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わたしの娘を返してっ!  作者: 月白ヤトヒコ


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2/8

この男は、わたしの味方じゃない。



 彼の両親、そしてわたしの両親へ挨拶を済ませたわたし達二人は、数ヵ月後結婚式を挙げることとなった。


 彼は気付いてない様子だったけど、実は彼の親類がわたしへ向ける視線は、ご両親への挨拶の時点で、どこか冷ややかだった。


 だからわたしは、無理に式を挙げなくてもいいと言ったのだけど……「あの子があなた達の式を楽しみにして、参加したいと言っているんだから、ちゃんとした式を挙げてちょうだい」と。


 そう、彼の母親に言われた。あの子の母親とは、姉妹なのだそうだ。




 (――――アイツが俺達の結婚式を見たいというから、是非見せてやってほしいと叔母夫婦に頼まれたんだ。おふくろにも、是非にと言われて……)




 結婚式に、あの子が来た。数ヵ月前に比べると大分痩せていて、メイクでは誤魔化せない程に(やつ)れた面持ちをしていた。


 それから式が始まってすぐにあの子が、胸を押さえてテーブルに突っ伏した。ガチャン! と、食器やグラスの落ちて割れる音が会場に響き渡った。


 結局、あの子は心臓発作で倒れて、救急車でそのまま運ばれて行った。


 あの子の両親は、あの子に付き添って会場を後にするまで、なぜかわたしをずっと睨み続けていた。


 会場は凍り付き、「無理して来なくても」そんな言葉がわたし側の親族から零れた。


 すると、「なんて薄情な」と、彼側の親族がわたしの親族達へと零してっ・・・


 彼は謝ってくれたけど、ハッキリ言って式は、とても酷いものになってしまった。台無しだ。


 これからのことが、不安で不安で堪らない。



 (――――お前は、そんな風に思っていたのか? 気にしていないから大丈夫だと、そう言っていたじゃないか。そして、この時点で俺の親族が冷たいと思っていたのか? 俺はそれに、気付いていなかった?)



 あの結婚式からわたしは、彼側の親族からよく思われていないということが、あからさまに判るようになった。彼には悪いけど、向こうの親類とはあまり顔を合わせたくない。




 (――――嫌、だったのか。君は――――)


 ページを捲ると、几帳面な文字に少し荒さが滲み出ているように見えた。


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 あの子が死んだと、彼の母親から連絡があった。


 嫌だったけど、葬式に出ることにした。


 予感していた通り……本当に、散々な葬式だった。これなら、あんなの出ない方がマシだった。


 意味がわからない。


 なぜわたしが、あの子から彼を奪った泥棒猫だなんて言われないといけないの?


 挙げ句、わたしが人殺し? 冗談じゃない。なんであの子の両親に責められなきゃいけないの?


 あの子が彼を好きだったからなに? あの子を返せ? できるワケないだろうが!


 子供を亡くしたばかりで可哀想? そして、今は錯乱してるだけだから許してやってほしい?


 錯乱してたら、傷心だったら他人になに言っても許されるワケっ? フザケンなっ!


 本当に、最悪の酷い式だった。


 彼との結婚が、間違いだった……と。そんな風には、まだ思いたくない。




 (――――結婚式から数ヵ月後、アイツが突然死んで、叔母夫婦が葬式で取り乱したときの……)


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 子供が生まれた。


 可愛い女の子なのに……


 彼が、自分の両親に会わせたいと言った。


 相変わらず、自分の親類がわたしのことをどう思っているのかわからないみたい。


 わたし、嫌われてるのに。


 あんな酷いことを言った連中に、この子が歓迎されると思ってるのかしら?


 本当、能天気で無神経な人。


 どうにか断ろう。その方がこの子のためだ。




 (・・・・・・)



жжжжжжжжжжжжжжж



 赤ちゃんの頃から、どうにかこうにか会わせないように頑張っていた。


 まだ小さいからと断っていたのに。


 この子を彼の親族に会わせる気なんて無かったのに……本当に、最悪だ。


「もう三歳になるからいいだろう?」


 と、彼が勝手に向こうの両親と約束していた。娘を見せないといけない。


 なにが孫は可愛いだ!!!


 自分達が言ったことも忘れて!!


 ()ろせって、言ったクセに!!


 なにがこれからはもっと遊びにおいでだ!!!


 マジフザケンな!!!


 クソ! クソクソクソ!!!




 (彼女の、怒りに任せた乱雑な文字が並ぶ)




 彼が、余計なことを言った。


 最悪、最低だ。


 本当に、心の底から彼を見損なった。


 そのせいで、あの子の両親がわたしの娘を見たいと言ったそうだ。


 嫌なのに。嫌で厭で堪らなかったのに。


 なのに、彼は娘を彼らに会わせた!!!


 なにが、あの子の生まれ変わりだ!!!


 彼は、娘があの子に少し似てるって言っただけじゃない!!!


 その言葉でさえも厭だったのに!!!





 娘の調子が悪い。病院へ連れて行った。


 娘はどうやら喘息持ちのようだ。





 あの子の母親が、家に来た。厭だ。気持ち悪い。


 娘の様子を見に来たと言い、訳知り顔で病弱な子供を育てるための心得とやらを語る。


 やめてほしい。迷惑だ。


 あの女や、彼の両親が娘に勝手にオモチャや服、お菓子を与えて酷く甘やかす。


 心底やめてほしい。


 やめるよう言ってくれと彼に頼んでみたが、


「ありがたいじゃないか。君も助かるだろう?」


 そう言って、笑っていた。


 信じられない。


 なんでわからないの?


 馬鹿なの?



жжжжжжжжжжжжжжж



 彼の母親と、あの子の母親が我が家に入り浸るようになった。そして、わたしを責める。


 娘の面倒を見るのが下手だと。


「見てられないから、わたし達が手を貸してあげる。子供はみんなで育てるものでしょう?」


 笑って、そう言った。


 そんなこと頼んでないっ、余計なお世話だ!!!



 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!


 あの子の母親のあの女が、わたしの娘をあの子の名前で呼ぶ!!!


 娘も、あの女に懐いている!!!


 娘に、わたしの悪口を吹き込む。


 お願いだから、やめてほしい……




 どうしても嫌で堪らなくて、彼にお願いした。


 あの女が……


「あなたの叔母さんが、娘を……死んだあの子の名前で呼ぶのが嫌なの。気持ち悪いから、あなたの方からやめるように言ってくれない? お願いだから、なんとかしてちょうだい」


 と、そう懇願した。


 頼んだのは、無意味だった・・・


「叔母さんが元気になったんだから、別にいいじゃないか。あだ名だと思えばいいだろう?」


 なんで? 笑ってそんなことが言えるの?


 無意味。無意味。無意味。


 彼は、自分の親族だからとアイツらを庇う。


 彼に裏切られたのは、もう何度目だろう……


 この男は、わたしの味方じゃない。




 (――――俺、が……あのときの彼女の訴えを真剣に取り合わなかったから……だから、妻は――――)




 なんで? わたしの娘よ?


 わたしが生んだ子、なのにっ・・・



 もう、耐えられない。


 あの気違い女、頭おかしいんじゃないのっ!


 なにがっ、「あの子は優しいから、裏切ったあなた達を許して、二人の子供として生まれ変わって来てあげたんだから、あの子に感謝しなさい」だっ!!!


 馬鹿げたこと言うなっ!!!


 娘はわたしの子供だ!!!


 あの子じゃない、死んだあの子なんかじゃない!!!


 あの子は死んだ。あの子は死んだのよ!!!




 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!


 娘がっ! あの女をお母さんと呼んだ!!!


 なんなのっ!?


 母親はわたしでしょ!!!


 わたしがあの子、の・・・



 なんで?


 なんであの女が家に?


 鍵?


 なんで、合カギをあんな女に?


 嫌だ。厭だ厭だ厭だ厭厭厭厭厭厭イヤ……


 あの女が、我が物顔で毎日家に居る。


 あの女が、勝手に娘の世話を焼く。


 あの女が、


「あの子の好きな料理を作ってあげる」


 そう言って、無断でキッチンに入って料理を作る。


 違う。わたしの娘が好きな料理はそれじゃない。


 娘がわたしを嫌う。


 娘が、あの女をお母さんと呼ぶ!!!


 あの女が、娘を奪おうとしている!!!




 なんで?


 娘はわたしの子供なのに、病弱なの!!!


 なんで娘は、わたしに似てないの!!!


 娘はわたしの生んだ子なのに!!!



 ああ、娘がどんどんあの子に似て来る!


 どうして? なんで?


 ああもう、頭がおかしくなりそう……


 彼に、娘を怒鳴るなと言われた。病弱なんだからもっと優しくしろ、と。


「どうしてお前は身体の弱い子供に辛く当たり散らすんだ? そんなだから君は怖がられるんだ。母親失格だな。叔母さんを見習え」


 って、そう言われた。


 あの女を見習う?


 意味がわからない。


 あの女のなにを見習えって?


 なにも知らないクセに!!!


 誰のせいでこうなったと思ってるの!!!



 読んでくださり、ありがとうございました。

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