31 ささやかな食事
食事を配り終え、ようやく俺とソフィアも席に着く。
並べられたのは魚と野菜の質素な食事。
しかしまぁ……色々とあったので腹が減った。
おいしくいただくこととしよう。
「それでは、食事の前のお祈りをしようか」
アルベルトがそう言うと、一同は顔の前で合掌して目を閉じる。俺も真似した方がいいかなと思って同じようにした。
「主よ、日々の糧を与えたもうたことを感謝します」
アルベルトは神に祈りを捧げる。
それからあれこれと色々な言葉を口にしていたが、日々の出来事を感謝する内容だった。
今日も皆、無事に過ごせました、ありがとう。病気もケガもしませんでした、ありがとう。私たちはとっても幸せです、ありがとう。何不自由なく暮らせています、ありがとう。
ありがとう、ありがとう。神様本当にありがとう。
そんな感じの内容。
最後に締めの言葉として、何か呪文のような言葉をつぶやいた。
キリスト教のエイメン的な?
「さぁ……早速、食べようか」
「いつもおいしいお料理ありがとうね、ソフィアちゃん。
本当に助かってるわ」
「いえ……そんな……。
私の作った料理なんて大したことないです」
セリカの言葉に謙遜するソフィア。
まぁ……本当に大したことない料理だけど、これだけちゃんと作れるのだから立派だと思う。
俺にも同じものが作れるかと聞かれたら、多分無理だと答えるだろう。
それではさっそく、食べさせてもらおうか。
まずは川魚……特に言うことはない。
普通の魚だ。
ちょっと小骨が気になるけど問題はない。
塩加減も焼き加減もちょうどいい。
難点なのは、トーストと合わせないといけないこと。
無性に白米が食べたくなる。
次に野菜のスープ。
こちらも問題はない。
ほんの少しだけ塩気を感じる以外は野菜の風味しかしない。
だしを使っていないのか、とても味気ない。
無性に味噌が欲しくなる。
まぁ……食べられなくはないので、問題はない。
これがこの世界の限界なのだろう。
次に蒸した野菜。
これは本当に蒸しただけ。
野菜本来の味わいが楽しめる。
マヨネーズ……無いよね、この世界に。
自分で作るにしても作り方が分からない。
どこかに転がってねぇかなぁ、マヨネーズ。
最後は……トースト。
これはもう本当にただのトースト。
ただし、俺が普段食べていたものと比べると、随分と質が悪い。ぱっさぱさでモロモロしている。スーパーに置いてある食パンって高級品だったんだなぁ。
ソフィアの料理は可もなく不可もなく。
食べる分には問題ないが、特別おいしいとは思えなかった。
ああ……向こうの世界の食べ物が恋しい。
お腹いっぱいに炊き立ての白いご飯が食べたいよ。
「今日もおいしかったよ、また腕を上げたね」
「ええ、とても上手になったわ」
「えへへ……そんな」
アルベルトとセリカに褒められて嬉しそうにするソフィア。
俺も何か言った方がいいかな?
「ソフィアは料理が上手なんだなぁ。
誰から教わったんだ?」
「え? それは……えっと……」
俺が尋ねると、彼女は気まずそうに眼を反らす。
「なんだ……変な事を聞いたか?」
「いや……その……えっと……ごめんなさい」
なぜか謝られてしまった。
まぁ、言いたくないんなら別に言わなくてもいい。
「それはそうと、ウィルフレッド」
「なんでしょうか?」
急にアルベルトから話題をふられて身構える。
何かとんでもないことを言われそうな気がした。
「今夜はソフィアさんと一緒に寝なさい」
「……は?」




