#03 護るべき家族
あの日の事は、よく覚えている
そう、初めて心から笑えた日を。
「これまでです・・・」
あくまで表情を変えること無く告げる
ホウキが変形した大鎌が、彼女の喉元に光る。
「甘いね!」
地面に拳を叩き付け叫ぶ
その刹那、地面が割れお互い落ちていく
「殺れる時に殺るのが戦いの鉄則だよ!」
私は、そう教えられてきた。
この世界で強く生きていくために
物心付いた頃から、私は戦いの中にいた。
家族も無く、帰る場所も無い。
「今日から、この船がお前の居場所だ」
私に、家族と居場所をくれたのは
【サファイア・ハート】
世界を又に駆ける【蛮賊】だ。
だが、ある事件を切っ掛けに
私たちはバラバラになってしまった
生きているのかも判らない仲間逹
いつか探し出すために
独り世界をさ迷い続けている。
例え全てを敵にしたとしても
「!!?」
急に意識が現実に引き戻される。
「って、気絶してる場合じゃねぇよ!」
再び状況を把握して、一人で突っ込む。
落ちた場所は、あの水の中。
深さはかなりのモノである
急いで酸素を得るために
水面を目指し水を掻く。
その視線の先に沈んでいく何かが入って面食らう。
視線の先には沈みゆく
【メイド(ホウキ付き)】
それでも表情は変わらない辺りに困惑する。
「なぜ助けたのですか?」
彼女に襟首を掴まれて、ようやく地面に足を付けた二人。
「なんでって・・・」
彼女の顔が険しく変わる。
「生きてるからだよ!」
ぶっきらぼうに言う。
「生きている・・・」
いつか聞いた言葉が頭に響く
『お前は生きろ・・・!』
それはどこか懐かしい声。
そして微かに誰かの顔が重なる
懐かしく、何よりも大事にしていた存在。
「なにが、おかしいんだよ!?」
「しょうがないだろ!?」
「身体が先に動いちまったんだから」
立て続けに言葉を連ねる。
私は、笑っていた
ただ、ただ、おかしくて
そして何よりも
あの懐かしい匂いを感じた気がしたから。
「あぁ、もう笑うんじゃねぇっての!」
ふてくされたように言う。
私は、彼女と共に生きたいと思った。
あの日、記憶と一緒に無くした想いがまた
得られると信じたくなったから。
例えそれが、どんなに辛い現実だとしても
彼女となら、はね除けて歩いていけると思ったから
「はるか、準備は良い?」
お嬢様の声が、私を現実に引き戻す。
「目標、三十秒で視界に入りますぅ♪」
構えた私の武器
『質転×到』(スナイパーライフルモード)の
スコープを確認する。
「よし!」
彼女の声が響く。
「今夜のディナー、御馳走よ!!」
言いながらターゲットに突撃を開始した。
私は生きている
共に生きる喜びを分かち合える
共に笑い合える
一番大切な
護るべき『家族』と共に。