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魔王の息子、外へ出る



「外に行ってみたい」

それは、ほんの軽い気持ちだった。

リルがそう呟いたとき、周囲の者たちは一斉に凍りついた。

「坊ちゃん、それは…」

「人間の領域は危険でございます」

そう、彼らは魔族なのだ。

だがリルは首をかしげる。

「なんでだ?」

本気でわかっていないのだろうか

魔族たちは顔を見合わせ、ため息をつく。

このお方は…強すぎる。

そして、あまりにも常識がない。

「父上は昔行ってたんだろ?」

「ああ…そうだ」

いつの間にか現れていた魔王ゼルドスが、ニヤリと笑う。

その隣では、父上の妻であり、元勇者であるミアがくすくす笑っていた。

「いいんじゃない?リル。行ってみても」

「ミア様!!本気なのですか!?」

側近達が悲鳴を上げながらうろたえる。

「大丈夫よ。だってこの子…」

彼女は優しく、しかしどこか誇らしげに言った。

「世界で一番強いもの」

リルは首を傾げたまま。

「行ってくる。父上、母上」

その一言で全てが始まった。



人間の街<レムルス>にて


「……へぇ」

リルは、ただただ感心していた。

人間の街。

石造りの建物、行き交う人々、笑い声。

「すごいなぁ…」

だが、次の瞬間だった。

「ま、魔族だあああああ!!」

空気が凍る。

門番が発したその悲鳴に、人々の視線が、リルに突き刺さる。

「なんだ?」

リルは自分の姿を見下ろす。

ドス黒い魔力が垂れ流されていた。

「バレるのか、これ」

次の瞬間、空から光が降りた。

「魔族はどこだ!」

剣を構えた勇者。

その後ろに魔法使い、戦士、そしてーー

一人の少女。

白いローブに包まれた、金髪の少女。

聖女。

その姿を見た瞬間。

リルの思考は止まった。

心臓がうるさい。

目が離せない。

その子だけに目が向く。

「……かわいい」

ポツリと漏れたその言葉に、全員が固まる。

聖女も、目をパチクリさせた。

「え………?」

だが次の瞬間。

勇者が踏み込む。

「斬る!」

剣が閃く。

だがーー

当たらない。

リルの姿は、すでにその場にない。

「遅い」

背後からの声。

勇者の背筋が凍る。

次の瞬間、リルに魔法が放たれる。

火、水、風、雷。

だがそれらはすべてーー

「食い尽くせ」

リルの闇に触れた瞬間、魔法が侵食されたように消えた。

まるで存在ごと削り取られるようにーー

「なっ……!?」

さらにリルは手をかざして魔法を放つ。

だがそれは普通ではない。

ーー速すぎる。

神速を纏った魔法。

回避不能の一撃。

勇者達は吹き飛ばされる。だが。

殺さない。

「……?」

フィリアは回復をしながら気づく。

(この人……光がある?)

違和感。

リルが近づいてくる。

「君、名前は?」

「……フィリア」

「そっか」

少しだけ、笑う

「かわいいね」

「え……!?」

またもや空気が止まる。

リルはそのまま顔を近づける。

キスをしようとする。

だがーー

ぺちん

「だっ、だめです!!」

フィリアが真っ赤になって拒否する。

リルは下を向いて悲しそうにする。

フィリアも半泣きで立ち尽くしている。

そして。

「じゃあ、一緒に行こっか」

「えええええ!?」

こうして。

聖女フィリアは連れ去られたのである。






読んでくれてありがとうございます!

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