8 決闘からの叔父来襲
解説しよう!
ソフィアのスキル、それは『炎獄』。
彼女は自分の身体に炎を纏わりつかせ、相手を攻撃する。炎をまとって殴ったり蹴ったりすると大ダメージを与えられる! 実にシンプルで分かりやすい能力!
解説しよう!
マイスのスキル、それは『雷電』。
全身を包む電撃的なエネルギーが彼女の身体を強化する! どんな攻撃からも身を守ると同時に、ほとばしる電撃が敵を貫く!
そんな二人がガチンコバトルを始めたら、この屋敷はあっという間に廃墟と化すだろう。
何がどうなろうと俺は知らない。巻き込まれたくない。
「英雄学校最強格同士の戦い。
めったに見られない戦いですよ。
さぁ……目を背けずに最後までご覧になって下さい」
ファムはそう言うが、俺には何が何だか分からない。
先ほどから二人は激しい殴り合いを繰り広げている。
ソフィアが殴れば爆発が起こり、マイスが殴れば電撃が飛ぶ。マジで何がなんだか……完全に置いてけぼりだぞ、俺。
しばらく殴り合った後、ソフィアがバックステップで距離をおく。
二人は息を切らながらにらみ合う。
「ハァ……ハァ……相変わらずしぶといね」
「そちらの方こそ、腕が上がりましたわね」
「本気出したら殺しちゃうけど良いかな?」
「そちらこそ、覚悟のほどはよろしくて?」
まーだ戦うつもりなんですかねぇ。
そろそろいい加減にしてはくれませんか。
二人の乱闘のせいで辺りは滅茶苦茶。
床はえぐれ、欄干は吹っ飛び、天井のシャンデリアは煤まみれ。
物件の資産価値が驚くべき速さで目減りしていく。
いっそのこと天井にでも穴をあけたらどうですか?
それくらいやった方がすっきりすると思いますよ。
「……いくよ」
「ええ、いつでも構いませんわ。いざ尋常に……」
「やめろおおおおおおおおおお!」
下の方から叫び声が聞こえる。
野太い男の声だった。
「ええっと……誰の声ですかね?」
「叔父上さまですね。屋敷の様子を見に来たのでしょう」
ファムが淡々と答える。
「……え?」
「誰でしょうか?」
叔父の登場に戸惑い、戦いの手を止める二人。
冷静さを取り戻した二人は自分の身体を見下ろす。
「えっ……いやぁ!」
「きゃぁ!」
パンツ丸出しのソフィアに胸が露になったマイス。
二人は慌てて露出している部分を両手で覆い隠す。
……今更か。
「なんだこの有様は⁉ 説明しろ、説明!」
下で叔父が騒いでいる。
説明しに行った方がいいかもしれない。
「あの……ファムさん、二人を頼みます」
「任されました」
俺は服がボロボロになった二人をファムに任せ、階段を下りて叔父の元へ。
「すっ……すみません、おじさん」
「ふんっ、ウィルフレッドか。
おめおめと逃げ帰った挙句、自殺未遂とは。
家の名を好き放題に汚してくれたな」
そう罵る小太りの中年男性。
頭頂部が完全につるっつる。
下っ腹がぷっくりと突き出している。
絵にかいたような強欲禿おやじ。
ボタンがいくつも付いた豪華な服がぜい肉でパンパンに膨れ上がっている。ちょっと腹に力を入れたらボタンがはじけ飛ぶんじゃないかな。
彼の評価は2.7。
平均よりも少し低いが……妥当な評価だろう。
「面目次第もございません……」
「情けない、実に情けない。
これがかの英雄アルベルトの息子かと思うと、
いっそう情けなく感じるわい!
それはそうと……この有様はなんだ!
ここで何があった! 何をした!」
彼は真っ赤に顔を染め上げ、滅茶苦茶に壊れた二階部分を指さす。二人が戦ったせいで破壊しつくされていた。
「ええっと……少々、決闘を……」
「決闘だと⁉ こんな場所でか⁉
場所を選べ、場所をぉ!」
……ごもっともで。
何も言い返せない。
叔父は怒り狂いぎりぎりと歯ぎしりをしている。
「この責任はきっちりとってもらうからな!」
「ええっと……」
ぬぅっ……。
叔父の背後に黒い影が現れる。
そして……。