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ただただ鐘の音を心底恨む日

お久しぶりです。


 

 

 窓から白銀の光が差し込む。三本に別れ差し込むその光は流華の顔を照らし、棚の物を照らし、猫を照らす。光に当てられた猫は流華からにゃん吉と呼ばれている猫だった。猫は瞼をこすると光の先、窓に向かい月を見上げる。


「ご主人様は気づいてなかったよな。はぁ」


 猫はため息をつくとくるんと一回転し、少年の姿に変化した。その髪からでる猫耳と日本の尻尾からかろうじてあの猫であることがわかる。


 猫は妖怪だ。だが妖怪だが正確に言えばあまりにも人に味方をしないあまりいつのまにか妖怪と言われるようになったと言うのが正しい。なにせ妖怪とは人を害なし神獣の敵となったもののことをいうのだから。

 だから妖怪であろうと護符がいまだに使えるのだ。本来地に落ちた妖怪には使えないはずのものを。

(ご主人様が世間知らずでよかったと思うのはこれで二回目か。最初の出会いすら奇跡だったもんナ)


 猫はまだ流華にいえていないことがあった。それは自分が妖怪と神獣の中間にいるということ。そして、まだ名前があるということ。

 猫は目を瞑ると月の光の下、自身の過去を思い返す。



 ***



「月詠、ご飯の時間だヨ」

 月詠、それが猫の名前だった。

「にゃぁー」と返事をして主人のところへ向かうといつもとは違い猫の好物である肉が置いてある。

「にゃにゃにゃぁ!?」目をまんまるに見開き主人を見ると今までにないくらいニコニコと笑っている。

「驚いたカ?なんと今日は……」


 今日は…の続きの言葉を固唾を飲んでまちながら主人の顔をみつめる。

 彼の特徴といえるであろう青に近い黒髪はしなびれ、瞳にだけ生気がこもっている。


「今日はね、なんと、月詠の誕生日ダ!」


 声が聞こえはっと意識を戻したがその言葉を理解するのには時間がかかった。誕生日なんて毎年やっていたら金も、もたない。なんなら去年だってやってなかったはずだ。


「にゃ?」


 呆れの念をこれまでかとつめ吐き出した言葉を彼は驚いてると思ったのか、さらに嬉しそうに笑う。


「驚いただろう?よかったよかった。僕も、もう長くはないからネ、久しぶりにやりたかったんだ。誕生日のお祝いってのヲ。」


 わざわざ猫でやらなくても良いだろうと思いながら猫はご主人様の膝の上にのるとほおをすりよせる。頭を撫でる手と特徴的な語尾が心地いい。

 不思議なご主人様。優しいご主人様。まどろみながらみる顔はいつだって笑顔で。


 だからずっと、ずっとこの、幸せな日々が続くと思っていた。いや、思っていたかった。


 この幸せがぷつんと千切れたのはこの二年後。

 二年前からはずっと誕生日のお祝いをされて、今年こそは猫がやるのだと猫が心の中で息巻いていた時。


 ご主人様が、倒れた。なんの兆しもなくいきなりばたんと。


 猫の手も借りたい、などという言葉はあるが猫に今できることはない。森の中の小屋にわざわざくる人は物取りくらいだ。今年もお祝いのためのご飯があった。それをご主人様の前まで持って行った時初めて気づいた。


(いつからご主人様のご飯が少なくなっていた?)


 ご飯の棚には猫のためのご飯はあった。じゃあ、ご主人様のご飯はどこだ。いつからご主人様は猫と一緒に食べなくなっていたのだと。

 もっと、先に気付いてさえいれば倒れなかったのか?そんな疑問ばかりで誰かから答えが欲しくて、猫はこの時も窓の下から月を眺めた。


 月の光が猫の姿を照らした時、猫は月を詠んだ。

『月に向かい湖の前まで歩けさすればそなた神獣にならん』

 自分の声だが違う声を不快に思い猫はにゃう、と声をあげる。

 尻尾が下から上へと揺れ、その影が新たな尻尾を作る。月の光でできたかのような白銀の尻尾。まだ、光の残る尻尾を揺らしながら月に向かって歩く。神獣がどんなものか猫は知らない。でもそれくらいしかご主人様を救う手は思いつかなかった。

 猫は月の光に導かれるようにすたすたと歩くとあるところで立ち止まった。湖の三歩手前。湖ははやくはやく、というように月の光の下、湖が光を反射する。そしてついに猫は半歩下がると湖に飛び込んだ。水飛沫が光を乱反射させる。青い光に導かれるようにして猫は森の中に落ちた。鐘に音がしたような気がした————

 

 

 

 

 「ん、ふにゅぁ」


 流華が目を覚ますとにゃん吉は流華の制服を出していた。あれ?今日は学校だったけ?と流華は起きたばかりの回らない頭で考える。


「お、目が覚めたカ?今日にゅーがくしきにゃんだロ、頑張れヨ」


 あぁ、そうだ始業式だ。入学式ではないな。というかあの、毒舌なにゃん吉が頑張れよだと!?なにかあったのだろうか熱?それとも…

 流華はおかしな早朝テンションというものか頭の中で活発に話し始める。


「にゃん吉が応援するなんて……!私は嬉しい。ん、もしや騙しに?」

「なわけにゃいだろ。ただ、いい夢を見ただけだよ」

「よかったじゃん」


 流華は何も聞かず返事をするとくしで髪をとかす。にゃん吉に深入りしすぎないというのも流華が自分で決めたルールだ。時々悲しそうな顔をする日がある。そう言った時は必ずといっていいほど姿をくらます。

 流華が髪をとかし終わるとにゃん吉が待ってましたと言わんばかりに流華の後ろにいく。


「今日は僕がやる」

「え、うそ、信じられない程に優しい。というかできるの?」


 にゃん吉に髪が結べるのか、猫に結べるとは思えない。そう流華が考えるのをにゃん吉もわかっている。


「妖怪なめんなヨ?」


 にゃん吉は勝ち誇ったように流華にドヤると目を瞑ってもらうのだ。いや、護符でも完璧に目を閉じさせていた。



 ______




「なめてすみませんでした!」

「よろしい」


 流華は舐めていてすみませんとにゃん吉に平謝りする。ハーフアップにし、下の髪を二つに結んだ髪型は流華も初めて見るものだった。でも綺麗に仕上がっている。猫の手でつくられたとは思えないほどに。

 そして、ハーフアップの結び目にはもちろん師匠からもらった花が飾られている。

(完璧だな……)

 何年も女子をしている流華よりうまいとはさすが何年も生きる妖怪といったところか。

 どうやって編んだのか見たい気持ちもあったがにゃん吉が見せないというのだなにか問題でもあるのだろう。以外と護符の力でごり押ししかのかもしれないと心の中で笑ってみる。愉快な気持ちになったところで


「流華ーー!早く朝ごはん食べに来なさい!」


 と階段の下の方から母が流華を呼ぶ。

「はーい。今行くー」と返事をして部屋と猫を振り返った。いつも通りの一人と一匹だ。それを見て流華はばたん、とドアを閉じた。






 ***






 キーーンカーーンカーンコーーーーン


 始業式の始まりを告げる鐘の音がなった。

 周りのみんなは転校生がどうのこうのと話している。くだらない、転校生がもの珍しいのなんか始めだけだ。あとは普段通りに戻る。そう流華が考えているなか一回ドアが開いた。

 先生が教室に入ってくる。噂の新入生はまだ廊下にいるらしい。甘栗色の髪を視界の端にとらえる。


「………えー、だから今日から気を引き締めて学校に望めよ?それと、知っているヤツもいると思うが今日から転校生がうちのクラスにくる。ソイツは世の中に疎いところがあるから色々教えてやってくれ。」


 いつも通りの朝のホームルームが終わりにかける。ついに待望の転校生サマの入場らしい。


 えー!可愛い子だといいなぁー。いや、かっこいいのもありじゃね?それより世間知らずとか金持ちかもよ、あぁ、箱入りお嬢様ってやつか?でもこんな底辺学校にきても意味ねぇぞ?

 それはそうだよなw


 周りのやつらが朝以上に騒ぐ。こつん、と音がして転校生が教室に入ってくる。ボブだがサイドの髪だけ長い。顔立ちは綺麗というより可愛い。目も大きく、くりくりと動きそうな感じだ。そして腕の中にはなぜかハムスターがいる。


(( ハ ム ス ター? ))


 珍しく皆んなの心が一致した瞬間。件のハムスターはキョロキョロと辺りを見渡すと


「お主ら揃いも揃って神力への耐性がないな。そんなんで大丈夫なのか?」

 上から目線の言葉をいった。


(っ!!喋った?)

 流華のハムスターとそれを連れている少女への警戒心が上がる。喋る生き物など流華は神獣と妖怪以外は知らない。唾を呑みながら先生の説明を待つ。


「この、栗林さんは幼いころ近くの森で神隠しにあったらしい。近所に神隠しの森と言われるところがあるだろ?そこだ。そこで神域に行き神子の修行を受け今は神子見習いとなっている。神獣はもちろんそこのハムスター様だ。仲良くしてやってくれ。栗林さん、自己紹介を頼めるか?」


 名前を聞いてから先生の話が耳に入らない。間違いない、ねりんだ。あぁ、なんということだろう。ずっと探して待ち望んでいた幼馴染が私の敵だなんて。心臓の鼓動が早くなる。


(っはぁ、はぁ、)


「はい!あたしは栗林ねりんっていうよ!みんな仲良くして欲しいな!!」


 相変わらず明るくて苦しい。私はもう隣に行くことはできない。


「っはぁ……、先生、私体調が悪いので保健室に行ってきます。」

「大丈夫か?いってこい」

「……っはい」



 え、あのお嬢が風邪とか嘘だろ。完全無欠のお嬢だぞ、やっぱ美しいな。でも栗林さんも可愛くね?それな!三大美人の一人になるんじゃないか?というか神子様だぞ、敬えよ。優しそうだし天使だよな。わかるわかる。



 また、うるさい。流華は下を向きながらできるだけ目立たないようにドアを開けて廊下に出る。後ろでねりんがお人よしを発揮させた気がしたが流華は聞こえてないふりをした。



「あの子、大丈夫かな」

「大丈夫であろう。それより、ねりんの気遣いを無視するとは!けしからん」


 ハムスターはほおをふくらまれぷんぷんと怒る。騒がしいクラスの奴らはねりんにいいところを見せようと声をかける。下心丸出しすぎていっそ清々しい。


「お嬢だし、大丈夫だろ」

「だよな安定安全のお嬢だもんな」


 お嬢?人の世界から長く離れ、さらにこの学校にきたばかりのねりんにわかるはずはない。


「あー、お嬢ってのはさっきの猫宮さんのことで何やっても完璧だし性格が男前な感じもあるからついたあだ名なんだよな」

「そうそう。ついでに校内美人の一人でもある。」


 猫宮、その苗字は唯一と言っていいほどの友達の苗字。るーちゃんなのかな?


「ねぇ!猫宮さんの下の名前って何?早く教えて」

 ねりんはそんな考えに至ると流華が帰る前に捕まえなければと焦りながら聞く。ハムスターにはそれがわからないので不思議そうにとう。

「ねりん、どうしたのじゃ?そんなに焦って」


「たしか、流華だったと思うけどそれがどうかしたのか?」

「やっぱり!ありがとね!」 


 チャイムが響き休憩に入った瞬間、れりんは廊下に飛び出して走る。廊下は走らない!と委員長らしき人がいうが関係なしに保健室に向かって走っている。

「やっぱりとはどういうことじゃ?」

「るーちゃんはあたしも一緒にあの森に遊びに行った親友なの!るーちゃんってね心に負荷がかかると体調悪くなりやすいんだ。つまり今私と出会ったことで精神的ダメージをおったんだよ!」


 いや、五年前なのによく覚えてるな。と流華がいれば心の中でツッコミを入れたことだろうでも今は止める奴はいない。れりんは暴走を続ける。行く先々の人が猛スピードで走るハムスターと少女を見つめる。といっても学校の中だけだが……もっとダメかもしれない。


「やっほー!るーちゃんいる?ってあれれ?先生、るーちゃん、えと、猫宮さんって帰りましたか?」

「んー、猫宮さんはさっきまでいたわよ。どこにいったのかしら」


 荷物も流華も姿形もなく保健室から消えていた。ハムスターはお得意の神力で探ったがそれでも見つからなかった。






(はぁ……もうちょっとチャイムが遅ければ…恨むよチャイム)


 流華は師匠の教えの通りハムスターの神力を感知するとすぐさま息も影も殺して書かれたのだ。神力に勝つ技術。

 

「さてと鐘を恨んだところで帰ろうかな。先生、ありがとうございました。」

「えぇ、どうも。そういえば栗林さんが探していたわよ。」

「教えてくれてありがとうございます。では。」

 

 流華は元に戻ると先生に挨拶をして家路についた。るんるんとスキップをしていたのは嬉しさがあったから、だろう。


会わなければよかったと思うとは知らずに。

四日間空きましたね。あきたわけではないのです、ただ書いた文を消すという大失態を二回してやる気がなくなっただけなのです!はい、口調おかしいですね、ただいまイラついてテンションがおかしくなっています。

二日に一回程度、もしかしたら一週間に一回程度の投稿になる可能性がありますがご了承ください。それと誤字などありましたら教えてくださいね。

というかというか文字数が大幅に増えました。いぇい!やったね!


(文脈おかしすぎだろ)←一人ツッコミ

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