殺人鬼Ⅰ
カツ、カツ、カツ、カツ、カツ。
「お、おねがいだ!!
この、この町は!
この町だけは、止めてくれえ!!」
老人だ。
と、モルは思った。
「あなた!
お願い止めて!
あなたがアグレッサーの邪魔をすれば……!!」
嗚呼、馬鹿だ。
馬鹿だ。
馬鹿だ。
馬鹿だ。
馬鹿だ。
馬鹿だ。
馬鹿だ。
馬鹿だ。
馬鹿だ。
馬鹿だ。
なんて人間は愚かなのだ!
私の邪魔をするのならば、殺すのに。
モルは「チッ。」と舌打ちをした。
「邪魔です。
どいてください。」
「いやだあ!!
お願いだあ!
助けて、助けてくれよお!!」
老人は叫ぶ。
が、モルの心には届かない。
無駄なのだ。
「助けて!」でモルが許すのならば、こんなにもモルを恐れるわけがない。
なのに、この老人ときたら。
「もう一度言います。
邪魔です。」
モルは、静かに、冷たく言い放つ。
老人とその妻らしき夫婦は、身震いをした。
しかし、老人はまだ粘る。
「おね、お願いだ!!
息子たちの、い、居場所を!!
取らないでくれええ!!」
「さようなら。
時間切れです。」
モルはそう言い放つと、長い棒状の氷を瞬く間に作り、老人に氷の棒の先を向けた。
「ひ、ひいいいい。
や、止めてくれえ。
お願いだ、お願いだあ!!」
モルは、おびえて動けない老人のもとに歩いていき、固い氷の棒で老人の腹をえぐった。
「うぐああああああああ!!!」
「あなた!!」
ぐりぐり、ぐりぐり、ぐりぐり。
モルはどんどん腹をえぐっていく。
ぐりぐり、ぐりぐり、ぐりぐり。
「ぐええええっ!!
うえぇほっ!
げほっ、げほっ。」
「あなたァ!!
止めて、止めて、止めてェ!!
お、お願いだから……!!」
老人の妻は崩れ落ちる。
夫の腹をえぐる氷の棒。
夫の腹から滝のように流れる血。
夫の苦しげな嗚咽。
夫を見つめるアグレッサーの冷たい眼。
「止めてほしい?
馬鹿ですか?
そんなことを言うのなら、初めからもっと旦那を止めておけば良かったものを…。
これだから…。」
「そんな、そん、そんなっ。
そんなこと…わかっている、わかているわよっ!!
貴方は…貴方は、そんなに人を殺すのが、楽っ楽しいの?!」
老人の妻は震える声で言った。
その問いに、モルは手を止めた。
そして、老人に向けていた冷たい眼を、老人の妻に向けた。
「楽しくは、ない。
ただ、邪魔だ、愚かだと思ったから殺すだけ。
でも、どうやら、この老人より貴方の方が愚者と呼ぶのに相応しいようですね。」
カツ、カツ、カツ、カツ。
モルが、老人の腹をえぐっていた氷の棒を引きずりながら老人の妻に歩み寄る。
「い、いやあっ。
止めてェ!!
お願いだから、お願いだから、お願いよォッ!!
町を凍らすなら、わ、私をこっ殺す必要は無い、はずよっ!!」
老人の妻は涙を流して叫ぶ。
「やっぱり。
貴方の方を殺した方が良かった。
でもまあ、殺すのは一人だけなんて決まりは無いし…。
仕方がありません。」
モルは老人の妻の目の前まで行き、立ち止まる。
老人の妻は、後ずさる。
モルは、老人の妻が後ずさった分だけまた歩み寄り、氷の棒を持ち上げた。
「殺します。」
グサッ。
「―――――――――――!!
うわああああああああああああああああああああああっ!!!」