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58 ねこみみの少年

「いたたたたた……んにゃ」


 ぶつかったのは小柄な少年だった。


 英雄科の制服を着たその少年には猫の耳としっぽがついている。

 髪の色は麦畑を思わせるような金色。

 しっぽと耳だけが黒い。


 評価数は4.3。

 それなりに高い評価だ。


「すっ……すみません! 大丈夫でしたか?」

「うん、怪我はしてないみたい……だにゃぁ」


 俺が手を差し出すと、その少年はまっすぐに俺を見据える。真っ青な瞳が太陽の光を受けて輝いていた。


 手をつかんで引き起こすと、彼はズボンに着いた土ぼこりをパンパンと叩き落とした。


「もー! 勝手に逃げないでください!」


 エイダに追いつかれてしまった。

 面倒だなぁ……。


「エイダさん? どうしたんだにゃぁ?」

「ああ、キースくん。君が二人を止めてくれたの?」

「止めたつもりはないんだけど……にゃぁ」


 キースと呼ばれた少年は困った表情で頭をかく。


「ささ、ソフィアさん。さっそくお願いします!」

「ええっと……」


 どうすればいいのかと俺を見るソフィア。


 ううむ……どうしよう?

 もう一度逃げるか?

 そっちの方がよさそうだが……。


「あの、エイダさん。何があったにゃぁ?

 二人に何をさせようとしてるにゃ?」

「それはですね……」


 エイダは早口で説明する。


「えっと……その武器を試し打ち?

 傭兵科の武器庫に眠っていた、

 伝説の賢者が使っていた伝説の武器で?

 ……にゃぁ」

「そうです!」


 エイダは鼻息を荒くして肯定する。


 キースは何か察したのか、申し訳なさそうな顔をして俺たちの方を見て、ぺこりと頭を下げた。


「エイダさんが迷惑をかけたみたいだにゃぁ。

 その武器をこんな場所で試し打ちしたら、

 とんでもないことになるにゃぁ。

 絶対にやったらダメにゃぁ」


 どうやら彼は、この武器について詳しく知っているらしい。


 正直、ホッとしている。

 エイダの言われたとおりにしたら、とんでもないことが起きると感じた俺の予感は当たっていたらしい。

 彼が止めてくれて本当によかった。


「でっ……でもぉ」

「でもじゃないにゃぁ。

 もしこれをここで使ったりしたら、

 二人はもちろん、校舎や他の生徒も巻き込まれて、

 大事件になっていたにゃぁ。

 エイダさんは一生謝り続ける羽目になるにゃぁ」

「え⁉ 謝る⁉ 一生⁉

 すみません! すみません!

 ごめんなさい! ごめんなさい!」

「……また始まったにゃぁ」


 キースはうんざりした様子で言う。

 エイダがこんな風になるのは日常茶飯事のようだ。


「あの……キースさん」

「ええっと……」

「あっ、僕はウィルフレッドと言います。

 ご存じかもしれませんが、こっちはソフィア」

「うん、知ってるにゃぁ。

 てか、この学校の生徒で、

 ソフィアさまを知らない者はいないにゃぁ」


 この人までソフィアに“様”づけかぁ。

 よほど怖がられてるんだな。


「それで……ウィルフレッドって……あの?」

「ええっと……フォートン家のウィルフレッドです。

 アルベルトの息子の……」

「やっぱりにゃぁ。

 ソフィアさまと関わりがあるウィルフレッドと言えば、

 フォートン家の嫡男さんしかいないにゃぁ。

 お会いできて光栄だにゃぁ」

「あはは……どうも」


 なんかよく分からんけど、アルベルトのことは知っているようだ。


「自己紹介が遅れてしまった……にゃぁ。

 僕はキース・ハミルトンと言うにゃぁ。

 生徒会で書記を務めているにゃぁ」

「そうだったんですかぁ」


 この人も生徒会役員なのか。

 エイダみたいに愉快な性格じゃないといいが……。


「それで……エイダさん。

 どうしてこんなことを?」

「だっ……だってぇ。

 一度でいいからその武器を使ってるところを、

 この目で見てみたかったんですもん!」

「そんな理由で学校を危機に陥れようとしないで欲しいにゃ」

「ごめんなさい! ごめんなさい!

 失敗してすみません! すみません!」

「もう謝らなくていいにゃぁ」


 キースはしっぽをだらんと垂らして言う。


 この人の耳やしっぽには神経が通っているのか、ちゃんと動いている。作り物でないことは明白だ。

 触ったりしたら怒るのだろうか?


 ちなみにだが……人間の耳もついている。

 頭の猫耳は音を聞く器官ではないのか?


「あの……キースさん」

「呼び捨てでいいにゃぁ」

「え? でも……」

「僕もウィル君って呼ぶから、お相子だにゃぁ」

「はぁ……そうですか」


 妙になれなれしいな、この人。

 距離を詰めるのが早すぎる。


 まぁ……別に構わないけどさ。


「それで……キース。

 一つ聞きたいんだけど……」

「なんだにゃ?」

「ソフィアが持っているあの武器って……」

「ああ、それは……」


 キースは伝説の賢者が使っていたという、伝説の武器について解説してくれた。

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