地獄に響く恋
ユキの冷たい固い感触は、あれからずっと俺の身体から離れず蝕んで行った。
それでも、俺は毎日挨拶をして、ユキを見つめて、笑った。
そしてそうこうしている内に、春も半ばになったと知った。
「・・・で、また懲りずに来ているのかハル。」
ジロっと目の前のソファで寛いでいるハルを睨むと、
同じようにハルも頬をプッと膨らませて睨みあげる。
「なによぅ!レフがいつまで経っても抱いてくれないからじゃない!」
「はぁ、いいかハル。人間と精霊が絡むと厄介なのは知ってるだろう?」
「むぅう!愛があれば関係ないわ!」
「俺は無い。」
「なっ!きぃいいいい!レフのばかぁ!」
プンプン怒り、ソファで飛び跳ねるハルに俺はため息が漏れる。
・・・ユキの怒った顔が見たいな。。。
そんな欲望が頭を掠める
目の前の飛び跳ねるハルがユキだったら良い。
何度だって、嫌がったって抱くのに。。。。
「っはぁぁぁ。」
「レフ!!そんなあからさまなため息つかないでよ!!」
そろそろハルもキレてきて、背後に炎が出てきた
ハルは炎を操る精霊で、かなり強力だ。
「お、ハル。炎が出てるぞ。さっさと仕舞え。」
「むうううううう!もういい!レフのお城なんか燃えちゃえ!」
なっ!?
「おいおいハル!好い加減に、しろ!!」
さっと左手を筒状にし、人差し指と親指を摘まむように中へ入れ一気に引き抜いた。
シュルンッと勢いよくロープが現れ、ハルを縛っていく。
「きゃあ!ちょっとレフ!!何よこれ!?」
「頼むから!大人しく諦めろハル!」
「嫌よ!何でよレフあたしの何が悪いのよ!!」
クソッ
諦めの悪いハルに俺は遂に我慢の限界がきた。
「お前がどうとかなんてどうでも良い!!俺にはなぁ!愛してる女が居んだ!!!」
「ウソつき!レフにはそんな人が居るの見たこと無いもん!」
「見せない様にしてんだ!」
「はあ!?意味わかんない!!どんな女なのよ!」
「どんなだと!ハルとは正反対さ!ユキは、ユキはなぁ!!」
コンコンッ
嫌に冷静なノック音に二人の言い合いは中断される。
「・・・入れ。」
カチャリと音がし、クマが入ってきたので少々狼狽えた。
??あのクマがあんなノックを・・・?
「レフ殿下。客人です。」
畏まった様子に益々疑問が募る。
「誰だ?」
「その、隣国のアルノリド王子が、」
なに?アルノリド王子が?
「分かった。すぐ、行く。」
アルノリド王子。あいつとは余り面識は無いが、優秀で人当たりのいい気さくな奴と聞いている。
しかし、なぜいきなりアポイントメントも無しにやって来た?
唸って居ると、後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。
「ねえレフ!!そのユキって女は何処にいるの!?」
ハルだ。
まだ執着するか。。。
「誰がお前なんかに教えるか。少し頭を冷やせハル。・・・もう一度、よく冷やせ。」
これが最後。最後の忠告だから。
頼むから、ハル。
俺から離れてくれ、離れて、もう一度あの頃のハルに戻ってくれ。
しかし、願いはあっさりと否定された
「・・・嫌だ。だって、、、レフが好きだもん。。。」
・・・・・・ハル。もう終わりだ。
「・・・クマ、連れ出せ。」
「あいよ。」
ひょいとハルを担ぎ上げクマはずんずんと正門へ歩いて行った。
「レフ!!ねえ、レフ!あたしは、諦めない!諦めないから!!」
どんどんハルの声は遠ざかって行き、最後の方は尻すぼみだったけれど、
しっかりと意思の込められた口調に心が痛んだ。
「・・・ハル。何処で俺たちは、間違った・・・?」
ハルは森で楽しく会話をして、一緒に遊び回る友達だった。
はじめての、友達だったんだ。。。
「っはぁあ!まあいい!さっさと忘れろハルなんて!!さて、アルノリド王子にでも
会って来るか!!」
肩をぐるっと回しながら、すたすたとレフは歩いて行った。
その顔が泣きそうな程歪んでいた事は、本人でさえも気がつかなかった。。。
ねんむい。。。




