12話・アコダが伯父さん?
「きみの父親はここの領地の人?」
「いいえ。ここの国の人ではなくて、遠い国から来たようなことを言っていました。もともと旅人だったそうです。そして母と婚礼もせずに入籍したから、ここの人達は驚いたようです」
「ふうん。仕事はなにを?」
「ここには港があるので、そこで朝から晩まで荷運びをしていましたよ。力持ちで何でも軽々と運んでくれるから、皆さん父を頼りにしていて、そんな力持ちの父親が私にとって自慢の父でした」
「特徴は? きみに似ている?」
「父は黒髪に紫色の瞳を持っていました。亡くなった祖母やここのご近所さん達には、父にそっくりだと言われています」
ノアールとアコダは、顔を見合わせた。アコダが確認するように聞いてきた。
「その、きみの父親の名前は?」
「ジグルドです。家名はあるのか分からないけど、そう名乗っていました」
「ジグルド?! やはりそうだったのか。道理できみに会った時、初めて会った気がしなかったわけだ。きみはジグルドによく似ている」
「……?」
父の名を告げると、アコダは一瞬、目を見張った後に破顔した。
「俺はジグルドの兄だ。きみは俺の姪に当たる。ぜひ伯父さんと呼んでくれ」
「えっ? そうなのですか?」
突然、アコダが伯父だと言い出して驚いた。ノアールを見れば頷かれる。アコダの言葉には嘘がないと言うことだろう。信じることにした。
「まさかこんな形でジグルドの娘に出会えるとは……」
「私も驚きました。父は他所の国から来たと言っていて、一度も家族の話をしたことがなかったので、祖母は天涯孤独の身ではないかと思っていたようです。父は祖国ではどのような感じだったのですか?」
「ジグルドは武芸に秀でていて優秀だった。ノアールの父親の下で護衛として働いていたんだが、ある日突然、出奔してしまった。後から知るところによると、恋人がいなくなってしまい、それを捜しに出たようだ」
「そうだったのですね」
アコダから聞いた父の話は意外だった。私の知る父はお人よしで面倒見が良かった。人に好かれやすい体質で、争いごととは無縁の生活を送って来た。その父が剣を握っているところなんて一度も見たことがない。とても想像がつかなかった。
「ジグルドの失踪後は、家族皆総出であいつの行方を捜したが、なかなか見つからなかった。まさか人間界にいたとは。盲点だった。俺とあいつは腹違いの兄弟で、俺の母が病で亡くなりその後、親父が再婚して生まれたのがジグルドだ」
アコダは父とは腹違いの兄弟だったらしい。どうりで初対面からして懐かしい気がしたわけだ。アコダは父とは外見は似ていないが、雰囲気が似ている。
「ジグルドがこんなに可愛い娘を……」
アコダの目元は潤んでいた。アコダを前にして言いにくいが、父のことを伝えなくてはと思った。
「父はその……、10年前に亡くなりました」
「亡くなった?」
「はい」
アコダは、私の言葉に声を失ったようだった。失踪した弟の娘に会えて良かったと思ったら、弟は亡くなったと聞かされて、心が追い付いていないのだろう。何か言いたそうでありながら、飲み込んだように思えた。




