29 ソフィアの作った手料理
俺はソフィアと共に厨房へと向かい、食事の準備をした。
ちなみに、厨房の天井には穴が開いていない。
ソフィアが画びょうを踏んづけたのは別の部屋。
どういうわけか急にその部屋へ行く必要があると感じた彼女は、落ちていた画びょうを踏んで、二回にいる俺のところまで天井をぶち抜いて飛んできた。
……LUKの力って怖いな。
幸運のステータスって言うよりも、他人の思考をコントロールする力のように思える。わずかな数値でもこれほどの減少を起こせるのだから、もっと上限が高ければなんでもできるだろう。それこそ、宝くじを当てて億万長者にだってなれるはずだ。
この世界に宝くじがあればの話だが。
もしかしたら……ギャンブルにも応用できるのか?
だとしたらこの世界で賭博は成り立たないな。
いや……全員がLUKを消費すれば別か?
全員が自分の運の数値を消費してバトルすれば、一応勝負としては成り立つかもしれない。
けど……そうなったらもう賭博ではないな。別のゲームだ。どちらかと言えば格闘技に近いかもしれない。
この世界のギャンブルについての考察はさておき、食事の準備をしないと。
俺は出来上がった料理を皿に盛り付けて行く。
献立は川魚の塩焼き。蒸し野菜の盛り合わせ。野菜のスープ。バターを塗ったトースト。
とまぁ、実に健康的で経済的な内容。
別にまずそうには見えないのだが……味気なすぎる。
貴族の食事にはとても見えないな。
別に不満があるわけじゃない。
パンが白米でスープが味噌汁なら言うことはないが、このままでも十分に満足できる。
でも、アルベルトやセリカは納得するだろうか? 一応は元英雄の大貴族。食事だって贅沢なものをとっていたはずだ。
てゆーか、そもそもなんでソフィアが食事の準備を?
「なぁ……どうしてソフィアが調理番なんだ?
ファムがやればいいじゃないか」
「ええっと……ははは」
笑ってごまかすソフィア。
何か問題でもあるのか?
もしかして……下宿させる見返りとして、雑用を任せているのだろうか?
それはちょっと考えにくい。
彼女は画びょうを踏んだだけで天井をぶち破る問題児だ。過去に何度もボヤ騒ぎを起こしている。そんな危なっかしい子に調理をさせるなんて大問題だろう。
まぁ……彼女の料理はそれなりに見られる状態なので、まずくは無いと思う。それなりに調理の技術も身についているはずだ。
それでも俺は任せる気にはなれないが……。
ファムではなく、彼女が仕事をしているのには、何かしら理由があるはずだ。後でアルベルトに聞いてみるか?
料理をサービスワゴンに乗せて、俺たちは大ホールへと向かう。
歩きながらあれこれと話題を振ってみたが、会話は盛り上がらなかった。調理はどれくらいできるのかと聞いたら「それなり」との答え。得意料理は何かと聞けば「特にない」と言う。じゃぁ、好きな食べ物はと尋ねると「食べられればなんでもいい」とだけ。
ソフィアはあまり調理の話題で会話をしたくないらしい。そう察した俺は、話題を変えることにした。
「ソフィアってさぁ……マイスのことどう思ってるの?」
「……え?」
ソフィアは足を止めた。




