雪は愛さず
帰ると言ったら、
クマは驚愕し、オールバックは目を見開いていた。
詮索は許さず、始終無言で馬車に乗り込む。
拳を握り締め、歯を食いしばり、窓の外を睨みつけていた。
街は先程と何ら変わらずに彩られている
しかし、それは何処かくすんでいて、人を馬鹿にした輝きに見え
舌打ちをした。
この苛立ちは、何なのだろうか。
今夜は楽しい日になる筈だった。それを裏切られた苛立ちか。
俺が求めていたモノが与えられなかった苛立ちか。
そして、その全ては誰でも無い自身の気持ちのせいで起こっている。
その事に対しての苛立ちか。
・・・。
悶々と考えていると、声がかけられた。
運転手か
「・・・レフ殿下。到着致しました。」
気がつけば自身の宮殿の正門が目の前にあった。
彼女との始まりの場。
その考えは、苛立ちを更に募らせた
足早に寝室へ向かう。
ドアを荒々しく開くと、彼女が佇んでいた。
何も、変わっていない。
少し、その様子に拍子抜けした。
パタンと、扉は静かに閉まって行く
「・・・・ただいま。」
さっきの苛立ちも、何だか虚しくなり、しおしおと萎んで行く。
彼女は変わらない。
俺が怒ろうが、話しかけようが、笑おうが、女と遊ぼうが、
ただそこに居るだけだ。
不意に、何か言いたくなった。
「っな、なあ。そういえば、そなたに名を付けると言ったな。
丁度いいつけてやろう。」
本当の名を聞いたのに、
彼女はメイ・キュイジリアンと言うのに、
・・・その名が受け入れられ無い。
メイはさっきの女。
彼女とは
違う。
そう、俺にとっては二人は違う人間だ。
もう、メイでは埋められ無い穴がある。
動かなかろうが、話さなかろうが、その穴を埋めるのは
「そなただ。そなただけが俺を満たす。」
そして、満たされたモノが口から溢れ、零れててしまった。
俺は、
「そなたを愛してる。」
ガラス製の、そなたを。




