雪、溶かす
朝、街は黄金の光に満たされていく。
そんな景色を俺は、宮殿の展望台から眺めるのが好きで
昔から一人でここに来ていた。
この最高の景色をこんなに良い所から眺められる
俺だけが。
そんな優越感も味わっていて、
一生涯ここには誰も連れて来させないと考えていた幼い俺を
思い出し、苦笑いを浮かべる。
「・・・・美しいだろう。誰かを連れて来たのはお前が初めてだ。
たく、もっと喜べよ。」
相変わらず、表情の無い顔の彼女の横で文句をたれる。
「ふん。そなた、こんな絶景は初めてだろ。そなたが何処から来たかなんて
知らんがな。ここの景色は国一番と言われているんだ。」
ここは色んな思い出のある場所だった。
そう、例えば、
「とにかく俺は群れるのが嫌いな子供だったから、他のガキなんかの
相手なんかしたく無くて、よく此処に逃げて居たな。
まあ、大人になってからは女に囲まれ、もう群れが嫌だとはあんまり感じなくなって居たな。」
薄ら笑いをして、満更でもない顔をする。
そこで、チラリと彼女を盗み見た。
「ふふん。いいか?女なんて掃いて捨てるほど俺には居るんだ。それでもそなたを構ってやっているんだ。分かったか?」
彼女が動いている温かい生き物だったら、、、
少しヤキモチを妬いて欲しいと思った。
でも、俺がモテようが彼女は何も返してくれない。
当たり前。・・・そうやって割り切れるモンでも無くなった。
恋をしてしまったから。
そう、このガラス細工の人形に。
高鳴る心臓は世に言う『ときめき』だろうか。
俺は、白い息を吐いて昨日の晩に考えた事を告げた。
「・・・なあ。俺、そなたを探そうと思う。」
本物の、そなたを。
像なんて造られる位だ何処ぞの姫君かもしれない。
動く、そなたに会いたいんだ。
会えたら、あわよくば婚姻も結ぼうと思う。
ほんのりと、彼女との未来が瞼の裏に見え口の端を上げた。
「そなたに会ったら、まず真っ先に名前を聞こう。
あ、今のそなたはきちんと二人の寝室に飾るからな?安心しろ。」
そう言って、額にキスを落としてやった。
動く彼女に会える。
そう思ったら、今の彼女に迷いなく触れる事ができた。
彼女の腰を引き寄せ、その瞳に朝日を映すようにしたが
光が反射して、大変眩しく
彼女にまた文句をたれた。
・・・動く彼女に会える。そう、会える。
もう、答えの無い会話をする事も無い。
嬉しいと思うが、何かが心に引っかかりがあった事を
俺はもっと気にするべきだったと
後に、俺は思う事になる。
思い立ったら即行動。
それが俺のモットーである。
後回しにした事は今まででは彼女の名付けぐらいだ。
だから、宮殿の仕事場に行った瞬間に俺は部下に彼女の捜索を命令した。
脳に直接彼女の顔を送る
「おいおい、何だいこりゃあ!ド級の美人じゃねえか!
殿下ーこの娘何処で見つけて来たんだい??」
尋ねて来るクマみたいな風貌の幼馴染でもある執事の男を
適当にはぐらかして、仕事をする。
流石に正門の柱で見つけたなんて言えない。
部下に送ったのはガラス製ではなく、俺が勝手に人間の姿を想像したものだ。
「にしても、遂に女ったらしなレフ坊にも春がきたかああ!!」
「煩い。」
半ばムッとする。
「春、春、なんて言うがな俺だって恋の一つや二つ・・・」
「したのか?」
キョトンとされた。
「当然だろ。ええっと、、、そうだなあ。。。。。」
自分の過去を振り返ってみる
すると
「・・・・・・・あれ?」
見当たらない・・・?
彼女に感じた恋という強烈な感覚を過去に探す。
「お、かしいな。。。まさか、俺は、」
「初恋なのか?」
!!!!
身体中にビリビリッと稲妻が奔る。
「嘘、だろ?」
ポカーんとした口をクマがとじさせる。
「ああ、まあ。呆然ともなるよな。お前今年いくつだよ。」
「24………」
「・・・・なるべく早く見つけてやる。」
有り難い。ならば・・・
「・・・なら、3日以内だ。」
「な!!こんの我が儘野郎!無理に決まってんだろ!?」
「聞かない。出来なきゃ貴様のそのウザったい顎髭をブチ抜く。」
クマはそうやって脅すと何でもやるから使える。
ブツブツと俺を呪う声が聞こえるが、無視だ。
さて、仕事に入ろう。
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ガチャリ、パタン。
「ただいま。良い娘にしてたか?」
バサバサと上着を脱ぎながら質問する。
「今日からそなたを探して居るんだ。見つけたら即座に俺の妃にさせるからな。」
ニッと笑いかけ、頬を軽く撫でる。
もうすぐ、彼女が手に入る。
どんな声なんだろうか。
どんな風に俺を呼んでくれるのだろう。
どうやって笑うんだろう。
泣くんだろう。
怒るんだろう。
「早く、会いに来い。 」
そっと彼女を抱き寄せる。
激しい鼓動は恋心の証。
唇を幾度となく重ね、
熱い吐息で彼女を湿らせていった。
それを見た俺は、何か違和感を感じる。
早く会いたいと願うのに、
俺の心はまだ、何かが引っかかっていた。




