68 スカートめくり
俺はウィルフレッドと関わりがあったと思われる男ダルトンから、スカートめくりを命じられてしまった。
「あそこにいるだろ、女子生徒が二人。
そいつらのスカートをめくって来い」
ダルトンはニヤニヤ笑いながら言う。
スカートめくりだなんてなぁ。
今時小学生だってやらねぇっての。
何考えてんだ、こいつ。
思うに、俺が女子生徒に嫌がらせをして、周囲から糾弾される様を見て楽しみたいのだろう。ゲスが思いつくような低俗な娯楽だ。ばかばかしい。
しかし、この命令を断れば、彼は途端に激怒するだろう。
なんとかしてご機嫌を損ねないようにしなければならない。
ふむ……とりあえずやってみるか。
「分かりました、少し時間がかかるので待っていてください」
「へぇ、やるのか。逃げたら承知しねぇからな」
「ええ、もちろん分かっています」
なんて答えたが、スカートめくりなんて下賤な真似をするつもりはない。俺はこう見えて紳士なのだ。女性が不快に思うような真似はしないと決めている。
とりあえず、女子生徒の所へ。
騎士科の制服を着た金髪の二人組。
退屈そうに爪をいじっている。
見た目もなんか悪そうな感じ。
評価は二人とも3を割っている。
騎士科の中でも底辺の存在のようだ。
「ねぇ……君たち」
「え?」
「は?」
急に話しかけられて不機嫌そうにする二人。
俺はさっそく本題を切り出す。
「ちょっと聞きたいんだけど……」
俺はそう言いながら、あらかじめ開いておいたステータス画面のメニューアイコンをタップ。
「何急に話しかけて来てるわけ?」
「あんた誰よ?」
「僕はウィルフレッドと言うものです。
ステータスのことで聞きたいことがあって……。
あっ、そちらの方。
お友達の評価数を確認してもらっても?」
「え?」
片方の女子生徒に目を合わせ、もう一人の頭の上を指さす。
「見たけど、なに?」
「ちょっと待っててくださいね……」
俺はポイント評価の項目を選択して、ポイントを確認された方の生徒に☆5の評価をつける。
「ねぇ……なんなの?」
「もう一度、お友達の評価を確認してもらっても?」
「え? あっ!」
「えっ? えっ? なんなの⁉」
驚愕する女子生徒と不安になるもう一人。
「あんたさぁ、ポイント増えてるよ!」
「え? 本当に? 嘘っ⁉」
「嘘じゃないって! 教会へ行って……」
俺はすかさず評価を取り消す。
「あっ……戻った」
「なに言ってんの? 意味わからないんだけど……」
二人は状況がいまいち飲み込めていない。
もう一人の方の生徒もポイント評価する。
もちろん☆5で。
「あっ……アンタのも増えた!」
「え? マジっ⁉」
「あっ……戻った」
「そんな!」
ポイントの増減に一喜一憂する二人。
……面白いな。
「ねぇ! ちょっと! あんた何をしたの⁉」
「ポイント増やせるの⁉ どうなの⁉ ねぇ⁉」
めっちゃ食い気味に尋ねてくる二人。
俺は不敵に笑って言う。
「ここじゃなんだから、場所を移しましょうか」
本館のひと気のない場所へ移動する。
英雄学校は元々静かな場所なので、話し声が聞こえないだけでは人目の有無が確認できない。
そのため、しっかりとあたりを見渡して確認する。
「ねぇねぇ……早くしてよ!」
「ポイント増やしてくれるんでしょ⁉」
興奮する二人。
まるで怪しいお薬でも売っている気分だ。
もちろん、前世ではそんな仕事はしていない。
薬に手を出したら二度とカタギには戻れないぞと、脱法ドラッグを大量に売りさばいていた高橋が良く言っていた。
あの人は本当になんでも売ってたなぁ……。
「まぁまぁ、落ち着いて。
ちゃんとポイントを上げるから安心しなよ。
でも……タダでとはいかない」
「うっ……そうだよね……」
「私たちに何をさせようとしてるの?」
不安そうに目を潤ませる二人。
ちょっとかわいいな……。
よこしまな気持ちになってしまいそうだ。
「まぁ……ちょっとしたお願いなんだけど……。
聞いてもらえるかな?
約束を守ってあげれば、ちゃんとポイントをあげるよ」
「本当に⁉ なんでもする!」
「私も! 私も!」
こいつら……本当に何でもやりそうな勢いだな。
まぁ、別に変なことはしないんだけどさ。
俺はチラッと周囲を確認。
どこかにダルトンたちが隠れているはずだ。
少し離れた木陰に、男子生徒が何人か見えた。
多分だけどあいつらだな。
連中がしっかり様子を見ていると確認できたので、さっそく二人にお願いする。
「じゃぁ……お願いだけど……」
俺は二人にあるお願いをした。




