表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/206

78 精鋭との戦い

「……なんだあいつら?」


 現れたのは数人の男たち。

 ガチガチに守りを固めた姿ではなく、肌に密着する黒い肌着の上に、プロテクターをつけているだけ。


 学生……には見えないな。

 それなりに年の言ってる人ばかりだ。


「奴らはなんなんだ?」

「連合が選りすぐったエリートたちですよ。

 前線から退いた第一級の戦士たち。

 ソフィアさんも倒すのに苦労するでしょう」


 ファムは涼しい顔で言う。


「そんな連中とソフィアを戦わせるつもりなのか⁉」

「戦わせるつもりだから、ここへ連れて来たんですよ。

 当たり前のことをいちいち確認しないでください」

「いや……確かにそうだけど……」


 俺の言葉に苛立った様子で答えるファム。

 彼女はソフィアが心配にならないのだろうか?


 現れた男は全部で五人。

 武器などは持っていない。


 しかし……さっきの戦った傭兵科100人より、ずっと手ごわそうに思える。


 おそらくそれは、俺のカン違いではないはず。


「ソフィアさんはね……。

 何度もここで手ごわい相手と戦っています。

 退役した連中を相手にしたところで、

 怪我ひとつ負わないでしょう」

「そういう問題じゃ……」


 ソフィアは自分が傷つくことよりも、相手を傷つけることを恐れている。

 さっきは手加減しながら戦っていたが今度は……。


「さぁ、始まりましたよ」

「え⁉ もう⁉」


 俺は慌てて闘技場の方へ視線を戻す。


 男たちはソフィアの周りを取り囲むように展開。

 一定の距離を保ちながら、様子を伺う。


 一人の男が手に紫色の光を発生させた。

 その光は剣のような形になり、戦端が鋭くとがる。


「え? あれは⁉」

「スキルですよ、分かりませんか?

 無から物質を生成するタイプの力ですね」


 そういうスキルもあるのか。

 他の四人もそれぞれ別のスキルを持っているのだろう。


 剣を作り出した男は、ソフィアに正面から突撃。

 大きく振りかぶって彼女に切りかかる。




 ぱぁん!




 乾いた音が響くと同時に、男の持っていた剣が中ほどで折れ、剣先が吹っ飛ぶ。


「くっ!」


 男はバックステップで距離を置いて態勢を立て直した。

 すぐに折れた剣は元の形に修復されていく。


 なるほど……どんなに壊れても再生する剣か。

 それなりに使えるスキルだと思う。


 今度は別の男が攻撃を仕掛ける。


 ソフィアの背後にいた男の手には、黄色く輝く槍のようなものが握られていた。

 それを彼女へ向かって勢いよく投擲。


 あっさりとかわされてしまったものの、槍は地面に突き刺さると閃光を放って大爆発。

 あたりに衝撃がほとばしるとともに、土埃が舞う。


 続けて別の二人が同時攻撃をしかける。

 いくつもの赤い光を発生させた男は、それをすべて苦無くないのような形に変え、土埃の中にいるソフィアへと放出。


 もう一人は周囲に植物を発生させる。

 地面から生えたツタが勢いよく伸びて攻撃を始めた。


 二方面からの同時攻撃だが、ソフィアは耐えられ……。




 どがあああああああん!




 土埃の中で爆発が起こったらしく、さらに勢いよく粉塵が巻き起こる。

 かと思うと、上空に舞うソフィアの姿が確認できた。


 男たちは攻撃の手を緩めることなく、赤い苦無を発生させた男が攻撃を加える。


 次々と鋭い物質が彼女に向って飛んでいくが、ソフィアは自分に向かってくるその全てを手ではじいた。


 すげぇ、あの子。

 落ちながら戦ってる。


 ソフィアが着地するとすぐに、ツルが彼女を捕らえようと伸ばされる。

 しかし、その身体に触れる間もなく、放たれた炎によって一瞬のうちに灰燼に帰した。


「うおおおおおおおおお!」


 剣の男が切りかかる。

 それと同時に、今までスキルの力を見せなかった最後の一人が攻撃を開始。


 最後の一人はどうやら高速移動のスキル持ちらしく、瞬時にソフィアの背後へ移動。そのまま彼女を捕らえようと手を伸ばしたが……。




 ばかあああああああん!




 ソフィアは男が手を伸ばすよりも早く、後ろ回し蹴りで敵を攻撃。

 彼女の足が触れた瞬間に爆発が発生し、男は勢いよく吹っ飛んで闘技場の壁に激突。

 一撃でノックアウト。


 続けてソフィアは爆発で加速して、向かい来る剣の男へ突撃。

 10メートル近くそいつを吹き飛ばして一発KO。

 瞬く間に二人の敵を撃破してしまった。


「くそっ!」


 槍の男が攻撃を開始するが、ソフィアは手に小さな火球を発生させて放出。その槍が手から離れる前に火球が衝突。


 槍と火球がぶつかることで両者がさく裂。

 男は痛みのあまり地面を転がりまわる。


「なっ……なんて強さだ……ぐわっ!」


 ツル使いもソフィアの火球で一発KO。

 残ったのは苦無野郎だけだが……。


「ひっ……ひいいい!」


 最後の一人は戦意を喪失して逃走。

 もう戦う意思は残されていないようだ。


「はぁ……」


 ソフィアは力なく肩を落とす。


 傭兵科に続いて、前線で戦っていたエリート。

 こんな連中をなんなくいなせるなんて、ソフィアは本当にすごい子だと思う。


 でも……。


 悲しそうにする彼女からは、勝利に酔いしれる心地よさは感じない。

 ただただ罪悪感に打ちひしがれるような悲壮感があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ