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にゃるほど、これが感動の別れってやつカ

いいですよね感動の別れってやつ


「流華、またここにいるのカ」

流華は丘の木の上で星を見ている。夏休みに入ってからずっと夜になるとこの森に来る。


「うん、今日は特に、ね」

流華は力無く笑う。今日は8月15日、かつて流華の幼馴染が消えた日。あの日も星が綺麗な日だった。最後はこの丘に来て流れ星を見ようと約束して…

「あぁ、もう5年か。最初の頃のお前はそれはもう可愛かったのにナ?」

にゃん吉に出会ったのもその日だ。それにしても昔の私だけが可愛いみたいじゃない?

「にゃん吉、水にいれるよ?」

「にゃにゃ!ヤメロ!オレはあんな悪魔のものにはいりたくナイ!」

猫の本能とでもいうのか妖怪である今でも風呂は嫌いなよう。

(まったく…、洗わずにサラサラなまんまのその毛が羨ましいですよ)

「あら、今日も元気、じゃあいいよね。」

ふっと、花を散らし花びらが彼女を中心に踊る。まるで劇のワンシーンだ。その後すぐに流華の首に手刀を叩き込んだことさえ見なければ。


気づいた時には流華lは丘の上に寝っ転がっていた。いや、倒れていた。


「流華ちゃん。もうちょっと頑張りなよー。他の巫女はきっと私みたいに優しくないよ?」

「…うるさい」


倒してきた者は巫女であった。本人は流華の師匠を名乗っているが流華は敵だと思っている。


「またまたー、そんな反抗的な態度とっちゃって…あの子が死んでも知らないよ?」

「っ!にゃん吉は…それだけは…」


にゃん吉とは流華の親友である。かつて幼馴染が行方不明になった時その穴を埋めるように現れた妖怪。夜の闇に紛れるような黒い毛とその中で目を引く赤と青の瞳。


「なら強くなりなよ。妖怪は巫女の敵だ。そしてそれを守る君もね」


妖怪は神獣が悪いことをしたらなるとされている。つまること神獣と巫女の裏切り者だ。


「……」


にゃん吉の「僕はにゃん吉じゃにゃい!」というつぶやきは無視され話は進む。


「だから、流華には先に逃げるすべを教えた。逃げるだけなら私以上。あとは戦闘だったんだけどね…」


流華は思い返す。五年前に初めて出会って、また、三年前に再会し始まった修行を。走って、避けて、走って、避けて………。捕まるとにゃん吉も苦しそうな目に遭ってて…、それが嫌だから寝るまも惜しんで修行したあの日々を。


「あれ、流華ちゃん体調でも悪いの?顔色悪いよ?」

「ん、なんでもない。」


流華は過去を思い出し少しばかり懐かしくなる。かつて消えた幼馴染、何もできなかった、気付かなかった自分の無力さ。


「もう一回、お願い」

「ふふ、これだから流華ちゃんの師匠はやめられないね。でも…時間だ」


流華がやる気をみなぎらせ修行の続行を望む。それに師匠は綺麗な笑顔で頷き笑う。時間?流華は疑問に思う。いつだって師匠は流華が望めば教えてくれた。ただ二つだけ教えてもらえないことがあった。それは師匠の正体と…


「神隠し……?」


流華が不安そうにあっていないことを願いながら呟いた言葉は正解で。


「さすが流華ちゃん、正解だよ。」

「なんで?あなたは神隠しに関係していたの?何よりなんでいつかわかるの…?いや…あなたがいなくなるなんてこれから楽だなぁ」


悲しそうに笑う師匠と苦しそうな顔で笑う流華。その姿はそっくりで。


「最後くらい強がらないでよ。そうだね、話してなかったよね。じゃあ話そうか。」


流華が初めて会った時に最も望んだ言葉。だが今の流華にとっては知りたくないこと。


「いい…。そんなの自分で見つけて見せるから。」


だから、流華は知ることを拒んだ。後で後悔するかもしれないでも知ることはいまや最も怖い。


「あぁ、やっぱり流華ちゃんだなぁ。そしてだからあの時…………。」

「なに…どうかしたの?」


納得したかのように呟くと師匠は流華に花を渡した。


「うん。これを渡そうと思ってね。」

「きれい…」


その花は真っ白な色をしていた。彼岸花のように花びらが細く儚い。


「この花の花言葉にはまた会う日までって意味があるんだ。」

「また、会えるの?」

「もちろん!気づいた時にはもう遅いってね」


イタズラっぽく笑いながら師匠は一歩下がった。流華はその花を大切に手で包み込むとにゃん吉を頭にのせた。


「そろそろ栗ちゃんがくるころかな。にゃん吉くん、ちゃんと流華をk…………」


どこからともなく現れた小さな生き物が空いていた腕にどびこむとその時をまっていたかのように師匠は消えた。最後に残した言葉は流華ではなくにゃん吉に向けて話していたが肝心な最後の言葉は聞こえず。


「あーあ。行っちゃったなぁししょー。」

「流華、泣いてんのカ?」


にゃん吉が頭からおりしゃがんだ流華の顔を見ると目が赤く腫れ、涙の跡が残っていた。


「別にないてないし……」

「にゃるほど、これが感動の別れってやつカ」


にゃん吉はよく分かったというように小さく背伸びをする。そして流華が待っている花を奪った。


「そんなことないし……って、にゃん吉。なにするの…!」

「別ににゃんてことないサ。ただの飼い主へのプレゼントだ」


あっ、と手を伸ばした流華の手を避けにゃん吉は護符を生み出し花にはる。


「ねぇ…、にゃん吉ー?何をしたのかナァ?」


流華の語尾が高くなり怒っていることを仄めかす。


「別に、ただの保護の術だ。その花どうせ飾るんだロ?いい飾り場所教えてやろうか?」

「いい場所ってどこよ…」


素直じゃないと自分のことは棚に上げて呆れながら流華はにゃん吉に聞いた。


「そんなん決まってるさ、ここだヨ!」


そして、にゃん吉が花を置いた場所は流華のハーフアップの真ん中、ちょうど簪をさしているところだった。

濃紺の髪に白い花がずっとそばにいるよというように保護の術が光を発する。


「ん、そうだね」


流華は髪に飾られた花を星にかざし、流れる星に「また会えますように」と願いを込めた。

※舞台は、「星影の道案内」で出てくる国の隣国であることを、ここで注釈しておきます。


さて、相変わらず短いですね200字くらいは増えたのでしょうがはてさて……にゃん吉って名前本人が認めてないので仮なんですよね(仮)を物語中で入れるつもりはないですが

あと、この別れのシーン何百字かで済ませる予定でした笑

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