秋の辺りの数え歌
たいした意味も、全体の統一感も、力量の限りのあれば詠み人を、せめて、責めずに、お愉しみあれ。
一つ、蜩、日暮れ時 競えば、いつか虫時雨 打たれてみても潤わぬ
二つ、ふたりの道行の 行方あてなき道ならば せめて、その手を離すまい
三つ、満ちゆく月明り 明るき空に白鳥は 光なくして飛び去りぬ
四つ、夜中に鳶の鳴く 誰を恋うやら、月の下 我も同じと歩みゆく
五つ、色づくもみじ葉の 色を移すや茜雲 頬染むきみを懐かしむ
六つ、叢雲、空にあり 月が纏えば、月虹に 金の錦の織となる
七つ、鳴き去る、夕暮れの 鴉の二羽の添い飛ぶは 家路を辿りゆくとかや
八つ、八幡の藪知らず 恋の出口もなかりせば いっそ二人で踏み迷う
九つ、恋は、言霊を 交わし深めてゆくものと きみへの文をしたためる
十で、疾うから、この恋は 育たぬものと知りながら 冬のまぢかに種をまく
大団円。