#04 ハイメタル
かつて、繁栄に湧いたある惑星で・・・
海と呼ばれた広大な海原は砂となり
そこから得られる僅かばかりの資源を巡り
人は未だ争い続ける黄昏の世界。
広大な砂原を悠々と進む巨大な船
それを遠巻きに見つめる集団逹
その目的は一つ
近日、あらゆる資源のエネルギーを上回る質量を封じた鉱石
【ハイメタル】
小石程度の大きさから、街一つの電力を補うことが出来るという。
新たな争いの火種はたちまち世界に広まった
まるで捕鯨でもするかのように
無数の集団が、輸送船に群がっていく。
「くそったれっ!」
「やっぱり嗅ぎ付けて来やがったか!?」
屈強な船員逹が、口々に叫びながら迎撃を始める
そんな中をくぐり抜け彼ら
【蛮賊】は内部へと突入していく。
船員逹と、蛮賊逹の戦いは激しいもので
辺り一面を爆炎で被い尽くすほどだった。
「こいつが、お宝か・・・?」
「思ったより小さいな?」
「これでしばらくは遊んで暮らせるぜ・・・!」
お宝を手にしようとした瞬間、何処からか銃撃を受ける。
その弾道は正確に2つの距離を隔てる。
「!!」
蛮賊逹の視線の先に映るのは
小柄ながら闘い慣れたオーラをまとう一人の少年
「ガキ・・・!?」
「生意気にオレらの上前ハネる気かよ!?」
脅すように喰い掛かる。
「・・・・・・」
深く被ったフードに触れようとした瞬間
ふたりの男逹は、やられたことさえ気付かず倒れ込んだ。
「弱ぇよ」
フードの中から溢れ出す金色の髪
まるでそれ自体が宝石のように輝いている
少年だと思われたその素顔は
幼いながらも力強い瞳を持つ少女であった。
「はるか、こっちはかたづいた。」
「こちらからの敵、確認できません♪」
悠々と目の前の獲物に手を伸ばす。
「ただの石ころにしか見えねぇけどな」
手の上で弾ませながら呟く。
「でも、ソイツ1つでこの船ぐらいはフッ飛ぶ威力があるんだぜ?」
その言葉を合図に辺りが光に飲み込まれる。
とっさに身構え自分の身を守る
しかし、その隙を突かれ手にした宝を奪われてしまった。
古い手にひっかかったもんだと舌打ちをする間も惜しんで反撃に出る。
「おっと!」
あっさり身をかわす
「やるねぇ、何より先に反撃するとは♪」
軽口を叩きながらも、きっちり間合いを広げていく。
「コイツはお子様の手に余るもんだからな
オレが有効に使わせてもらうぜ♪」
手にした宝を、ちらつかせながら
その場から逃れようと身をひるがえす。
「伏せてくださ~い!ローズお嬢様ぁ!」
緊張感の感じられない声がする中から、凄まじい銃撃が繰り出される。
「うおっ!?」
敵味方お構い無しの銃撃から逃れるように飛び退く。
「あっっぶねぇだろ!?はるかっ!!」
言いながらも、きっちり避けているあたり慣れを感じる。
「あははははは♪」
もはや、聞く耳持たないようだ。
「ばっ、ばかやろ!」
「お宝に当たったらどうすんだよ!」
2人して逃げ惑う。
「やめんかっ!」
いつの間にか回り込んだはるかの背後から突っ込む。
「めちゃくちゃしやがる・・・」
はっと自分の手にあった物がないことに気付く。
「うげ!?」
軽い音を立てながら、船の動力部に転がり落ちていくのは【ハイメタル】
激しい閃光が砂浜一帯に、拡がっていく
それはまるで夜明けを思わせる光景であった
そしてそれからどれくらいの時間が過ぎたのか
そこには巨大なクレーターが残されているだけであった。