69 上げて、上げて、上げまくって
「スカートをたくし上げてパンツを見せてもらえるかな?」
「「えっ?」」
困惑した表情を浮かべる二人だが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「まぁ……パンツくらいなら」
「別にいいけど……」
二人は羞恥心を捨て、ポイントを得る選択をした。
実に懸命だな。
「じゃぁ、さっそくお願いするよ。
でも、ちょっと上げただけじゃだめだよ。
裾をへそのあたりまで持ち上げて」
「ううっ……恥ずかしいなぁ」
「嫌だよぉ……」
と言いながらも、言われたとおりに裾を持ち上げる二人。
よほどポイントが欲しいらしい。
二人とも綺麗なパンティーを穿いていた。
うむ……よきかな。
「ねぇ⁉ もういいでしょ!」
「恥ずかしいんだけど⁉」
「ああ、もう大丈夫だよ。ありがとう。
早速、ポイント入れるから確認してね」
「あっ! また増えたよ!」
「あんたのも!」
二人はお互いに頭の上の星の数を確認して喜んでいた。
教会へ確認しに行くためか、お礼も言わずに立ち去って行く。
まぁ……目的は達成できたからいいか。
「出て来て下さい、見てたんでしょう?」
俺が呼びかけると、木の陰に隠れていた連中が姿を現す。
その中からダルトンが一人だけ前に出た。
「てめぇ……なにがスカートめくりだよ。
相手にたくし上げさせただけじゃねーか」
「別に、僕がめくる必要なんてないでしょ。
それに直接、僕の手でスカートをめくるなんて、
前提条件に入ってなかった。
違いますか、ダルトンさん?」
「うっ……くぅ……!」
悔しそうに唇をかみしめるダルトン。
逆切れしないだけましか。
「それで……次のお仕事ですけど。
何か僕に頼み事はありませんか?」
「いや……その……」
「…………」
なんだコイツ、急にビビりやがって。
俺があまりにあっさりとスカートをめくらせたから、怖気づいてしまったのか?
こういう奴って急に反撃されると大人しくなるんだよなぁ。
普段から弱いものいじめしかしてない証拠だ。
「あのっ!」
「え⁉」
急に大声を出しただけでビビるダルトン。
コイツ……気が小さすぎるだろ。
「何か困ってることとかないですか?
僕でよければ力になりますけど……」
「ううん……あっ! そうだ!」
何か思いついたらしい。
「実は……近隣の村にモンスターが出るんだ。
その討伐依頼が英雄学校に寄せられたらしい」
へぇ……実にRPGみたいな話だな。
学生にモンスターの討伐を任せるなんて、まるでゲームじゃないか。
「それで?」
「おっ……俺がそのモンスターを討伐するのを……
手伝ってくれないか?」
「お安い御用ですよ、任せてください」
「本当か⁉」
期待に胸を膨らませて明るい表情になるダルトン。
本当にチョロイな……コイツ。
モンスターの討伐に関して、上手くいくかどうかは分からないが……なんとかなるだろう。
ファムにモンスター討伐の手ほどきを受けるか。ついでに力も貸してもらおう。
そして……ダルトンを最高にいい気分にさせて、自分を見失わせるのだ。上げて、上げて、上げまくって、最高にハイって気分にさせて、俺なしでは人生を送れなくしてやる。
楽しみだよ……ダルトン。
お前がどれだけ利用価値があるか見せてくれ。
そして死ぬまで躍らせてやろう。
俺の手のひらの上で。
「じゃぁ、詳しい話は後日お願いします。
よかったら明日にでも」
「おっ……おう! 分かったぜ!」
「恐縮ですが、明日お手すきの時間を教えてもらっても?」
「そうだな……」
ダルトンは明日の早い時間を指定。
今日、学校へ来た時間よりもずっと早い。
……まいったな、マイスに頼んで迎えの時間を早めてもらうか?
さすがにそれは厚かましい気もする。
いっそのこと、寄宿舎に泊めさせてもらうか。
そっちの方が良い気がするな。
「では、また明日」
「じゃぁな!」
すっかり友達になった気でいるのか、彼はニコニコ顔で手を振って何処かへ行く。こっそりお気に入り登録もしておいた。
さぁ……メニューを開いて……。
『底辺貴族の三男坊。特に秀でた才能もなく、お情けで英雄学校に入学させてもらった。これでもウィルフレッドよりはマシ。学校での成績は下から数えた方が早い。普段は傭兵科の生徒に大きな顔をしているが、内心ではビビっている。弱い者いじめが唯一の楽しみ』
うわぁ……ゴミみたいな人間だ。
ホントしょうもねぇなコイツ。
嫡子とか言っといて、三男じゃねーか。
嘘ついてんじゃねーよ。
まぁ、俺が言えた立場じゃないか。
誰かにお気に入り登録されたらクソみそにけなされてるかもしれん。
豚の話だと、お気に入り登録の機能が使えるのは主人公候補だけらしいけど。
さて……そろそろソフィアと合流するかな?
あの子はどこに行ったのだろうか?
ぞろぞろぞろ……。
離れた場所にマイスを見つける。
取り巻きたちも一緒だ。
あの人について行けばソフィアの居場所が分かるはずだ。
ちょっと離れてついて行くか。
マイスたちは本館を出て、どこかへ向かっている。
どうやら宿舎へ行くつもりらしい。
宿舎は本館と傭兵科の校舎から離れた場所にあり、周囲には木々がたくさん生えている。こちらも生徒で泊まる場所が分かれているようで、全部で四棟あった。
傭兵科の生徒が泊まるであろう宿舎もきれいに整備されている。
……よかったね。
……うん?
マイスは取り巻きと別れ、林の中へ。
彼女と別れた生徒たちは寮の中へ入っていく。
あの人、一人で何処へ行くつもりだ?
何をする気かと後をつけて入っていくと……。
「……え?」
俺は目を疑った。
そこにいたのは……。




