表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/206

59 爆殺丸

 キース曰く、武器庫の奥で眠っていたこの武器は強力な力を持つ伝説の兵器で、名を『爆殺丸』と言う。

 なんとも物騒な名前である。


 かつて、この地には伝説の賢者がいて、彼はこの伝説の武器である『爆殺丸』を使って、数多くの伝説を打ち立てたという。

 とにかく伝説の賢者が作った伝説のこの武器はとっても強い。

 そらもぅ、伝説的な強さを誇る。

 伝説級である。


 伝説、伝説、うるせーよ。

 伝説村の住人かよ。


 とまぁ、こんな感じで簡単に武器にまつわるエピソードを聞かせてもらったわけだが、伝説の武器であるということ以外、何も分からなかった。

 伝説の賢者についても詳細は不明のまま。

 肝心なことは明らかにされていない。


「それで……結局のところ。

 この武器って、どれだけ強力なんですか?」


 俺が尋ねるとキースは肩をすくめる。


「詳しいことは何も分からないにゃぁ。

 僕も実際に使われたところを見てないし。

 でも……記録を読む限りでは、

 伝説的な威力を発揮するはずにゃぁ」

「はぁ……」


 なんかよく分からないけど、とにかく伝説らしい。

 まぁ……なんでもいいか。


「良かったな、ソフィア。

 いい感じの武器が見つかって」

「ううん……」


 武器を持つソフィアは複雑そうな表情を浮かべる。


 こんな用途不明の武器でどう戦えと?

 そう問いかけるような視線を俺へと向ける。


 だから……俺にも分からんて。

 とにかく伝説なんだから、伝説っぽく、伝説的な演出をしてくれるだろう。

 マイスにも勝てるかも分からんぞ。


「さて……僕たちはこれで失礼するにゃぁ」

「あの爆殺丸ですけど……」

「ソフィアさまが使いたいなら自由にするといいにゃぁ。

 僕たちの実力じゃソフィアさまを止めるのは無理にゃぁ」

「ええっと……力ずくで持って行こうとしてるわけじゃ……」

「もちろん、それは分かってるにゃぁ」


 キースは苦笑いして両手の手のひらを振る。


「この武器を管理する権限は僕たちにはないにゃぁ。

 武器庫に置いてあるアイテムは基本的に、

 誰でも自由に使えるようになってるにゃぁ。

 だから好きにするといいにゃぁ」

「はぁ……ありがとうございます」

「僕はお礼を言われる立場にないにゃぁ」


 と言っても、この人が助けてくれなかったら、ややこしいことになっていた。暴走するエイダを止めてくれたわけだし……お礼の一つくらい言うべきだろう。


「あっ……あのっ!」

「ソフィアさま? なんだにゃ?」

「この武器を使えばマイスに勝てますか?」

「ううん……」


 キースは悩まし気に顔をしかめ、眉間に指をあてる。


「僕にはちょっと分からないにゃぁ。

 マイスさんもとっても強いから……。

 正直、それ使っても五分五分だと思うにゃぁ」

「そっかぁ……」


 ソフィアも相当強いけど、二人の関係性を見る限り、上手なのはマイスの方だろう。


 いくらスキルの力が同程度だと言っても、ソフィアはまだまだ精神が未熟で、ちょっとしたことでも動揺してしまう。

 マイスの方はああ見えてかなり落ち着いており、肝も据わっているように思える。


 戦闘能力が拮抗しているのであれば、中身が優秀な方が勝つ。

 マイスが勝利する可能性の方がはるかに高い。


 まぁ……向こうも武器を用意して戦うわけだから、伝説の武器である爆殺丸がよっぽどの威力を発揮すれば、勝ち目がないわけでもない。

 ワンチャンくらいあるんじゃないか?


「それじゃぁ、僕たちは行くから」

「あの……試し打ちは……」

「そんなことしたら大変だって、さっき言ったにゃぁ。

 いい加減にしてほしいにゃぁ」

「ごめんなさい! ごめんなさい!」


 くぎを刺されて謝罪モードになるエイダ。

 キースはぺこぺこと頭を下げる彼女の手を引いて、無理やり連れて行った。


 助かった……。


 一応、お気に入り登録しておくか?

 二人の簡単な情報が知りたいし。


 俺はステータスを開いて、メニューアイコン、お気に入り登録のタブをタップ。二人を続けて登録する。


「またステータス開いてる……」


 ソフィアが怪訝そうな顔をして俺を見ている。

 いい加減面倒になって来たので、メニューアイコンについて説明しておくか?


「ソフィア、実は……」

「おーっほっほっほ!」


 説明しようとしたところで、マイスが登場。

 また取り巻きを連れてきている。


 少し離れた場所でニヤニヤと嘲笑を浮かべながら、ソフィアに目を向ける取り巻きたち。これから二人がどんなやり取りをするのか、興味深く眺めている。

 この人たち、なんでマイスにくっついてるんだろう?


「マイス? なんの用⁉」

「あらあら、そんなに怖い顔をしないの。

 可愛らしいお顔が台無しですわよ」

「え?」


 急にカワイイなんて言われたもんだから、ソフィアは自分のほほに手を当て困惑した表情になる。


「あらあら、本当にお可愛らしい。

 お世辞を本気で受け取るなんて!」

「はぁ⁉ 本気になんてなってないし!

 うるさいし! バーカ! バーカ!」

「本当に貧弱な語彙力ですこと。

 呆れて物も言えませんわ!

 おーっほっほっほ!」

「ぐぬぬぬぬ……」


 言い負かされて反論できないソフィア。

 勝ち誇ったかのように高笑いするマイス。


 実に微笑ましい光景である。


「それはさておき、ソフィアさん。

 アナタは当然のようにご存じないでしょうけど……」

「……?」


 意味ありげに言葉を区切り、ソフィアを見やるマイス。

 彼女は……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >伝説村の住人かよ。 この、たらこ様の温度低めヌルめな、でも絶対零度ではない、ツッコミが好きです♡ 尖りすぎずまるすぎずな、絶妙な塩梅。 好きです。 [気になる点] だれでも使っていい武…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ