十二話 属性ヒエヒエ系少年刺客と戦う師匠の話
一人。
タケと離れたのは久々じゃな。いや会ってから初めてかもしれん。
六千年振りの静謐。
淋しいという感情が思い出せたわ。
――――――
「デートですよ先輩♡観光地でも回りましょう!」
「約束した覚えはないんですけど………じゃあ師匠、行きまs………」
「逢引に儂は不要じゃろ。儂は少し用事がある故、二人でおれ。」
「ありがとうございます!!先輩っ♡行きましょう!!」
「え……ああ。うん。じゃあ師匠、また後で。」
「ああ。また後でな。」
――――――
……さてと、用事をすませるかのぅ。
人気のない、路地裏。
だれもいないな………よし。
「儂に惚れでもしたのか?もしそうなら黙って隠れてないで早う話し掛けて来んか。まあ振るけどな。」
「気づいていたか〜。」
瞬きと同時に視界に姿を現したのは、青髪青目、青い服の少年。見た目は8歳ほどか?
「それで、用はなんじゃ?」
「簡単だよ。まあ敢えていうなら、『御命頂戴』ってとこかな。獣神サマ。」
「ほう。」
「自己紹介しよう。ボクはフリ。『龍王』の未完の【器】にして偉大なる創造神様の使いの一人だよ。」
「それで?儂を殺せるとでも?」
「その為に300年、準備してきたんだからね。自分から森を出てくるとは思ってなかったけど、かえって好都合だ。」
「勝算はあるということか。面白い。」
「では。我が父、龍神ウィンの加護あらんことを。フリ=ザクロス、【参る】。」
同時に、視界が変わる。空間系のスキルか。
一面、雪景色。目の前には氷の大聖堂。雪の結晶でできた十字架に、美しい龍の氷像。
蒼い氷の大鐘に映えるは雪上に咲く白い百合。
儂の時の神社と近いものに見える。
刹那、少年の拳が儂の鳩尾を狙う。
即座に回避。速いな。
「【氷魔法】【龍魔法】【接続・融合】〚極位氷龍魔法:雪龍刃牙〛」
少年の腕に、氷の刃のついたガントレットが出現。
主武器は格闘か。
「水龍格闘術、壱、流水巡り、世は潤う」
流れるように連撃、素手で受ける。
連撃が終わらない。美しいほど連撃の隙間が無く、23発毎に1発目の型にもどりおる。
半永久的に続く連撃。素晴らしいのぅ。
「【獣神速】」
強いて言うなら17と18の間が少し繋がりが甘い。ここじゃな。
「雷獣流抜刀術、弐、天に燃ゆる、轟の虎」
先日タケが見せたものとは比べ物にならない程の神速の剣戟。
少年はガントレットで受けるも、砕け、300mほど飛ばされる。
あれを食らって腕一本で済むとは、中々じゃ。
「【高速再生】」
腕が再生。じゃが、
「そんな暇あるのか?」
耳元で囁く。
少年はビクッと体を震わせて即座に後ろに飛ぶ。
「…なんで今、殺さなかったの?」
「つまらんじゃろう。そんなことすれば。」
「遊ばれてるなあ。一対一では勝てる気がしない。」
「なんじゃもう諦めるのか?」
「誰が一対一って言ったよ。」
直後、空中に穴が開き、中から大量の氷龍。
更に巨大な門が現れ、現れたのはS級魔獣数十体。
おまけに一体、零餓獣というSS級の災害指定魔獣。
「なるほど。準備とはこれのことか。」
「まあね。」
360度集中攻撃。
「少しばかり本気を出すか。【解刃】【黒雷無影天】【神獣魔法】〚神位雷獣魔法:黒雷、神之牙〛」
半径4000mに、大量の雷が隙間なく鳴り響く。そして雷刃は全てを塵に帰す。
一掃。
刹那、後頭部に殺気。
躱す。
「生きておったか。気配が消えたから死んだかと思ったわ。」
「なんで躱せるんだよ化け物め…」
視界の端で、崩れた筈の零餓獣が儂に光線を放つ。
躱せるが、ここは…………
「雷獣流下段之構、参、星は不見、輝は刹那」
光線を縦に斬り、雷光と共に零餓獣の首を落とす。
「っ!!水龍格闘術、参、凍は深、溶は高!!」
高速で拳が首に迫る。
速い。が、
「その程度では儂には及ばんよ。
雷獣流下段之構、漆、落雷を昇る、雷獣」
拳を縦に斬り、更に700mほど吹き飛ばす。
聖堂に衝突し、聖堂が崩れる。
瓦礫の中に、満身創痍で座る、少年。
「つっよぉ………300年掛けたのに無傷って…………」
「終わりじゃな。少々期待外れじゃったが、まあ楽しめたわ。」
止めを刺す、その時。
少年が、ニヤリと笑う。
「誰が準備が魔獣だけって言ったよ。」
足元にいつの間にか大規模な魔方陣。
儂としたことが、油断。
恐らく制作に数百人は犠牲になったであろう、封印術式が作動した。
躱さねば。
「【獣神速…………」
「逃がすかあ!!」
少年が立ち上がり、儂にしがみつく。
少年も封印に巻き込まれる。
「【絶命際之全霊力】!!」
「【神撃雷千之咆哮】!!」
全身全霊で動こうとするも、少年の命を賭した妨害で邪魔される。
その一瞬の遅れで、封印は完成した。
そこで一旦、意識が途絶えた。
ちなみに【読心】はフリのスキル【精神干渉耐性】で妨害されてました。