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ガラス製の彼女  作者: みすず
第一章 雪
6/14

雪のみ想ふ

何となく、古文のふにしました。

馬の蹄が土を勢い良く蹴る。

その激しい音は自身の心臓の鼓動とよく似ていて、

可笑しくなった。


「屋敷まではあと、どれ位だ?」

馬を操る男に聞くと、

「は、後10分もかからないでしょう。」

ふん。順調か。。。


彼女との待ち合わせ場所は、ボルドー伯爵の屋敷

ボルドー伯爵は今年で70歳を迎えるそうで、その記念パーティーらしい。

そして、彼女とは遠い遠い親戚だそうなのだが、

何のキッカケか知らないが

とてもボルドー伯爵と仲が良く、今宵のパーティーに呼ばれたらしい。


まあ、俺も偶然ボルドー伯爵に呼ばれていた(行く気はなかった)ので好都合だった。

そう思いながら

ふっと窓をみると、ネオン街に舞い散る雪が目に入る。

その一粒一粒がランプの灯りでオレンジ、黄色、赤、青

に変幻していて、とても美しい。


・・・彼女に会ったら、これを一緒に見よう。


口を曲げてニマニマして居ると横から声がかけられた。

「レフ殿下、顔が嫌らしいのでさっさと戻してくださいませ。」

「おいおい、レフーんな楽しみなのか~?」にやにや


気のせいだろうか。。。

こいつらの声を聞いただけで、雪の輝きが炭のように見える。

「・・・オールバック。貴様の方が365日嫌らしい顔つきだぞ。」

「お言葉ですが、(わたくし)の顔は凛々しいと屋敷の者達に評判で御座います。」

さらりと言ってのけるこの男は、黒髪黒目のオールバックで、凛々しいと言うよりは生真面目な顔。

ただし、何か目が誘っているような気がしてなら無い。

女中の一人は眼力フェロモンと呼んでいたな。。。

そして、

「クマは、何も喋るな鬱陶しい。」

「へっへっへ~。照れてヤンの~。っぅぐふ!!!」


みぞおちに拳を叩き込む。


「レフ殿下。グッジョブで御座います。」

「ふん。」

中々腹の黒い軍長だ。


腹黒オールバックが口を開いた。

「ところで、そろそろボルドー邸がお見えになって来たようです。」

「おお!?本当か!どれどれ~?」むぎゅううう。

クマは真ん中に座って居るので窓を見るには必然的に誰かを押しつぶさなければならない。

「ちっ。クマ。余り動かないでくださいませ。貴方の執事とは思えない筋肉に溢れた身体で

押しつぶされます。」

「んだとお!?てめえはこの国の軍隊隊長の癖に何ひよっちい事言ってやがる!!」




・・・確実に、二人は就く仕事を間違えたな。



宮殿に帰ったらこいつらの仕事について検討しよう。

たく、疲れる。

折角いい気分に浸っているんだから邪魔をするな。


「クマ、オールバック。五月蠅い。」

少し低い声色で言うと、二人は大人しくなった。

しかし、こいつ等が大人しくなると俺の心臓が五月蝿く思う。

行き場の無い苛立ちを持て余し、

俺はボルドー邸に到着したのだった。



--------------------------


扉に向かうと、執事らしき老人が迎える。

「レフ・ヴァロフ殿下。今宵はようこそおいで下さいました。

どうぞ、ごゆっくりお楽しみくださいませ。」


丁寧に腰を折る老人にそこそこの挨拶もせず、

パーティー会場に入って行った。

ドアマンが扉を開ける瞬間

人工的な光に当てられ視界がかっと開いた様だと感じた。


流れる優雅な、それでいて心踊るメロディー。

一歩、また一歩と脚を進めて行くと、



見つけた。



真珠のネックレスと、淡い紫色のマーメイドドレス。

斜め分けのショートカットで、

ふふっと微笑む彼女に、目が釘つけになる。


彼女の肩に、手を置いた。


「?・・・あら。レフ殿下ではありませんか。お初にお目にかかります

メイ・ キュイジリアンと申します。」


「・・・メイ。」

ポツリと知りたくて堪らなかった名を繰り返す。


「メイ。一曲踊ろう。」

そう言って、メイの手の甲にキスを落とす。

そこで俺は温もりがあると思っていたが、

案外メイの手は冷たくて驚いた。


ピアノの音色が始まる。

最初は静かに、

そこからワルツの様にリズムあるメロディーに変わり

ステップを踏んで行く。


目の前には楽しそうにクルクル舞うメイ。。。

細い腰に触れ、揺れるメイの髪を眺める。

顔つきはガラスの方とそっくりだ。

しかし、メイの瞳は、俺が予想して居たのとは違っていた。

茶色い。華やかな色。

俺が予想したのは、深いミドリ。


・・・又、心がざわめいた。


「レフ様って、無口なのですねぇ。ちょっぴり意外でしたわ。」

うふふっと甘ったるい声を漏らすメイに、俺は、

衝撃を受けた。


そう、だ。俺は、何をしている?あんなに、ガラスの彼女には話しかけていた

では無いか、、、どんなに答えてくれなくとも、

毎日毎日、ただいまを繰り返していたでは無いかっ


「・・・・今日は余り体調が優れ無いんだ。」

そう、きっとそうなんだ。

「あら。それは大変!直ぐに医務室にゆきましょう?」

上目遣いで見てくるメイに押され、

思わず頷く。



医務室には俺とメイの二人きりであった。


ベットに横になり、薬品を調合しているメイを見る。

「ボルドー様は薬品の事もお詳しく、私も良く教えて貰ったんですの。

さあ。これでどうかしら?お飲みになって?」


差し出された粉薬を飲もうとするが、

何故か手が止まってしまった。


「レフ様?どうかなさって?」

キョトンとするメイを見た。

無邪気そうな瞳に妖しい光が宿って居るのを俺は見逃さなかった。


「・・・メイ。具合はもう良くなった。少し、話をしないか。」

ぐっとメイを見据えると、

メイはまたキョトンとして、頷いた。


「メイ。メイは、ガラスで彫刻を掘られた事があるか?」

少し考える素振りをし、メイは口を開く

「・・・・ええ。」

「それが、俺の屋敷の柱にあった。何故だか分かるか?」

「わからないわ。ねえ、そんな事聞いてどうするの?」

「黙って答えろ。その像のメイに会って、俺は、恋をしたんだから。」


メイが息を飲む。


「・・・ふふふっなら、私達両思いじゃ無い?」

首にメイの腕が巻きつく

不思議と、俺は冷静だった。


「・・・そうなのか。」

「ええ。私一目で気に入っちゃった。」

クスリと笑うメイ。

医務室は緊張した静寂に包まれた。


自然と二人は唇を寄せていく。後、少し。


脳に一瞬、過る影。







ガラス製の、彼女。







「っ!」

思いっ切りベリっと音がする位メイを引き剥がす。

「きゃっ!?」


「・・・帰る。」

「え?れ、レフ?」

「悪いが、もう帰らせてもらう。ではな。」

颯爽とベットから出て行く彼を、メイは止めようとする。

「・・・・寄るな。寄ればただでは済まさ無い。」

低い声色で、メイはビクついて、動かなくなった。

レフは、殺気だって居る。

「な、何かした?」

「喋るな。」

「レフ!レフ様!!」


叫び声を遮る様に、


医務室の扉は閉められた。


瞬間。

薬の瓶を叩き落とし、

メイは怒りに打ち震えた。

「・・・・ちぇっ。後少しでレフが手に入ったのになぁ。

つくづく邪魔をするんだな、あの死に損ないが。」


不気味な声と共に、

メイはその顔を歪ませていった。



クマを秘書から執事にしました。

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