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勇者召喚の儀、頼んだよ byディスク=カルテラウ=ヴェルクロ

ヴェルクロ王国

これが俺がいる国の名前だ。

世界四大大陸の一つ、ヴェルクロ大陸を統治する大国。

四大大陸の中でも、最も魔術に長けた国である。

ちなみに名産品は食用の薔薇。


「転移魔法……?

 この魔力は……ヒカル様か」


王城東の塔最上階の俺の部屋から、転移魔法で謁見の間の前に転移する。

勿論、護衛にエリゴスがいるが。


「王は居られるか。

 今すぐに、話すことがある」

「ヒカル様、只今リンケイン国の使者が参られております。

 しばしお待ちを」

「待ってからじゃおせーんだよ。通せコラ」


軽く脅すように兵士を突き飛ばし、扉を開ける。


「あれ、ヒカル?」

「邪魔すんぞディスク。」


煌びやかな玉座に佇む容姿端麗な少女。

このヴェルクロ王国の王ディスク=カルテラウ=ヴェルクロである。


「ったく……お前龍王の娘だろ?

 今の気付いてるだろうが……」

「あはは……こんな時こそ慌てちゃいけないと思ってね」


困ったように艶やかな金髪を掻く。

少しは慌てろ。


「そちらはリンケイン国の使者殿か。

 今日は少々都合が悪くなったので、すまないがまたの機会に頼む」

「あ、あなたは……?」


リンケイン国独特の薄手の鎧を身に纏う騎士が俺を困惑の目で見る。

その視線に、俺は名前で答える。


「ヴェルクロ王国の召喚士、ヒカル=カゲサト」

「!?

 あの大侵攻を止めた英雄……こ、これは失礼を!!」


騎士は大急ぎで謁見の間から出て行った。

どこに目があるとも限らないので、視覚遮断結界と無音結界を張る。


「さて、早速だが……」

「うん、ほんと凄い魔力だよ」

「くそっ……忘れてたのにあの痴女が……」

「認めなよ。

 君が封印した魔王の復活だ」










三十二年前。

俺が世界を一通り回り終えた時のことだ。

ピクシーを肩に乗せながら、ぶらぶらとヴェルクロ城下町を歩いていた俺は、異常な魔力反応を察知した。

当時の俺よりも強大な魔力。


「……誰だ」俺の後ろにいる魔力の塊。

その視線を一心に受けた俺は、内心ガクブルだ。


「第七十七代目魔王“ミーナ”」


美しく澄んだ声が響く。

振り向くと、そこにいたのは絶世の美女。

魔族の女特有の淡い灰色の肌に少しつり上がった目元。

紅い長髪に、羊のような漆黒の角。

背中にはまさに悪魔のような大きな翼を持ち、瞳は髪よりも深い深紅に染め上げられている。


「うほっ、イイ女」

「あら、ありがと。

 で、女性が名乗ったのだからあなたも名乗ったらどうかしら?」


楽しそうに笑いながら自己紹介を促すミーナ。

どうでもいいがおっぱいでけーな。

露出度の高い黒い鎧からこぼれんばかりに自らを主張するそのおっぱい。

やるではないか。


「……影郷光……旅人だ。

 こっちは相棒のピクシー」


無難に自己紹介をする俺。

ピクシーは心配そうに俺を見ている。


「うふ、怖がらなくていいのに。

 私はただ勧誘しに来ただけなの」

「勧誘?」

「えぇ、そうよ。

 一週間程あなたを監視させてもらったけど、あなたの召喚士としての素質、それに戦闘のセンス。

 実に有能よね。魔王軍に入って、あなたの力を私の為に役立てなさい」


あ、そういう?

一週間前から気になってた視線はそういうあれだったのかー納得!

ってふざけてる場合じゃない。


「おっぱい揉ませてくれたら考えよう」


…………うるせーよ。

俺男だし。ってか漢だし。

しょうがないよ。この溢れるパトスを抑えきれるもんじゃないから。


「……はい?」

「だから!おっぱい!」

「えーっと……それでいいの?」

「うん」

「はぁ……」


おい、ピクシー、呆れ顔すんな。


「で、揉ませてくれんの?」

「え、あ、うん。

 べ、別に構わないけど……私淫魔の一族だし」

「あ、そうなんだ。

 じゃあ遠慮なく」


右手をおっぱいに持っていく。


むに


……なんということでしょう。

重いなこれ。ヤバいわ。

もみもみ


「あんっ!ふふ、どう?

 私のおっぱい」

「揉んでるだけで気持ちよくて封印しちゃいそう」

「そりゃ淫魔の中の淫魔!

 魔王だか……ってあれ?」


右手に魔力を込める。

契約術式転換……彼の地に魔を封じよ。


「ナイスおっぱいだった。










 封印開始」


揉んでる手に力を込め、魔力麻痺毒に変換し流し込む。


「き……さま……!

 まさか……この為に……!」

「いや、純粋におっぱい揉みたくて。

 断られたら傘下に入ろうとしてた」


だって不意打ちじゃなきゃ勝てないもんな。


「少しベタだが、ここの地下三カロ位の場所に封印させてもらうぞ」


カロとは、この世界の単位。

数え方は地球とまったく同じ。

カロメータル→メータル→センテメータル→メリメータル

って感じだ。


「……いつかお前も同じ目に合わせてや「封印」ちょ、私まだ台詞の最中……ってキャァァァァァァァ!!!!!」










「何度思い出してもナイスおっぱいだった」

「何を言ってるのかわからないよ」


ちなみに今アイツが封印された場所には結界を二十五重に張ってある。

魔力吸収、炎熱、衝撃吸収、氷結、魔力障壁、物理障壁、電磁etc.

全部俺がやった。

どやっ


「で、君が張った結界は後どの位保つ?」

「一応結界の急所はずらしてあるからな……今のところ三枚割られたな」

「この一時間で三枚も……これはヤバいかもしれないね」


深刻そうに考え込むディスク。

まぁ、魔王の復活だしな。

ちなみに言っておくとあの封印術式は、現象を後回しにする術式である。

期間は俺の魔力に依存するのだが、何せ相手は魔王。

強制的にぶち破ってくる可能性も考えられる。

それを考慮して結界に少し手を加え、魔王の魔力を使うことにした。

魔力が吸い取られるとき、どうしても身体が上手く動かないのがこの世界の常識だしな。

俺でさえ上位の魔法や召喚獣の行使には意外と繊細な魔力操作が必要なのである。

捕縛対象の魔力を吸収し、その魔力で結界を維持する仕組みにしておいたのだが、いつの間にやら魔王と結界が融合してしまったようだ。

ってことは俺の魔力を吸収して自分のものにしたってわけで。


「多分あの時より強いぞあいつ」

「ただでさえ歴代最強とかって噂されてたのに……おい、お前の封印術式だろなんとかしろ」

「黙れ」


ネタとか教えるんじゃなかったかもしれない。










「さて……ではどうする王よ。

 言っておくが、私はあいつと戦うのは出来るなら遠慮したい」


だって俺死んじゃうよ。

まだ俺は生きたいんだ。


「そうだな……では、アレでいこうか」

「……え、マジで?」

「大マジ」

「……マジかー……ついに来たかー……」


宮廷召喚士になった時点で覚悟はしていたが、マジでやるんですね。










「勇者召喚の儀、頼んだよヒカル」

「はぁ……はいよ」

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