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94 生徒会の目的

「俺とウィルフレッドは似てる……ってこと?」

「ええ……まぁ……」


 要領を得ない様子で返事をするマイス。

 彼女にも、これと言って確信があるわけではないようだ。


「ファム、お前はどう思う?」

「さぁ……私にはよく分かりません。

 人格が入れ替わったと言われればその通りだと思いますし、

 あなたがウィルフレッドさまだと言うのであれば、

 それを信じるほかありません」


 そう言って肩をすくめるファム。


「じゃぁ、お前も俺がウィルフレッドと同一人物だって、

 心のどこかでは思ってるってことか?」

「お好きに解釈してください。

 今のアナタには利用価値がある。

 私はそう思っているだけです」


 彼女はつまらなそうに言った。


 利用価値があると思ってもらえるのなら、別に構わないかな。

 無能だと言って切り捨てられなければそれでいい。


「生徒会の連中はどう思ってるんだろうな?

 やっぱり俺の中身が変わったことに気づいてるのか?」

「そもそも以前のウィルフレッドさまは、

 英雄学校とは何のかかわりもない人物です。

 中身が入れ替わったことに気付いているのは、

 フォートン家の関係者とマイスさまだけでしょう」

「そっか……」


 てことは……別にウィルフレッドとは関係ないか。


「ですが……あなたの今日一日の動きからして、

 彼らに警戒心を抱かせてしまった可能性は大きい。

 もう少し自重できなかったものですかね」


 嫌味っぽく言うファム。


「だってさぁ……仕方なかっただろ。

 傭兵科や騎士科の生徒に絡まれて、

 なんとかしなくちゃいけなかったんだ」

「だとしても、です。

 あからさまにポイント評価するのは、

 大胆過ぎではありませんでしたか?

 噂はすぐに広まりますよ」

「ううん……」


 確かに、言われてみたらそうかもしれない。


 俺もこのスキルの本当の怖さを知らなかったからな。

 もう少し慎重に行動すべきだったか……。


「では……生徒会はサトルさんを恐れていると?」


 マイスが尋ねる。

 何気にサトル呼び。


 正直、そこんとこどうなのかよく分からない。

 俺の力が脅威になるからと言って、じゃぁ殺しましょうってなるか普通?


 普通だったらその前段階があると思うんだよ。

 追放とか、拘束とか、どんなに悪くても拷問くらい。

 俺の力を利用するっていう選択肢だってあるはずなのに……それがいきなり、殺すって。


 いくらなんでも極端すぎる。


「ええ、その可能性もあります。

 ですが……少し腑に落ちません。

 どうしてそう極端になるのか。

 年端も行かない彼らに殺人を決意させるほど、

 サトルさまが脅威になるとは思えません。

 他に目的があるとしか……」


 その目的ってなんだろうな?

 これがさっぱり分からない。


 だって、俺を殺して、なんの目的を達成するんだ?

 邪魔者を消すというのならまだ分かるが、俺が何かの邪魔になるようなことをしたとも思えないし、そう言う発言もした覚えがない。


 唯一考えられるのは桧山か。

 あいつが生徒会に何かしら吹き込んだのなら、その可能性もあり得る。


 ただ……可能性としてはちょっと低いな。


 生徒会の連中は三人とも豚が嫌いだった。

 その豚ってのは十中八九、桧山のことだろう。

 あいつが生徒会役員たちから嫌われている証拠だ。


 つまり、桧山が俺の危険性をあれこれ吹き込んだところで、殺害を決意させるような要因にはならない。

 俺はそう考える。


 いや……待て。

 俺の殺害を命じたのは副会長だ。


 副会長と桧山がそれなりに信頼関係を築いていて、副会長が役員たちに命令を下したのなら、彼らが殺人を実行に移す可能性もあるが……。

 そちらの線も薄いな。


 多分だが……あの図書室で会った女性が副会長だろう。

 桧山は彼女を恐れているように思えた。


 そもそも、桧山が俺の殺害を依頼するとも考えにくい。

 むしろ協力してほしそうな態度だったし……。


 ううん……分からないな。

 どういう関係が出来上がっているんだろうか。

 奴らの目的が見えてこない。


「では……その目的とは?」


 マイスが不安そうにファムに尋ねる。


「例えば……」


 ファムはマイスを見返す。

 俺を挟んでいるので二人が向かい合いうと両脇が胸に挟まれるんだよなぁ……。


「あなた……とか」

「え? わたくしが⁉」


 意外そうにするマイス。


 俺でなくマイスが目的……だと?

 彼女を殺害しようとしているのか?

 そんなばかな。


「生徒会の方々はわたくしを殺そうと?」

「いえ……そう言うことではなく。

 あなたの注意をサトルさまに向けさせることで、

 何か別の目的を達成しようとしているのでしょう」

「ええっと……つまり……」

「その目的が何かは分かりませんが、

 彼らはあなた方二人が共に行動していた方が、

 都合がいいのかもしれませんね」


 つまり、マイスに俺のおもりをさせて、別のことに注意が向かないようにしたいわけか。

 でも……なんのために?


「そんな……まさか。

 わたくしのお友達を……」


 マイスは途端に青ざめる。

 そして……


「ちょっと行ってきますわ!」


 慌てて立ち上がって部屋を出て行ってしまった。

 多分、友達の無事を確認しにでも行ったんだろうな。


「彼女に能力抑制の薬を打ったのは間違いかもしれません」


 ファムは険しい顔をして言った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おっと、物語が動いてきたぞ。 [気になる点] えっ、狙いはソフィアなの? あんなベラボーに強い奴をどうするんだろう。
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