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90 マイスの幼少期

 どうやらマイスは俺の下半身に恋してしまったらしい。


 ……さすがに冗談だと思いたい。


「なぁ……マイス。本当なのか?」

「いえ……その……えっと……」


 顔を赤らめながら視線を泳がせるマイス。

 割と本当らしい。


「なぁ……男のアレなんて簡単に大きくなるんだぞ。

 別にそれは好きな人に限ったことじゃない」

「でっ……でも……ウィルフレッドさんは、

 わたくしの前であんな風には……。

 あなたがわたくしのキスでアレをあれして、

 それがとっても嬉しくて……」


 アレをあれしたのが、よっぽど嬉しかったのか。

 ……マジで?


「実は……自信を無くしていましたの。

 わたくしには女としての魅力がないのではと。

 でも……そうではなく。

 ちゃんと殿方を興奮させるくらいには、

 魅力があるのだと分かりました。

 正直、ちょっとホッとしているのですわ」

「そうだったのか……」


 もしかしたらマイスってまともに男性と関わったことないのかもな。

 英雄学校は男女共学だけど、男子生徒と関わりを持つのは稀らしい。


 というか、男のアレがあれしたところなんて、なかなか見る機会ないだろう。

 便所で用を足している時にのぞき見するくらいか?


 小便する時って大きくなってるとしづらいので、男でも膨張しているアレを見るのは稀だ。

 というか……好き好んでみたいとは思わない。


「でも、それが俺を好きになる理由にはならないだろう」

「確かにそうですわ。

 でも……その身体はウィルフレッド様で……。

 何と言うか、中身が違うと言われても、

 あまり素直には受け入れられないのですわ」

「そっか……」


 まぁ、当然の反応かもしれない。

 入れ替わりを証明できる証拠なんて何もないからな。


「まぁ、マイスがむっつりなのは、

 今に始まったことではありませんからね?」


 ファムが言う。


「え? そうなのか?」

「ええ、彼女はずっと……」

「わああああああああああああああ!

 言わないでください!」


 大声を上げてファムの言葉を遮るマイス。


 大丈夫だ。

 そう言う人に聞かれたくない秘密。

 誰だって一つくらい持っているはず。


 だから、その秘密を聞いたところで軽蔑したりはしない。


「この人はウィルフレッドさまのお人形を作って、

 それをアレして、あれしながら……」

「言わないでって言ってるでしょおおおおおお⁉」


 ファムは涼しい顔でマイスの秘密を暴露する。


 そっか、お人形か。

 まだまともな方じゃないかな。


「まぁ、マイスのスケベは置いておいてさ。

 そろそろ真面目な話をしないか?

 マイスが計画していたソフィアの誘拐について、

 もう少し詳しく聞かせてくれよ」


 正直、マイスの話が頭から離れないのだが、さっさと切り替えないと、このまま性癖暴露大会で夜が明けてしまいそうだ。


「私の話はまだですが……」


 そう言って黒影から例の極太キノコを取り出すファム。

 さっさとしまえ! それ!


「いいから、それはまた今度、ゆっくりな」

「ええ、二人っきりの時にでも」


 ファムは大人しくブツをしまった。


 ……コイツとだけは絶対に二人っきりになりたくない。


「そもそもマイスは、どうしてソフィアを?」

「そっ……それは……」


 途端に口ごもるマイス。

 言いたくないのだろうか?


「話してしまってはいかがですか?

 真実を継げてしまった方が協力関係を結びやすいでしょう」

「ううん……分かりましたわ」


 マイスはようやく話す気になったようだ。


「では、お話しますから、聞いていてくださいね」


 そう言ってマイスは俺に抱きつく。


 近い。

 真面目な話をする距離じゃない。






 マイスは幼少期の頃から屋敷の中で育てられ、なかなか外へ出してもらえなかったという。


 同年代の子供との交流も制限され、ずっと一人で暮らしていた。

 と言っても、屋敷には使用人がいたし、身の回りの世話をする侍女もいた。

 なので決して孤独ではなかったのだが……。


「使用人たちは、みなわたくしとは距離を置き、

 フレンドリーに接してくれる方は一人もいませんでした。

 むしろ……嫌われているような気もして……」


 そう言うマイスの顔は暗い。

 彼女らしくないと思うのだが、俺には分からないような事情があるのだろう。


 マイスの家族は母親が一人だけ。

 父親はすでに他界し、再婚もしていない。


 兄弟は一人もおらず、血縁者は母親のみ。


 それで友達がいないとなると……随分と孤独な幼少期を送ったことになる。

 聞いていて胸が痛むな。


 マイスが6歳になるころ、ようやく他の子どもとの交流が許された。


 しかしそれは、彼女が望んだ形のものではなかったのだ。


 マイスはすでにその時からスキルが発現し、かなりの強さを誇っていた。

 同世代の子供たちの中で強い能力に目覚めた者たちが集められ、無理やり戦わされたという。


 楽しいお遊び仲間としてではなく、訓練の相手としてあてがわれたのだ。


 マイスはその頃から強かったらしく、対戦相手を次々と撃破。

 しかし、その強さが裏目に出たのか、彼らと友好的な関係を結ぶことができなかったという。


 彼女は孤独なまま成長していって、ついに英雄学校に入学する。


 そこでも友達が出来ず、一人孤独に学生生活を送っていたという。

 同世代の女の子たちがお喋りに興じる中、窓の外から風景を眺めるのが日課だったとか。


 そして……彼女が英雄学校を訪れる。


 ソフィアとの邂逅の時が来たのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] みんなソフィアのことを考えているのにソフィアにはまったく伝わっていなさそうなところ。 いつか「親友」となる日が来るのだろうか。 [気になる点] いつか活躍するであろう、極太キノコ。 [一言…
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