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74 カテリーナさんは回復役

 巨大なライフル銃のような武器を持ちだしたマイスは、それを扱うのに四苦八苦している。

 本当に彼女はあの武器を使って戦うつもりなのだろうか?


「うぎいいいいいいい!

 あがあああああああ!」

「マイスさま頑張って!」

「マイスさま負けないで!」


 取り巻きたちが応援するが、マイスの耳には入っていないだろう。

 彼女は顔を真っ赤にしながら銃を支えようと必死になっている。


 銃身だけでマイスの身長をしのぐ長さを持つそれは、とても一人の人間に支えられるとは思えない。

 複数人が協力してようやく扱えるようなシロモノだろう。


 なんであんな武器を使ってソフィアと戦おうと思ったのか。

 マイスの正気を疑ってしまう。


「……あの、マイス」

「なんですの⁉」


 ソフィアが声をかけると、マイスはまた大きな声を出す。


 驚いたのか彼女はびくっと身を縮ませた。


「ごっ……ごめんなさい」

「え? あっ、そんな……わたくしの方こそ……。

 って……ああああああああああ⁉」


 マイスは集中力が途切れて力の入れ方を間違えたのか、バランスを崩して銃を倒してしまう。

 その長い銃身はゆっくりとソフィアの方へ……。


「あぶな……あがっ⁉」


 俺はソフィアをかばい、彼女に覆いかぶさって身を守る。

 少しして背中に銃身が叩きつけられ、あまりの衝撃に思わず悲鳴を上げた。


「ウィルさま⁉」

「ウィルフレッドさん!」


 俺の下で声を上げるソフィア。

 マイスも心配して駆け寄ってくる。


「ごほっ! がはっ! げほっ!」


 あまりの衝撃で息ができない。

 背中に激痛が走り、気が遠くなる。


 このまま意識を失ってしまうのかと思ったら……。


 何やら背中に暖かいものを感じ、痛みが引いて行くのが分かる。

 単純な熱とは違う不思議な温かさ。

 これはいったい……。


「大丈夫でしょうか? 息はできますか?」

「え? ううん……大丈夫みたいです」


 誰かの声がして、俺が身体を起こすと、不思議なことに痛みが引いていることに気づく。息苦しさも感じない。


 あたりを見渡してみると、取り巻きたちが俺の所へ集まって来ていて、心配そうにしていた。

 どうやら彼女たちの中の一人が魔法かスキルで治療してくれたらしい。


「ええっと……すみません。

 どなたが助けてくれたんですか?」

「私が……」


 恥ずかしそうに手を上げる魔法科の制服を着た女性。

 どうやら俺を治療したのは魔法の力だったようだ。


「すみませんでした、ありがとうございます」

「いえ……お気になさらないでください。

 私にできることはこの程度のことなので……」


 彼女はそう言って恥ずかしそうに顔を赤らめてうつむく。


 なんか、みんなでソフィアを馬鹿にしたように笑ってたから、てっきり嫌味な連中かと思っていたが……。

 案外、いい人たちなのかもな。


 そう言えばソフィアは……。


「あの……ウィルさまぁ……」

「え?」


 俺はソフィアに馬乗りになっていた。

 彼女は恥ずかしそうに俺を見上げて顔を真っ赤にしている。


「わっ……悪い。すぐにどくから」

「早く! 早くして! じゃないと……」


 ソフィアはとても焦っている。

 何をそんなに慌てて……。


「分かってるよ、すぐにどくから……って、あっつい!」


 ソフィアから発せられる熱が俺の股間を直撃。

 慌てて後ろに飛びのいて、彼女の身体から離れる。


「あちちちち! あつい! あつい!」

「カテリーナさん! 早く治療を!」

「はい!」


 熱に耐えきれずくさっぱらでのたうち回る俺。

 マイスはすかさず治療の指示を出す。


 どうやら俺を治療してくれたのはカテリーナさんと言う人らしい。


 彼女が両手をかざして俺へと向けると、淡い黄色い光が放たれ、俺の股間を包む。するとアチアチになっていた俺の睾丸がたちまちひんやりと冷えた。

 ふー! すっとする!


「すみません、何度も……」

「いえいえ、お気になさらず」


 そう言ってにっこり微笑むカテリーナさん。

 この人、絶対に良い人だ。


「あっ……あの……ウィルフレッドさん……。

 その……申し訳ありませんでしたっ!」


 マイスは深々と頭を下げて謝罪。

 別にわざとやったわけじゃないんだから、謝らなくてもいいんだけどな。


 まぁ……謝った方がすっきりするんだろ。

 俺も素直に謝罪を受け取っておくか。


「別に気にしてないから……」

「でっ……でも……」

「いいって、いいって」

「すみません……」


 俺が笑って見せても、マイスはまだ申し訳なさそうにしている。

 大事に至らなかったんだから、もういいって。


「ウィルさま、本当に大丈夫?」


 ソフィアが心配そうに尋ねてくる。


「ああ、治療してもらったから平気だよ」

「本当に?」

「ああ、本当だ。だからマイスを許してやってくれ」

「え? ああ……うん」


 ソフィアは別に怒ってなかったのか、微妙な反応。


「そうじゃなくて、私のせいで怪我しなかったかなって」

「ああ、そういう……」


 彼女は自分の加害行為の方を心配していたのか。

 マイスに対してはそもそも怒ってなかったんだな。


「おおい! アンタたち!

 そんなところでなにやってんだ!」


 野太い男の声が聞こえる。

 球体の下にいるゴッツが手招きしているのが見えた。


「早くしないと始まっちまうだろうが!」

「え? あっ、すみません!」


 俺は大慌てでソフィアの手を引いて彼の元へと向かう。

 マイスも取り巻きたちと共に付いて来た。


 プラズマバスターも数人がかりでちゃんと持ってきている。

 本当に使う気なんだな、それ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >俺の股間を直撃 股間かよっ!(笑) いやいや、これ冷やされたからって、ウィルの精巣大丈夫か? 死滅してないか? ソフィアたんと、アレしなきゃいけなくなったとして、子供できなくなってた…
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