パパとママでェェェェェェェェェェェす!!!―――――――よろしくお願いしまァァァァァァァァァァァァァァす!!!―――――――――― byヒカル&ミーナ
プロローグ完結みたいな
ペラッ タンッ
「ふんふんふふんふふふんふんふふふふんふ~ん♪」
「それ何の歌?」
「知らね」
「あっそ」
ペラッ タンッ
「暇」
「右に同じ」
「ちょっとアンタ、なんかやりなさいよ」
「今、手が離せない」
「それもそうね」
ペラッ タァンッ!
「「(あと何日かかるんだろうコレ)」」
二人の前には、膨大な数の書類が山積みにされていた。
さて、こうなった経緯を話そうか。
俺達、召喚士であるヒカルと魔王ミーナは、異界の門を開きました。
「……ど、どうしようコレ」
「ちょ、ちょっと待って……や、ヤバい……手が離せないわ」
異界の門を開いた所、何かが扉から俺達二人の手の中に飛び出してきたんだ。
ミーナは怒りで我を忘れていたし、俺もミーナあの対処で精一杯だったから避ける事も出来ず。
二人で受け止めた結果、二人で不安定な体制で抱きかかえる事になってしまった。
それは、小さな小さな可愛らしい子供。
顔立ちはそれはそれは綺麗で、白い入院服のような服を着て、あどけない寝顔もこれまたgood。
艶やかで長めの髪から推測するに女の子だと思われる。
どうにかしておろそうとするも、不安定すぎて、しかも俺たちの魔力もほぼ無いから魔法も使えないと来た。
「おい、起きろ。
おい、おじさんたちお前さんが起きてくんねーと身動きとれんのよ」
「起きてー、ね?起きて」
優しく二人で声をかける。
まるで夫婦のようだと後にディスクは語る。
そんな事はさておき。やがて子供があくびをして、眼をこする。
「お、おはよう」
「おはよ……?」
「え、えぇ、おはようね」
戸惑いながらも、俺達は子供と挨拶をする。
子供は、俺たちの顔を寝ぼけ眼でじーっと見る。
きょろきょろとあたりを見渡し、そしてやがて完全に眼を見開く。
「「お、おうふ……!」」
二人して奇声を上げた。
なんとも可愛らしい子ではないか。
漆黒の瞳が、すべすべしてそうなほっぺたが、そしてぽかんと見上げるその顔が、俺たちの心を射抜く。
やばい、可愛い。
「だ、だめだ……俺は、俺はもう駄目かもしれない……」
「ま、魔王でよかった……この子に会えてよかった……!」
となりのミーナなんかヤバい事になってる。
そういえば先ほどから胸を押しつけられていた。
が、そんな事も気にならない。
「ん~?」
ぐっしぐし眼をもう一度擦る。
そのしぐさも本当に可愛らしい。
で、もう一度こちらを見るのだ。
可愛い。
「…………」
何か言いたげな眼でこっちを見ている。
「どうした?
何か言いたい事があるのか?」
「言ってごらん?
何でも言ってごらん?」
ミーナの眼がギンギラギンにさりげなくヤバい。
そして、数秒後。
俺達は戦慄する。
「パパと……ママ?」
「「……え?」」
少し疑うような眼で、俺たちに問いかける。
「パパと……ママ!!」
「え?いや、俺達?」
「うん!
パパとママ!」
「ママ?」
「ママ!」
にっこにこ。
それはそれは、もひとつおまけにそれはそれは可愛らしい笑顔で。
「「…………」」
もう駄目だ。
この子……この子が俺の子?
ってかミーナがママ?
おかしくね?ってかさっきまで殺し合いしてたんだぜ俺ら。
いやいや、まってくれ。
ちょっとした勘違いかもしれない。
もう一度、聞いてみよう。
「俺達が君のパパとママ?」
「ふぇ?」
それを聞いた瞬間何故か凄く不安そうな顔になり、涙目になっ……て……?
「パパとママじゃ……ないの?」
「パパとママでェェェェェェェェェェェす!!!」
「よろしくお願いしまァァァァァァァァァァァァァァす!!!」
惨敗である。
それから、この子に計測魔法をかけた。
計測魔法ってのはそいつの情報を知る魔法。
熟練したやつならそいつの底の底まで見れる。
そのため、使用には免許が必要で、免許所得までの長さと、最後に精神を免許取得者にのぞき見されることから、絶対にやりたくない魔法第一位とされている。
ちなみに免許なくやったやつはこの国特有の地味に壮絶な嫌がらせ刑に処される。
例として、五年間手足全て固定された隔離牢獄の中で、この世界に居る蚊、《蚊々》に刺され続ける刑などがある。ご飯はつくよ。
ミーナが抱きついて離れないが仕方ない。
計測魔法は取得難易度の割に、魔力消費が軽いのでなんとかギリギリってところだが発動できた。
「ワオ」
魔力?あぁ、今の俺並です。
それと、何か分からないが、でかい違和感がいくつか。
「あぁん!
可愛い!可愛い!歩ちゃんか~わ~い~い~!!」
「ま、ママ、くすぐったいよぉ」
コイツの名前は高崎歩。
七歳で、身長125、体重19。
よく分からんがやせ過ぎじゃないだろうか?
好きな食べ物……ありゃ?よくわからん。
そして、奇妙な違和感。これの正体がまったくつかめん。
俺もまた、修行不足と言う事なのだろうか。
って……男!?
「なぁ、歩……でいいんだよな?」
「うん、パパどうかした?」
横からミーナが睨んでくるが、気にしない。
「歩は男の子だよな?」
「うん!」
男の子確定です。
いや、男の娘確定ですね。
横で、ミーナがキラキラしています。
「性別による性的障害は最早無い!ならばどう攻める!突撃じゃ!!倫理は最早崩れた!」
いや、色々あるぞ?まずこの子が七歳と言う点とか。
仮にも親になってしまったこととかな。
さてさて、何故かほのぼのとしていますが、魔王と我々ヴァルクロ王国は今ちょっとした戦争中である。
魔王復活をきっかけに、各地に息をひそめていた魔物達が活性化。
ちなみに、数日前リンケイン王国の使者が来ていた要件はまさにそれ。
本能のまま活動し、人の言葉を話せない魔物達。
まぁいわゆる低級の魔物がわきにわいたのでこっちの戦力じゃ足りないんでたっけてドラ○もんということらしい。
とりあえず魔術師部隊を三隊(四人で一部隊)送ったらしいです。
「でさ、お前どうすんの?」
「ん?何がよ」
ミーナに聞いてもこんな反応ですね。
こいつは緊張感とかないの?ねぇ。
「戦争だよ戦争!
お前の復活の予兆を掴んだ魔物共が暴れてんの!
続けんの?やめんの?」
「やめる」
即答ですか。
「だってぇ……歩ちゃんと一緒に居たいんだもん!
ね、歩ちゃんもママといっしょがいいよね~!」
「うん、ママと、パパといっしょがいいの!」
「あぁん!
ずっと一緒にいるからねぇ~~~~!!!」
ダメだコイツ。
顔がデッサンが狂ってきている。
「じゃ、どうすんの?
どうやってこの戦争止めるってんだよ」
「は?
いや、私が言えばこっちは大丈夫なのよ!
それよりあんたのとこはどうなの!?
こっち、そっちに特に恨みは無いけど、あんたら人間にはこっちに恨みあるんでしょ?」
確かにそうだ。
こっちは相手方の低級魔物とは言え、村いくつか壊されてるし、何人も死者は出てる。
魔物の方は低級位しか被害ないからそう言えるんだろう。
大侵攻の時にだってこっちは必死になって殺しまくったから、もしかしたら俺ピンポイントに恨まれてっかもしんねーし。
「ごほん。
やっと出番のようだね」
「あん?
ディスク、いたのか?」
「いたよ……視界に入ってなかっただけで、描写されてなかっただけでいたよ……」
「そ、そいつはすまねぇ……」
とりあえず素直に謝る。
ごめんね。
「で?あんた……えっと……あ、どっかで見たことあると思ったら龍王の娘さんじゃない?
あらあらあらあら……でも背も胸もちっちゃいのねぇ……」
「大きなお世話だよミーナ。
僕はまだ子供でね。
まだ数百年しか生きてないんだ。
で、その戦争を止める案だけど」
「やっぱ気にしてんのかお前……。
大丈夫だって……需要はあるかr「案だけどォォォォォォォォォォォォ!!!」お、おう……」
必死すぎワロタ。
「さてと、ま、簡単だな。
ヒカルはこっちじゃ英雄みたいな扱いだし、そんな中でも街とか平気でうろついて町人にまじって酒飲んだりするから四大国って結構ヒカルに対して寛大なんだよね」
「へぇ、そうなんだ……全然知らなかったぞおい」
「君のことだろ……?」
いや、だって確かに結構有名だとは思ったけど、ここまでとは。
まぁ、結構酒飲みに繰り出してっけど。
居酒屋のおっちゃんと仲良かったり、宿屋のバーのマスターとかと仲良かったりするけども。
「で、なんか不祥事的な物も「あいつがやっちった」っていうと「それなら仕方ないな!」っていってくれるんだよね」
「おい、なんかさりげなく変な事言わなかった?
おい、どういうことだよおい。
こないだ酒飲みに行った時妙に皆優しかったのはそういう事か?
滅多に奢りなんてしない四十後半の親父さんが「疲れただろう?奢ってやっからまぁ一杯飲め飲め」とかって奢ってくれたのってお前のせいだったりするの?ねぇ」
「で、まぁこっちの世界で信用のあるヒカルだから、多少の無理は大丈夫だと思うんだよね」
「聞けよ」
街に繰り出しにくくなるだろが。
俺、街で仕事とかあるんだけど?
「それで、まあその戦争を止める手段だけど。
魔物側で融通ききまくるミーナと、人間側で融通ききまくるヒカル。
その二人が一緒なら世間も納得するよね?」
「はぁ?」
歩君も懐いてるしちょうどいいよね。と一人で頷く。
「おいおい、なんの話だよ。
はっきり言えっての」
「大臣連中にも言われてたんだよね。
『ヒカル様もそろそろ身を固めたほうがいいだろう』ってさぁ。
結婚しろ」
「「……………………は?」」
という訳で、僕達結婚しました。
冒頭に戻る。
書類の山は減りそうにない。
もう何時間続けているのか。
どうにかなっちまいそうだ。
「“歩条約”……ま、あいつのおかげで戦争に終止符を打てたってのは認めるが、この名前はどうだろう……?」
「いいのよ、いいのよ。
私が決めたんだから」
歩条約。
これは人間と魔物の間にできた平和条約。
呆れるほど本当に呆れるほどあっさりと、俺たちの結婚は通り、魔物側も人間側からも祝福された。
なんて無理やりなんだ。
国総出のパレードが行われ、魔物も人間も三日三晩騒いだ。
こういう時って普通差別起こらね?
全然起きない。何仲良く踊ってんの君達。
ゆるくね?っていうかあいつはいつかやると思ってたみたいな目で見んな。
ってか何よりも納得できなかったのが、大臣共。
なんだよ「ヒカル殿はいつ召喚獣達と結婚してもおかしくなかったから」ってよ。
ふざけやがって。するかっての。
この条約の条件は、まず歩に傷を付けないこと。
そして、魔族、魔物、人間、亜人。
全ての種を平等に扱うことである。
それは、全て俺達の結婚と、歩の存在があったからこそできたことである。
この条約が施行されてから、王国の大学に医師を目指すローパーとか、学校の先生を志すミノタウロスとか、大工を目指すゴブリン魔物側から家族総出で出稼ぎに来たアントアラクネ等々が続出。
人間達と一緒に、楽しく学んでいる。
で、そのしわ寄せというかなんというか。
各地方に回す書類なんかが大量に俺達に押し寄せてきているのだ。
あーあ、やだやだ。
こんこん。
「ぱぱー、ままー、おちゃだよー」
歩だが、今は俺達の息子兼補佐役となっている。
よたよたと盆の上の湯のみをこぼさないようにこちらに近づいてくる歩。
で、その横で。
「ほら、頑張りなさい。
あとちょっとよ」
ピクシーが護衛についてます。
おうおう、よたよたと……。
「歩ちゃんかわいい……♪」
恍惚なヤンデレのポーズをやめろミーナ。
特にヤンデレでもないだろお前。
だから眼をうるうるさせるのをやめろ!
「……どうぞっ」
「ん、ありがとう」
「ママも、どうぞっ」
「偉いわねー、歩ちゃん。
お茶ありがとう!」
俺の反応が淡泊?
いや、それはしょうがないだろ?
俺の今の立場は、コイツの父親で、ミーナの夫(未だDT)、それから歩の守護者だからな。
どっしり構えて、こいつらを見守る。
それが今の俺だ。
この守護者ってのはあの“声”に頼まれたからだ。
俺をこの世界に落とし、自分が地獄に落ちてまで守りたかった者がこいつなんだ。
どんな障害だろうと、守ってやらねばなるまいよ。
第一、宮廷召喚士で、英雄なんて奉られてんだ。
人一人守れんでどうする。
まぁ、守る必要もないくらい、今の世の中は平和だけどな。
「パパ、お膝すわっていい?」
「ん?あぁ、おいで」
笑顔になり、ぽんと軽い身体を俺の膝に預けてくる。
どこかいい香りのする髪をなで、気持ち良さそうに眼を閉じる。
女の子にしか見えない。が、これをいうと歩は怒るのでやめておこう。
「アンタ歩ちゃんよこしなさい!
ほぉら歩ちゃん、ママのおひざにおいでー」
「残念、今は俺の番だぜママ」
「パパの番ー!」
悔しがるミーナを横目に、俺は書類作成を再開した。
ピクシー、戻っていいぞ。
皆様、この小説をお読み下さり誠にありがとうございます。
さて、これからこの三人、ヒカル、ミーナ、歩(+α)が、どのような騒動に巻き込まれていくのか。
むしろ平和な日常を過ごしていくのか。
これからも是非、よろしくお願い致します。
言っておきますが、この作品はコメディです。