表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/37

非行倶楽部

雑貨屋ざっかや店主てんしゅ虫取むしとあみむしかごを入荷にゅうかしていた。


クランドール王国おうこくには季節きせつはないが、時期じきが来ると不思議ふしぎと生物がうつろいゆく。


今はトンボがえるころなので、虫取むしとりの関連商品かんれんしょうひんは売れが良い。


今日もいくらか、はけたところだ。


そんな時、シエリアは気配けはいを感じて後ろを見た。


そこには虫取むしとあみを持った坊主頭ぼうずあたまの少年が立ちくしていた。


よく見ると顔をゆがめてを食いしばり、くやなみだ鼻水はなみずらしていた。


これはただごとではないと店主は少年にあゆると、しゃがんで声をかけた。


「どうしたのボク。そんなにいたりして。お姉さんに話してみてよ?」


坊主頭ぼうずあたまなみだぬぐって語り始めた。


「おいら、トーゼっていうんだ。″オフリトンボ″がどうしてもつかまえられなくて……。おいら、昆虫博士こんちゅうはかせになりたいのにどんくさくてさ。虫が取れなくてみんなにからかわれるんだ!!」


尾振おふりトンボとは常にグルグルと尻尾しっぽを回している変わった昆虫こんちゅうである。


他のトンボのらいたがわず、機動力きどうりょくが高く、も良い。


なみの大人の反射神経はんしゃしんけいでもつかまえることがむずかしいくらいだ。


またもや少年はき出してしまった。


シエリアはトーゼをなだめた。


「ほらほら。お姉ちゃんが手伝てつだうから。一緒いっしよにトンボをつかまえようよ!!」


坊主頭ぼうすあたまの顔色が変わった。まるでほとけに会ったような顔つきだった。


「ほんと!? ″カッコよく″決めないとだよ!?」


……とはいうものの、シエリアはひど運動音痴うんどうおんちで、トンボなんてつかまえられっこないのは自明じめいだった。


「と、とりあえず、河原かわらにいこっか……」


少年の手を引いて移動いどうするとそこにはおびただしい数のオフリトンボが飛んでいた。


「これだけ数がたらアミを適当に振り回しただけでもれるんじゃないかなぁ」


雑貨屋少女ざっかやしょうじょはジャンプしながらあみったがかすりもしない。


しまいにはいしあしをつっかけて前のめりにつんのめってしまった。


シエリアとトーゼはかたを落として雑貨屋か(ざっかや)にもどってきた。


「うっ、うっうっ、やっぱり、やっぱり……」


き虫の少年はまた号泣ごうきゅうしそうだ。


それを少女はなだめた。


「ほら!! あきらめないで!! おねえちゃんがなんとかしてあげるから!! 一緒にオフリトンボ、つかまえよ?」


トーゼはだまったままコクリとうなづいた。


つかれ切ったシエリアはカウンターにもたれかかった。


(うわああぁぁぁ〜〜!! あんなはやいのつかまるわけがないって!! でも、トーゼくんのゆめのためにもなんとかしなきゃあああ!! やっぱ無理!!)


雑貨屋少女ざっかやしょうじょ無意識むいしき高級氷菓こうきゅうひょうか、エリキシーゼを手に取っていた。


フタを開けるとそこにはペロペロキャンディの渦巻うずま模様もようがあしらってあった。


No-143、ペロ☆キャンフレーバーだ……。


これをみたシエリアに電撃でんげきが走った。


トンボは非常に視力しりょくが高い。


それを逆手さかてにとって指をグルグル回して気絶きぜつさせるというテクニックがあったはずだ。


正直しょうじき眉唾物まゆつばもので、都市伝説としでんせつだ。


もしかして催眠術効果的さいみんじゅつこうかてきななにかがあるのかも知れないが。


ともかく、今はこれにすがるしかない。


″カッコよく″という条件じょうけんも満たしているはずだ。


早速さっそく、シエリアは河原かわらで止まっていたトンボに指グルグルをこころみた。


すると、その昆虫こんちゅうは目を回して地面に落ちた。


それをひろい上げた少女はあまりのあっけなさに恐怖感きょうふしんさえおぼえた。


翌日よくじつ、呼び出されたトーゼはシエリアからレクチャーを受けた。


半信半疑はんしんはんぎだった少年だったが、ためしてみると面白おもしろいほどトンボはれた。


うまくやれば飛んでいるのさえ落とせた。


このテクニックはまたたく間にセポールに広がり、メジャーになった。


だが、不可思議ふかしぎな事件が起こった。


河原かわらで子どもたちが集団しゅうだんで気をうしなったというのだ。


トンボをつかまえようとしていたと各々(おのおの)の子供がくちにしたが、それ以外には特に変わった事はなかった。


やがて、気絶事件きせつじけん範囲はんいを広げ、市街地しがいちでも起こるようになった。


今度は子供だけではない。老若男女ろうにゃくなんにょ被害ひがいおよび始めたのである。


この得体えたいのしれない異常事態いじょうじたいにセポールは震撼しんかんした。


″家の中にいれば気絶きぜつしない″


そんなうわさが広がった。事実じじつ誰一人だれひとりとして屋内おくないでは気絶きぜつしなかったのだ。


そのため、人々は家にかくれ、まちはさながらゴーストタウンのようになってしまった。


シエリアをたよる依頼も十数件じゅうすうけんは来ており、こと重大じゅうだいさを物語ものがたっていた。


トラブル・ブレイカーは頭をひねった。


「う〜ん、原因がわからないことにはなぁ……。河原かわらで子供がやることで、屋内おくないでは起こらない。今まではまったく起こらなかったのに……。なにか、なにかきっかけが……あッ!!」


シエリアはそうさけぶと空を凝視ぎょうしした。


数え切れないほどのオフリトンボが飛んでいる。


よーく観察かんさつしていると気が遠くなってきた。


そのまま雑貨屋少女ざっかやしょうじょ気絶きぜつして仰向あおむけにたおんでしまった。


少ししてシエリアは意識いしきをとり戻し、頭をブンブンと振った。


「わかった!! オフリトンボだ!! 器用きよう尻尾しっぽをグルグルして私たちを気絶きぜつさせてるんだ!! 逆襲ぎゃくしゅうだよこれは!!」


おそらくトンボがグルグル指回ゆびまわしを学習がくしゅうして、こちらにやりかえしてきているのだろう。


シエリアは元は自分の責任せきにんだといたが、それを怒りが上回うわまわった。


「ぐぐぐ!! トンボめ〜。ひとをバカにして!!」


普段ふだんきわめて温厚な(おんこう)な彼女だが、おこるとこわかったりする。


再び彼女は空を見ると指をグルグル回しだした。


にはを〜〜〜!!」


だが気づくとシエリアはまた気絶きぜつしていた。


頭を振って起き上がる。


「う、うう。グルグルが改良かいりょうされてる!! これじゃ打ち負けちゃうよ!!」


すぐに少女は店内に入ると売り物の「ハゲザルでも出来る催眠術さいみんじゅつ」の本を取り出してきた。


そして指回しに催眠術さいみんじゅつ要素ようそぜた。


ついでに穴開あなあきコインに糸を垂らしたアイテムも引っり出してきた。


こうして雑貨屋ざっかや反撃はんけきが始まった。


「トンボ、トンボは非行ひこうくら〜ぶ。トンボ、トンボは(ひこう)非行くら〜ぶ」


自分に催眠さいみんくのをけるため、シエリアはなぞ言葉ことばをつぶやいた。


そのまま天に指を向けてグルグルと回しだした。


そして街中まちなかを歩き回りだしたのである。


あたまのおかしい人だと思われそうになった時、ボトボトとオフリトンボが落ちてきた。


シエリアの催眠術指回さいみんじゅつゆびまわしがクリティカルヒットしたのである。


まちの人々(ひとびと)はこれをみておどろいたが、わらにもすごる思いで彼女の動きを真似まねしだした。


「トンボ、トンボは非行ひこうくら〜ぶ。トンボ、トンボは非行ひこうくら〜ぶ」


ほぼすべての住民じゅうみんがこれを真似まねて、街の隅々(すみずみ)まで移行進こうしんした結果、気絶事件きぜつじけんはパタリとんだ。


やはりオフリトンボが人間の指回ゆびまわしを真似まねしたのが原因げんいんだったみたいです。


問題も5日ほどで収束しゃうそくしましたし、まずまずかなと思います。


それはそうと、小さい頃は神様かみさまてですね。なんでもゆめを……。


え? 何の話かって? やっぱり版権はんけんはNGですか?


……という……


「お話でね。ハッハッハ!! 昔、こんな安っぽいパニックホラーみたいな事があったんだ。私、トーゼが昆虫博士こんちゅうはかせになったきっかけさ。シエリアおねえちゃんも相変あいかわらず元気でやってるよ。版権はんけんオチはシャレにならないから私が来たんだ」


……というお話だったんだよ。ハッハッハ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ