名前を知らない人のあだ名
知らない人にあだ名をつけるときって、その人をよく見るか。
または、その人の情報を誰かと共有したい時だと思う。
ずっと前、勤務先周辺の新聞配達のお姉さんがすごくクセツヨな外見だった。
多分30歳前と思われる女性で、少し癖毛の胸まである髪は全く結ばず。
ノーメイクで汗だくになりながらママチャリで新聞配達をする、体型的には有名な女性芸人のアンリちゃんみたいなポチャ体型の人だった。
いつ見ても、髪は顔に張り付き、年中同じ綿素材のチェックのロングスカート。
しかも、多分、自転車のサドルに引っ掛けて破いたであろう、90度の「 型のスカートの破れがあり、いつ見ても、それは膝裏の辺りにありにあった。
縫わないのね…。
だから、私の中で、その人のあだ名はカギカッコだった。
カギカッコさんはいつも一生懸命に夕刊を配達してくれる。
汗だくで夕刊を運んでくれるので、カギカッコさんには感謝していた。
でも、いつのまにか見なくなってしまった。
次に、私があだ名をつけたのは、アミタイツ。
毎朝、8時47分頃に、私の勤務先の前を徒歩で通っていく女性。
猫背なのに、なぜか顎が出ている不思議な歩き方。
どこかの事務員さんなのだろう。
冬だからコートを着るとか、夏だから半袖とかじゃない。
肩までのストレートの髪と、中年特有のぽっちゃり体型で、カーディガンと、膝丈のタイトスカート。
この方も何故か年中同じ服装なのだが、気になるのは、ふくらはぎの半ばまでの黒のアミタイツを履いている事。
靴下じゃないのよ。マジでアミタイツなわけ。
しかも残念ながら、「アミタイツ」は決まった位置からしか見えない。
だから、他の社員は「アミタイツ」を見たことがないのだ。
もしや、幽霊か?
顎だけが出た下向きの横顔は、どんな顔をした人なのか見えないから、実態がないのかと怯えた時期もあった。
でも最近、お昼のコンビニで同僚と買い物をしているのをたまに見かけるようになった。
ふくらはぎ半ばのアミタイツを履いた人なんて、きっとそうそういるもんじゃない。
前から顔を見たけど、横から見た姿があまりにインパクトありすぎて顔は覚えられない。
想像してみて?
肩までのストレートの猫背なのに、顎の先は見えている。
でも顔は見えない…。
足元はアミタイツ。
ね?
顔覚えられないでしょう?
そして最後は、「10キロじいちゃん」
交通量の多い道でたまに遭遇するママチャリよりも遅い速度で走る軽自動車だ。
普通にチャリで追い抜けるから、大渋滞を作っている。
何故か、目撃情報がすごく広い範囲に及ぶ。
近所の人達みんな、それぞれの家庭であだ名をつけているらしく「渋滞じいちゃん」とか「ノロノロじいちゃん」とかあるらしい。
最近、仕事で家から車で40分くらい離れたところで、10キロじいちゃんに遭遇した。
制限速度60キロの片側3車線の道路で、10キロで走って大渋滞をつくっていた。
ウチから半径5キロの範囲での目撃情報が多いのに、30キロくらい離れた場所にいたのだ。
しかも、交通ルールがあってないような、みんなが飛ばす道で。
きっと2時間くらいかけてここまで来たんだろう。ママチャリスピードだもの。
恐るべし10キロじいちゃん。
そしてふと思った。もしかしたら、知らない人が私にあだ名をつけているかもしれない。
自分にあだ名をつけるとしたら?
うーん。
客観的に見た意見はわからんが、ウチのあたりではほとんど利用している人を見ないネッククーラーを使っているので、あだ名は「首輪」だろうか。