理由不明の愛
いつか世界を愛せるように。
世界の片隅で、一人の少女はそう願っていた。
少女は不幸で、たくさんの絶望を抱えていた。
悲しくて、今にも悲嘆の感情で溺れそうだった。
取り巻く環境は凄惨で、目も当てられない惨状。
ヒーローの参上は望めなくて、制裁ばかりをあたえる者に、罪の精算の機会は加えられない。
けれど少女は、願う事をやめなかった。
いつか世界を愛せるように。
今は愛せなくても、愛していけるようにと。
どうして少女はそう思うのか。
それは少女自身にも分からない。
記憶のない場所で、記憶のない所で、その理由にいたる出来事があったのかもしれない。
それとも、そんなものがなくて、どんな状況でも願いを絶やさないのが、少女の魂の本質だったから、なのかもしれない。
答えは分からない。
けれど、少女はそこに意味を求めないから。
答えが分からなくてもよかった。
いつか世界を愛せるように。
今日も、明日も、明後日も。
少女は願い続ける。
不幸に彩られた人生の中でも。
明日、理不尽な世界で死んでしまうかもしれないと思っていても。