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ガラス製の彼女  作者: みすず
第三章 女神
13/14

女神はほほえみ

火災報知器がけたたましく鳴る。


クマとオールバックが慌てた様子で周りに支持を出していた。

「何があった!?」

「殿下ぁ!やばいッスなんか殿下の寝室から謎の炎が!!

誰にも消せないんです!このままじゃ、宮殿が焼けおっちまう!!!」


「落ち着けクマ!俺が行く!お前らは家来達を早く外に!!」

「「御意!」」



・・・・・。

おそらく、炎は魔女が放ったのだろう。

くそ、無事でいてくれユキ!!!

お前は居なくなっていい奴なわけが無いだろう!!?


魔法で炎から身を守りつつ

ドアを蹴破る。


二つの人影が、炎の奥で揺らめいている。


「ユキ!!」

必死で向こうにいくと、

魔女と目が合った。

「レフ殿下。。。まさかここまで来るとはね、、、こんな、こんな奴のために。」


魔女が、右手でユキの首を掴んでいる。

だらりと力なく下がった腕、閉じた瞼。


・・・かすかに上下する、胸。


「ユキを、戻したのか?」

「フン。違うわ。魔力が、もう、尽き掛けているの。

だからこいつはあたしの手で、、、殺してやるわ。」


右手に力が入り、ユキの眉がピクリと歪んだ。


「!やめろ!!」

「どうして!!!??」


余りに悲痛なその声は、魔女から発せられていた。

「どうして!?ねえ!!どうして!?なんでこの女だったの!?

レフ!物なのに!!感情なんかないんでしょう!?そんなモノ!愛せるはずないんでしょう!?」


気がつけば魔女からは大粒の涙が流れ続けて居た。


その姿は、もう、メイでも、ユキでも無い。






「・・・・・ハル。」





小さな身体でいつも跳ね回っていた、あのハルが、今、一人の人間を殺そうとしている。

「ハル。なあ。聞いてくれ。」

しかし、ハルはこちらを睨めつけたまま

口を閉ざそうとしない。


「精霊だから駄目だと言ったから!!!あたしは捨てた!全てを!この姿だって魔力でなんとかしてるのよ!全部!全部!本当の魔女に捧げて!

この世界で一番美しいと言われているこの女に化けて!!

そしてガラスになった女をレフの所におくり、レフが本物であるあたしに会いに来るのを待った!!

なのに!!

なのになんでこの女なのよおおおおお!!!!!!」



ぐぐぐっと最後のとどめをさそうとしたハルは、

ユキの身体から弾き飛ばされた。


「きゃああ!」

壁に激突する寸前で俺はハルを抱きとめる。

「な、は、放せ放せえええ!!」


「ハル!!!聞け頼むから!聞いてくれ!!!!!」


漸く、ハルの魔力が収まってきた。

しかし、まだブツブツ呟いていた。


「なんで?なんで?なんで?・・・・・」


ハルを抱く腕に力を込め、

俺は、ハルに告げた。


「お前に、教えられたからだあんな、我が儘だった俺に、

お前は、ハルは命っつうもんを教えてくれた。

何にだって魂はあるんだって、お前が、お前だけが教えてくれたんだ。」


静かな間が出来る。


「・・・・・皮肉ね。あたしが教えなかったらレフはあたしを好きになったの?」

「・・・・分からない。」

また、涙を流して行くハルは、笑っていた。

「レフ。。。でも、レフは何時だったか蝶を捕まえて、

放そうとしなかったじゃない?」

「放した。・・・泣いてる気がしたから。お前に言われてから気づいた。」


ハルの瞳が優しい光を帯びる。

「あのね、レフ。

もしもあの時あたしが何も言わずにいて、レフがあたしを好きになるのだとしても、」

「うん。」



「あたしは、放してって言ったよ。。。。」



ポツリと、ハルの閉じかけた瞳から雫が落ちると同時に、

俺はハルをぎゅっと抱き締めた。


「ハル。お前は、そう言う奴だよ。そういう優しい奴だ。。。。」

「最後に、やっと、抱いてくれた。・・・・レフ。幸せになってね?」


「・・・ハル。お前に言いたい事があるんだ。」

「な、に?」



炎が徐々に小さくなって行く。

それは、魔力の限界が訪れているのを、俺に知らせた。

ハルの目を見る。

今気づいた。ハルの目は、綺麗な銀色だ。

雪のように、、、、綺麗だ。



「ハル。ずっと、ずっと、ありがとう。」





ハルが、笑顔になった。

「・・・・ありがとう。。。レフ。」



風鈴の鳴る音。



それが魔力の尽きる音だと気がついたのは、

ハルがガラスよりも冷たくなってからだった。





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