスタートさした。
建造に置いては大和・武蔵の問題点を洗い出されて、徹底的に潰し、そしてそのスペックは排水量10万トン。51cm又は60cm三連装砲塔4基を搭載。速力30ノット。設計段階から対空戦闘を考慮した兵装と徹底的に防御を施したものであった。
設計段階から300mともなる巨大戦艦となっており、ドックや補給施設・港湾設備などの問題からも建造は現在のドックでは不可能とされたが、戦前より超巨大艦の建造ために北海道の北海道工業地域の一つである室蘭にて新ドックを建造しており、室蘭にして建造を開始。
が、しかし、前代未聞の巨大戦艦の建造は難航。折しも戦局の悪化により資材と工員の不足により建造も停滞。そして信濃と同じく航空母艦へ設計変更案が提出。空母計画が持ち上がったが工期の関係上、建造は不可能。
で、かといって解体も手間がかかり、建造途中のままドックの上にその巨体を置かれたままとなった。
折しも太平洋戦争末期の1945年7月15日にアメリカ海軍艦艇が北海道室蘭市一帯に行った艦砲射撃。
<室蘭艦砲射撃>と呼ばれるこの攻撃は米軍が「日本が巨大空母を建造中」という認識により徹底的に行われ、この攻撃により船体に建造用のクレーンなどが覆いかぶさり、そのままの形で終戦を迎えた。
終戦後も撤去や解体に手間が掛かり過ぎる為にそのまま置かれたが、瓦礫の撤去工事は着々と進み、解体を待つ身となっていたが事体は急展開を迎える。
朝鮮戦争の勃発。そして冷戦に突入したことにより建造途中のままの本艦にも光が指した。
が、その運命は非情。ソビエト連邦が日本へ侵攻した際に敢えて囮として目立ち、敵の攻撃を吸引。多くの敵を釘付けにして敵を多く倒し、時間を稼ぐというのが目的であった。
その為≪世界最強の不沈戦艦≫と云うネームバリューで内外に多く喧伝し、あえて身を晒すことを義務付けられた。
またあわよくばソ連を戦艦建造レースに引きづり込み、国力を削る事も視野に考えていた。
建造には日本だけなく、アメリカやイギリスなどの戦艦の建造に携わった造船関係者も参加。
之には「戦艦は時代遅れ」と言われ、二度と戦艦は建造されない事が各国造船関係者も分かっており「それならば最後に相応しい戦艦を!」と云う気持ちから参加。
特にフランスとイギリスとアメリカの3ヵ国は日本政府と取り引きし、元乗員や技術者などから45口径46cm砲の詳細な製造ノウハウと運用手順を入手。
起工し、建造途中で中止のまま置かれたアルザス級戦艦1番艦〈アルザス〉2番艦〈ガスコーニュ〉とライオン級戦艦1番艦〈ライオン〉2番艦〈テメレーア〉モンタナ級戦艦1番艦〈モンタナ〉2番艦〈オハイオ〉に46㎝砲を搭載し、建造中の飛鳥の技術ノウハウを転用する目的もあった。
建造に携わった各国造船関係者の努力により1955年に就役。≪世界最強≫の名に相応しいだけの極めて攻防性能の高い戦艦として誕生した。
その性能は当初の計画通り以上のスペックを有し、再設計段階より対空戦闘・対魚雷・対ミサイル・対核攻撃を目的とした各種防御の強化と旗艦機能の拡張により、総合的な戦力が格段に向上。
排水量も10万tを超え、主砲は搭載用に試作した50口径60cm砲があったが製造納期やコストなどの面で難になり、大和級と同一の46㎝砲搭載案が出た。
が、ココに第二次世界大戦中、80cm列車砲を製造したクルップ社と60㎝砲を搭載、カール自走臼砲を製造したラインメタル社、戦後の苦境に喘いだ両社が共同製造を打診。搭載砲を製造した。
最大射程60,000mを誇る50口径60cm砲連装砲塔を前甲板と後甲板に2基づつ計4基を搭載。逆に装甲は敢えて重量軽減の為に対51cm防御に止めている。
なお、艦首にある御紋章が付いており、コレは戦時中に飛鳥用に作られて、そのまま倉庫にしまわれたモノを再度、取り付けられた。
その性能は「魚雷100発食らわさないと沈まない」「核を使わない限り撃沈不能」と称された。折しも就航は終戦から10年後の8月15日。終戦日と同日となった。
【飛鳥】と命名されて海上保安庁の艦艇として新たに就役した飛鳥だがその前途は多難。
<大和ホテル>や<武蔵旅館>と言われた大和と武蔵と同じく様に≪飛鳥御殿≫と云われ、また膨大な維持費から国会議員や市民団体から‟税金の無駄使い”と言われ、幾度も解体が検討されたが、その度に保全を求める署名活動が起きたため全て白紙になっていた。
また維持費を少しでも賄うため、映画・ドラマへ数多く出演し、また結婚式場として利用され、海上保安官はもとい、数多くの新郎新婦が挙式を挙げた。
因みに海上保安官は少し式場の費用が安くなり、料金を上乗せすると礼砲のサービスも。
当初の目的通り囮のしての意味合いでソ連との最前線である大湊基地に配備されたが後に海上保安庁艦隊総旗艦として横須賀基地に配置転換され、以来、横須賀の海に錨を下ろしている。
その姿から≪飛鳥城≫とも言われ、多くの市民から慕われている。が、海上保安官などからは別の二つ名で言われている。
≪抜かずの飛鳥刀≫コレは‟お守り刀”と同じ意味合いで何時からか呼ばれた「飛鳥が出撃する時は国難の時。だからこそ、抜かれぬ事が、無用の長物たる事が日本が平和たる証拠である」
こう何時の頃から言われた。この話には諸説あるが‟税金ドロボー”と言われた日頃から揶揄されて鬱憤が積もっていた乗員に艦長が言った言葉と言われている。
そう、我々は警察官。世間が何と言うと憲法9条を守り、不戦を誓った警察軍。市民の生活と生命を守りながらも、しかしその功績を誇ることは決して許されない。
二度と戦争の惨禍に国民を巻き込ませず、国民を戦火から守り、そして何時の日にか消えなければない。
その矛盾を受容しなければならない。平和において最も無価値で不必要な存在となる。
誰もが軍隊を必要としなくなる時、その時、帽子を脱ぎ、静かに立ち去り、市井へと混じり込んでいく。
≪平和の無為≫の虚しさこそ誉れ。<市民の生命と生活>その安寧を守ったという自負があればこそ、平和を受容し、平和の無為の未来を享受できる。それこそが我々の真に価値ある平和への意味。
ソレが我々、飛鳥の乗員の誉れにして、全海上保安官、全警察官の誇り。だから・・・我等はしっかりと日々の職務に従事する。
≪平和の無為≫という誉れを目指して。70年間の不戦。300万余りの散って逝った幾多の英霊と無辜の民の犠牲を決して無駄に致しません。
「弔砲、射撃用ー意!総員退避ー!」
弔砲の射撃ブザーが鳴り響く。艦内へ向かう為、足を歩みながら誓う。
「撃ちぃ~方、始めぇ!」
弔砲の鳴り響く中、再び誓う。100年の平和を。戦争と云う蛮行を許さい。罪のない人々を守る、新たな不戦の誓いを胸に秘めて。
【主要諸元】
基準排水量:110,000t
全長:333m
全幅:44m
機関:ガスタービンエンジン(400,000馬力)
速力:33ノット
航続距離:20ノット / 40000海里
装甲厚(最大)600mm(艦橋基部、複合装甲)
乗員:500名
[兵装]
50口径60cm三連装砲(4基)
オート・メラーラ 54口径127mm単装速射砲(12基)
20mmファランクスCIWS(16基)
RAM近SAM 30連装発射機(8基)
Mk41 垂直発射システム(前部128セル+後部128セル。合計256セル)
HOS-302 3連装短魚雷発射管(4基)
戦術高エネルギーレーザー〈HEL〉(8基)
[艦載機]
SH-60J/K哨戒ヘリコプター(6機)
[レーダー]
AN/SPY-1D 多機能型(4面)(1基)
OPS-28E:対水上用(1基)
OPS-20B:航海用(1基)
[ソナー]
OQQ-21 統合ソナー・システム(1基)
OQR-2D-1:曳航式(2基)
[FCS(射撃管制装置)]
Mk.99 ミサイル射撃指揮装置(4基)
Mk.160改 主砲用(1基)
Mk.116 水中攻撃指揮用(1基)
[電子戦・対抗手段]
NOLQ-3D-1 電波探知妨害装置
Mk.137 デコイ発射機(6基)
OLQ-1 魚雷防御装置(MOD+FAJ) 一式
対魚雷デコイ(4基)
もっと自由に作品を書いた方が良いかと思いやってみた。「PSYCHO-PASS サイコパス」「機動警察パトレイバー」「レヴァイアサン戦記(夏見正隆)」「機龍警察シリーズ(月村了衛)」「サイレント・コア・シリーズ(大石英司)」みたいに宇宙人からオカルトに怪獣まで何でもありな感じにハッチャけて気楽に書いてみてみようかな?