十一話 師匠ラブラブ系大剣使いと決闘する悪魔の話
場所は傭兵団基地内の道場の様な部屋。
「はぁ…なんでこんな事に…すぅ…雷鳴団流決闘のルールは三つ!
一つ、殺さない。
二つ、降参又は気絶で決着。
三つ、必要以上に甚振る行為は禁止とする。
これさえ守れば正々堂々と戦う必要は無し!勝てば良い!」
要するに何しても良いという訳ね。
団長と俺の試合。結構なギャラリーできていた。
ガイアスさんが大剣を構える。
「…」
めっちゃ集中してる。俺も真面目にやらないと失礼かな。
「三、二、一、開始!」
同時に大剣が俺の首に触れる。
全力で体を捻って躱す。
「…やはり躱すか…」
ヤバい。思ってたより全然強い。
「ほう。正直なめとったわ。あの重厚な大剣を持ってあの速さ。中々じゃの。」
師匠が嬉しそうな声を上げるが、それどころじゃない。
下手すりゃ死ぬな。集中、集中……良し。
「あの人の弟子なら躱せない筈が無い。次、征くぞ。」
眼の前からガイアスが消える。上…いや後ろか。
「雷獣流上段之構、捌、椛散り照らす、稲妻。」
その場で刀を上に構え、広範囲に半回転斬撃。
「【硬化】!」
ガイアスがスキルで剣を強化して受ける。二メートルほと飛ばされ、剣に罅が入るも、受けきった。
「なんつー威力だ…がっ!!」
即座に剣を俺に投げる。まっすぐに。
デタラメじゃない。が、狙いは分からない。師匠なら読心できるが俺は無理だから、普通に躱す。
「【反転】【剣召喚】!」
直後、真横にガイアス。投げた筈の剣を掴み、俺を横から斬る…前に俺がバク宙で躱す。
《説明。【剣召喚】は剣を自分の手元に召喚するスキル。【反転】はスキルの内容を反転するスキルです。推測するにNAME:ガイアス=オージンは【剣召喚】を【反転】し、「剣を自分に」ではなく「自分を剣に」召喚したと思われます。》
なるほどね。短距離転移か。
「まるで猿だな。」
「中学まで体操やってたからなあ。暫くぶりだったけど全然イケたわ。」
「キャー先輩かっこいー!!」
外野から直菜さんの声。
同時にガイアスさん急接近。
「女の声に気を削がれる内は甘いぜ。」
「足元注意。」
バキっと、ガイアスの足元の床板が割れる。魔法で腐らせた場所だ。
俺こういう小細工系顔に出ちゃうから苦手だったけど、一昨日取った【ポーカーフェイス】が意外と使えた。
「っ!!【衝波】!!」
床の更に下の地面に軽い衝撃波。
ガイアスが少し飛び上がり、俺の刀を躱す。
「良いね。お前全然本気じゃないな?」
「そりゃあ、街滅ぼしたくないし?」
「はっ!!良いね。最っ高だお前。あの人の次に最高だ。じゃあこうしようぜ!!【空走】!」
ガイアスが空中を走り出し、天井を斬って上空に立つ。
「空中戦といこう!!」
「俺のフィールドだぞ?」
一瞬で空中に移動。
「そんなの昨日の見れば分かるわ。演るからにはお互い、全力で!」
正々堂々、と言うよりバトルジャンキーだな。まあいいか。
「【飛翔】【神速】。【変身】一部解除。」
背中から3対の翼を顕現。黒い翼は悪魔の象徴らしいから、全て白に色を変えておく。。
ナビさん風お願い。
《承諾。〚風極意魔法:風嵐渦〛を発動します。》
上空を風がランダムに流れ抜く。
複雑な気流。
しかし地上には被害は出さない様に調整してくれるナビさん、素敵!
《ありがとうございます。》
「はっえげつないな。まるで神の使いだ。」
「まあ近くはあるね。」
「改めて、〈剣豪〉のガイアス。参る。【罪剣】」
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「珍しいスキルを持っとるのう。」
「知ってるんですか?」
「自分が奪った命の分だけ筋力上がる。代償として、一撃を敵に入れる毎に自分が殺した命の、絶命の苦しみをその身に受ける。強力じゃが、儂なら絶対使わんな。」
「え?それ一撃入れたら自分も死ぬんじゃ…」
「いや、あくまで苦しみだけじゃ。傷は負わんが、その苦痛は計り知れん。なんせ絶命の苦しみじゃからな。あ、そういえば殺した相手の憎しみが強いとマジで死ぬこともあるそうじゃな。」
「ヤバいですね…」
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暴風の中、全力で俺に剣を振るう。躱す。躱す。躱す。
「当たらん。なら!【衝波】【反転】!!」
突然ガイアスの元へ引き寄せられる。【衝波】が「放つ」なら、反転して「吸収する」なのか?「反対」の定義が知りたいところだが、今はそんな状況じゃない。
当たらないなら、近寄れないなら引き寄せてしまえという逆転発想。
だがカウンターに弱そうだ。
刀を鞘に納める。
「雷獣流抜刀術、弐、天に燃ゆる、轟の虎」
雷が虎の顎となり、抜刀の一閃と共にガイアスの首に迫る。
瞬間、ニヤリと笑う。
「ここだ!【悪戯】!!」
ぽすっ☆
突然頭に、チョークだらけの黒板消し。
チョークの粉に、視界を遮られる。
「【衝波】!!」
刹那、ガイアスが一回転。
「回斬波!!」
衝撃波を剣にのせ、その勢いを乗せた剣戟。
先程の【罪の剣】というスキルで筋力も上がっている。
ヤバい。視界もまだ悪い。
躱しきれない!
《警告。死が接近。対策機構を立ち上げます。【魔神の小指】【改悪】、【全魔法】⇨〚上位錬金魔法:武具融合〛〚中位強化魔法:加速〛。並列発動します。》
右手に六本目の指が出現。筋力が格段に上がると同時に、HPがかなり削られた。
更に小指を【改悪】。腕に激痛が走り、黒く染まる。
更に翼が3対中1対もぎ取られ、刀に吸収される。
その刀が加速する。
ガイアスの首を飛ばし、空の雲まで薙ぎ払う。
「阿呆。殺しは反則じゃ。」
直後、師匠が真横に現れ、ガイアスの首を繋げる。
「え…あ……え…はっ反則により、勝者、ガイアス=オージン団長!!」