雪が眩しい
妖しいライトに包まれ、
酒や、香水の匂いが染み付いた高級ホステス。
其処の雰囲気が俺は気に入っていた
まるで別の次元に来たようで、仕事の事などを簡単に忘れていられるし
柔っこい女達に囲まれるのは悪い気はしない
むしろ普通はそれが目当てだろう。
・・・けれども、もう俺はこの空気を楽しめなくなっていた。
カランッとウォッカの氷が溶ていくのを見ながら、
惚けて居た
さっきの彼女にした口付けの冷たさが
鮮明に唇の残っている。
そう、彼女は、、、唯の像である。
苦い汁が身体を駆け巡るのに耐えていると
一人の女が俺の胸元に擦り寄って来た
女はピンクの唇を意味深に曲げ、目は何処か誘っている様だ。
「レフ殿下?先程から少ししかお酒をお飲みになられて居ない様ですが、
お具合でも悪いのですか?」
上目遣いで見てくる。
その眼差しはしっかりと俺を捉えていた。
そして
不意に、頭を過るは彼女の瞳。
何も映さない、冷たい、碧い、瞳。
胸の息苦しさが蘇って来て、それから逃れる様に
忘れる様に女の腰を引き寄せる。
「否、気にするな。それより良い肢体だな。。。お味は如何ほどか、試してみたい。」
女の耳を甘噛みしつつ、囁く。
「・・・・仰せのままに。」
うふふっと笑う女。
・・・・彼女はどんな風に笑うのだろうか。
「じゃあ早速二階の部屋にご案内致しますわ。
・・・殿下?」
早々と腰を上げる女とは反対に、俺はぼうっと座っていたが、
見兼ねた女が俺の腕を取り、導いて行った。
女の喘ぐ声も遠く、
流れるロマンチックなBGMも遠く、
淫猥な匂いも、音も、汗も、
霞んでいる。
そんな事を最中に考えたのは
初めてで酷く動揺してしまった。
「ねえ殿下ぁ。。。キス、して?」
行為の終了後、
女が口付けを要求して来た。
「はあ?」
女としては先程の余韻に浸っていただけで口走ってしまった事なのだろうが、
俺は酷く不快になった。
「チッ、誰が貴様みたいなゲスに口付けなどするか。鬱陶しい。
帰る。」
そう吐き捨て、服を身に纏いチップを払って店を出る。
雪がちらちら降って来ていた。
「レフ殿下ー!!どしたんです!?気に入った娘いなかったんすか?」
一緒に来ていた天パが追いかけて来るが
鬱陶しいので無視して馬車に乗り込む。
発車する馬車
「え?あれ?ちょっと!?俺置いてけぼり!?」
無論。
しかし、思えばあいつが色々と言ってくれたおかげで彼女に会えたのも事実だな。。。
礼ぐらいのつもりで宿でもとっといてやろう。
ガタガタと揺れる馬車に揺られながら溢れて来るのは彼女の事ばかり。
啼かせたい。
乱れる姿が見たい。
あの唇の向こう側を弄りたい。
唯、彼女に・・・触れたい。
「おい、、、急げ。」
馬車の運転手をせかせる。
「は、畏まりました。」
過ぎ行く雪達のスピードが速まる。
宮殿に着き、真っ先に寝室に向かう。
鼓動が心無しか速くなった。
会いたい、
天パの誘いになんて乗らなければ良かった。
不快だ。早く、早く会って癒されたい。。。
扉の前に立つが、さっきの女の匂いが服やらなんやら染み付いているのが
何故か気になった。
何となく、この姿で彼女には会いたくない。
『おい、風呂を用意しろ。』
魔術で使用人の脳内に命令し、熱いシャワーを浴びる。
さっぱりした所で、バスローブを来て部屋にやっと入る。
ガチャリ、パタン。
「・・・・・ただいま。」
彼女は俺のベットの横に立たせている。
おかえりなんて、言ってはくれない。
「今宵は酷い雪だな。結構肌寒かった。」
真紅のドレスの彼女を見つめながら何気ない台詞を吐く。
ああ、くそっムラムラする。
先程ヤッタばかりなのに、もう滾っている自身に少々呆れた。
そうだ・・・ネグリジェも着せよう。
「そなた、俺が居ない間どうしていた?」
突っ立っていたに決まってるだろう?俺は馬鹿か。
「あ~。そうだな、、、もう夜も遅い。寝るぞ。」
シャンデリアのスイッチを切るために彼女に背を向け、スイッチに向かっていく。
一歩を踏み出した瞬間、
何か彼女が言った気がして、くるりと期待を孕んで振り返る。
「・・・何だ?何か言ったか?」
見つめるが、彼女は沈黙を通す。
気の、せいか。。。当たり前だ。。
それでも、何だか名残惜しくて彼女に手を伸ばす
俺がちょっと前に口付けを贈った唇に触れたかった。
しかし、あの冷たい温度と感触が走馬灯みたいに過り、
思わず手を引っ込めた。
「・・・おやすみ。」
寝室の静寂は余りにも巨大で、
俺の呟きなんて丸呑みしてしまった。
彼女に触れたい。
でも、触れたら、触れてしまったら
認めたくない事実が目の前に突きつけられる。
彼女は生きて居ない。
死んでも居ない。
ガラス細工の、人を模した、モノ。
羽毛布団をかけて、薄目で彼女を伺う。
月の光に照らされ、碧いガラスから淡い光を溢れさせる彼女に、
俺は、
恋を自覚した。




