九話 戦闘力つよつよ系最強師匠が派手に無双する話
《警告。【■■■■】の【運命操作】により、狂魔行軍が発生しました。》
? すたんぴーど? なんだそれ。
「あんのバカが…儂等にちょっかいをかけに来たか。おい、ギルド嬢。」
「は、はい。何でしょう?」
「頭を伏せろ。」
直後、火球がギルド本部に直撃。どうやら飛竜が放ったようだ。
受付のお姉さんは寸での処で無事。俺と師匠は言わずもがな、沢北さんも結界のようなもので身を守っていた。
【飛翔】
空から見てみる。
「タケ、数は?」
「一時の方向から約数千の魔獣の群れ。被害者は…今の所なし。飛竜が数十頭、既に街の上空にあり。狙いはこのギルド本部に集まっています。」
「すっ数千!?しかも飛竜が数十頭って…」
受付のお姉さんが絶句する。
「師匠、狙いは俺等ですか?」
「恐らくそうじゃな。」
「え、何?何が起こってるの?」
「まあまあ。沢北さんは今回は何もしなくて良いです。多分これ俺等のせいなんで、俺等だけで解決しますよ。」
街中がパニックになっている。魔物の大群がいきなり現れたのだから当然だ。
《〚上位精神魔法:敵意集中〛を発動。全てのモンスターの敵意が主に集中します。》
全てモンスターが俺の方を見る。
それによって他の人は無視され、襲われかけていた人も逃げ切れた。
「いや、ここは儂がやろう。タケは人の避難を。要らんだろうが念のためじゃ。」
「犯人に心当たりが?」
「まあな。それにほれ。儂の実力を認めさせる良い機会じゃ。」
《〚上位風魔法:上昇気流〛〚上位風魔法:気流操作〛を発動。範囲拡大。》
街中の人達を上空に掬い上げ、避難させる。結構大騒ぎだが、後で謝ろう。
《〚上位光魔法:堅牢結界〛を発動。対象を保護します。》
別にラノベみたいに自重する必要も無いし、派手に無双しちゃおう。ギャラリー沢山。
ヘイトを師匠に移す。
「ひっ一人で全部相手にする気ですか!?流石に無謀です!」
「そっそうですよ先輩!逃げなきゃ…」
確かにあの量だと、俺でも無傷では勝てないかもな。けど…
「沢北さん、流石に」
「儂を舐めすぎじゃて。」
空中に、師匠が飛び上がる。
空中に立ち、刀を抜く。
しゃがみ込み、刀を横に構える。
見惚れる程に、美しい。
大騒ぎだったのが、その一連の動きのみで、黙らせる。
しんと、世界が止まったかの様に錯覚する。
それも束の間、狂った魔物たちが師匠に襲いかかる。
「雷獣流下段之構、弐」
師匠が、呟く。
「黒雲遠く、然し雷光は不遠」
まるで、一瞬で天地を迸る雷光の様に、刹那後には師匠は消える。
同時に、一瞬にして全ての魔物の首が落ちる。
「流石師匠。イカれてる。」
「イカれてなどおらんわ。」
いつの間にか俺の後ろに居る師匠。
数秒の間を置いて、大歓声。
「うわはっはっは!なんだありゃ!!」
「何が起こったんだ!?」
「少なくともあの嬢ちゃんがやったことは間違いない!」
「最強の英雄だぁぁ!」
「誰だあいつ!」
「昨日酒を奢ってくれた太っ腹な二人だよ!」
「伝説の飲み比べの!」
「なんかいきなり魔物が現れたと思ったらいきなり空中に巻き上げられていきなり全員死んだ!」
「一体何者なんだぁ!?」
「すいませんいきなり空中に掬い上げちゃって。」
「何いってんだ!助かったぜ兄ちゃん!」
「スカートの中見えないように配慮されてるし!これ街の人全員分!?お兄さんも凄すぎ!」
「スタンピードで死傷者ゼロだぜ!?こんなの初めてだ!」
「街の救世主だよ!」
「英雄だ!!」
その後、それぞれが元いた場所に下ろす。ついでに。
《〚極位物質魔法:修繕〛を発動。スタンピードによる被害を算出。全てを修復します。》
壊れたギルドや巻き添えを食った家等を修復。ほんと魔法ってなんでもできるな。
残り魔力は…まだ半分以上あるか。
◆◇◆◇
翌日、ギルドから莫大な報酬を貰ったので、みんなに酒を振る舞いまくっていると(金はあっても使い道が無いから)、タキシード姿の初老のイケオジが訪ねてきた。なんでもこの街のトップの使いだそうだ。
この街はかなり特殊で、どこの国にも属していない。
だが別に周りの国と仲が悪い訳では無く、貿易も普通に行っている。
国どころか大陸も跨ぐ大組織である冒険者ギルドの本部に大陸最強の傭兵団の本部、それに加え城塞都市の名に相応しい強固な魔法城壁があるからこそ可能なことだろう。
しかもここは民主政。数年に一度代表が平民から選ばれ、その人をトップに政治が進む。
貴族、王族はおらず、差別、奴隷も禁止。貧困者には職を紹介し、孤児院も多数。
ついたあだ名が、『世界一平民が暮らしやすい街』。しかし王族貴族からは毛嫌いされていてよく他国から嫌がらせがあるようだ。
そんな街の代表が会いたがっているという。まああれだけのことをしたのだから当然といえば当然か。
断るのも失礼限りないので、馬車に乗って師匠と街の中央へ行く。
沢北さんも誘ったが、「私は何もしていないですよ。」と言ってついてこなかった。
なんか馬車で二人きりの時、師匠の機嫌が良かった。なんでだろう。