表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/206

67 都合のいい存在

 豚と別れた俺はソフィアの姿を探す。


 彼女がどこへなんの授業を受けに行ったのか聞いていないので、手掛かりは何もない。そのため、意味もなく学校をうろうろする羽目になった。


 しかし、学校のマッピングは完了した。どこに何があるのかだいたい把握できたぞ。


 まず本館。一階は生徒たちが授業を受けるための教室。二階には実験などを行う設備や、研究所、図書室、食堂などがある。

 三階には職員室や生徒会室、そして理事長室など。学校の管理を行う人たちのための部屋。あと、魔法やスキルに関する重要な施設がいくつかあるらしい。

 地下には設備の管理に関わる部屋。ちゃんとした武器庫もある。エイダが言っていた薬品庫もここ。


 好き勝手に部外者がうろついていたわけだが、誰にも文句を言われなかった。警備員一人見当たらない。セキュリティどうなってんだ?


 まぁ……この学校の生徒は戦闘員としての訓練を受けているので、必要ないのかもしれないな。ソフィアやマイスほどでなくても、それなりに強いのだろう。テロリストが学校を占領なんて妄想レベルのイベントは起きなさそうだ。


 でさぁ……本当にやることがないんだけど、どうしようかな?

 こういう場合って大抵、誰からが絡んできて、面倒なイベントに巻き込まれるのが普通。

 厄介な連中に何度か絡まれたものの、大した問題にはなっていない。俺を面倒なイベントに引きずり込むような奴はいなかった。


 あの豚の言っていたことは気になるが……すぐにでも問題が起きるって感じではなかったな。

 今のところ、まだ深く考えなくてもよさそうだ。


 俺がここで何をするのか、何一つ決まっていない。

 とにかく仕事を見つけないと……。


 当面はそれが課題になりそうだな。




 きーんこーんかーんこーん。




 どこかで金の音が聞こえる。

 しばらくして、教室から生徒たちが出て来た。


「「「…………」」」


 彼らはみんな無言で行動し、いくつかのグループに分かれて歩いて行った。俺の姿を見ると、露骨に顔を隠して距離を置く。

 そんなに知り合いを増やすのが嫌なのか……。


 制服の色はピンクと赤。

 赤色はなんの学科なのか分からなかったが、着ているのが男子生徒だけで、ピンクの制服を着た女子生徒と一緒に授業を受けていたとなると、彼らは騎士科の生徒であると推測できる。

 どうやら騎士科は男女で制服の色が変わるらしい。


「ウィルフレッド? おい!

 そこにいるのはウィルフレッドじゃないかぁ!」


 誰かが話しかけてきた。

 声のした方をみると……。


「おいおい、俺だよ俺! 忘れたのか⁉

 昔よく遊んでやっただろう!」


 話しかけてきたのはたれ目で茶髪の男。

 頭の上にアンテナみたいに立ってる髪の毛がある。

 ……アホ毛ってやつだろうか?


 ニヤニヤと嘲笑するような笑みを浮かべた男は、ひょろっと背が高く、妙にくねくねしている。


 ☆の数は3.2。

 平均値だが……実際はもっと低いような気がする。

 何かして評価数を底上げしているのかもしれない。


 ぱっと見ではあるが、だいたいどんな人物か把握できた。ウィルフレッドとの関係性も。


「ええっと……すみません。どなたでしたか?」

「は? 忘れるとか、ありえないだろ」


 人を馬鹿にしていたような笑い顔が急にこわばる。

 顔をぐっと近づけて威圧するような視線を向けて来た。


 いるいる、こういう奴。

 前世では何度も相手にしてきた。


 小学校や中学では割よく遭遇するタイプだが、高校以上になるとあまり見かけない。実社会で関わりを持ったとしても、まっとうに生きていれば自然にフェードアウトする。

 そのため、きちんとした生活を送っている人からしたら、路傍の石みたいな存在である。


 彼らは俺にとっての良き顧客であり、都合よく扱える駒だった。

 口先だけの言葉に踊らされ、なんでも簡単に信じ込み、崖の下にいることにすら気づかない。自分を客観的に顧みることができないのだ。


 最初にがっつりとご機嫌をとって気分良くさせておけば、あとは簡単に落ちる。テキトーなマルチ関連の仕事を斡旋して、組織傘下の金融屋を紹介。ただそれだけのことで幾らでも金を吐き出してくれた。

 自分のメンツの為なら借金だろうが、汚れ仕事だろうが厭わない。

 こいつはそう言う類の存在だろう。


「すっ……すみません。

 実は僕……自殺未遂をしてしまって……。

 それっきり記憶がはっきりとしなくて……」

「あっ、そう言えばそうだったな!

 湖に身投げしたんだっけ⁉

 馬鹿だよなー! ぎゃはははは!」


 これはさすがに否定できないな。

 どんなに追い詰められたとしても、自殺するのはダメだろう。


「それで……改めてお名前を教えて欲しいのですが……」

「ちっ……わーったよ。教えてやる。

 俺はなぁ、ヴォルトース家が嫡男。ダルトンだ!

 二度と忘れるんじゃねぇぞ」

「……はい」


 ダルトン君ね。

 刹那で忘れちゃうだろうけど、その前に散々利用してぼろ雑巾のように使い捨ててやろう。


「あの……ダルトンさん、早速ですけどお願いが……」

「は? なんだよ?」

「何かお仕事を紹介していただけないでしょうか。

 学校の中での仕事なら何でもやりますので」

「へぇ……いま、なんでもっていったよな?」


 ああ、言ったよ。

 なんでもしてやるよ。


 カバン持ちだろうが、パシリだろうが、そう言う仕事ならいくらでもやってやる。なんだったら、お前をちょっとした人気者にプロデュースしてやってもいいぞ。


「じゃぁ……スカートめくりしてこい」

「……は?」

「聞こえなかったか?

 スカートめくりして来いって言ったんだよ」

「…………」


 まさかこんな低俗な命令をされるとは思ってなかったぞ。

 ……小学生かよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公……主人公……。 いやきみ、本当に主人公だよね……(笑) ものっすごく気持ちよくバッサバッサと切り捨てるなぁ、と拝読していたら、それだけで留まらなかった……(笑) ですよね! も…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ