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27 変態駄メイド

「えっと……何も持ってないけど?」


 ソフィアはきょとんとした表情で言う。


「……え?」


 俺がファムの方を見ると、彼女はすでに例のブツを『影』のスキルによって亜空間に収納した後だった。


「おい! なんで隠したんだよ⁉」

「私は何も隠してなどいませんが?

 どうしたというのですか、ウィルフレッド様」

「ふざけんなっ!」


 しれっと真顔でそんなことを言うものだから、俺は思わず怒鳴り声を上げる。


「そんな大きな声を出さないでください。

 少し落ち着いたらどうですか?」

「おっ……おまぇ……本当に……」

「それにしても……急にあんなことを言い出すなんて。

 正直言って驚きましたよ」


 そう言いながら、さっき俺が吐き出した下着を拾うファム。


「え? ファムさん? それは……」

「私が履いていた下着です。

 どうしてもノーパンの状態で膝枕がしたいと、

 ウィルフレッドさまにお願いされたので仕方なく……」

「ええっ……」


 ドン引きした顔で俺を見るソフィア。

 確かに膝枕はしてもらったが……要求なんてしてないぞ!


「嘘つくんじゃねぇよ! この変態クソメイド!」

「あまり汚い言葉を使わないでください。

 ウィルフレッドさまの品格が落ちてしまいます。

 その身体はあくまで借りものであることをお忘れなく」

「ぐっ……このっ……」


 ここまで怒りを感じたのは久しぶりだ。

 キレちまったぜ、屋上へ行こうか。


 んなこと言って屋上へ呼び出したところで、俺がぼこぼこにされた挙句に大切なものを奪われるだけだ。

 この女、マジで強そうだからなぁ。


「それにしても、突然こんな要求をされたので驚きました。

 多少は我慢できますけど……何事にも限度があります。

 これからは控えて頂きたいものです。

 それと……自分の性癖を隠すために、

 罪を人に擦り付けようとするのは感心できませんね」

「おっ……おまぇ……」


 この女は……マジでクズだ。


 平然と嘘をつき続けている。

 ぶっとばしてぇ……!


「さて……と」


 ファムは拾った下着を履く。

 別に隠そうともせず、尻をこちらへ向けて堂々と。

 あまりにあられもない姿に、目を背けてしまった。


 全然エロさを感じないどころか醜悪ささえ感じる。

 この女……本当に気持ち悪い。


「あの……ファムさんの言ってること、本当なんですか?」


 ソフィアが不安そうに尋ねてくる。


「違う! こいつは……」

「あなたが何を言おうと無駄です。

 アナタよりも私の方が、ソフィア様に信頼されています。

 過ごしてきた時間の長さが違うのですよ」


 そう言ってニッと口元を釣り上げるファム。

 ……マジで怖い。

 コイツ、絶対悪役だろ。


「そっ……ソフィアはどっちを信じるんだ⁉」

「え? その……私は……」


 ソフィアは困惑した顔つきで、視線を泳がせる。

 口元に右手をグーにして当てる姿がとてもかわいい。


「私は……ウィル様を……」

「しゃっぁ!」


 俺は思わずガッツポーズした。


「ふんっ! これで分かったか、変態駄メイド!

 ソフィアは俺の味方だ! ざまぁみろ!」

「何を勝ち誇っておられるのですか?

 彼女が味方につけば私に何もされないと?

 そうお思いなのですか?」

「えっ……あの……」


 あまりにファムが堂々としているので、不安になる。

 ソフィアなど相手にならないと?


「とりあえず、私はこれで失礼します。

 ソフィア様。夕食の用意は?」

「え? あの……もう済んでます。

 あとは配膳するだけで……」

「では、アルベルトさまに声をかけてきます。

 ソフィア様は夕食を大ホールへ運んでください」

「はい……分かり……ました」


 いまいち状況の飲み込めていないソフィアは、ファムの言葉に素直に従う。

 あれだけのことをしておいて、まったく気後れすることもなく堂々とふるまう彼女の姿は、一周して清々しささえ感じる。

 本当の悪というのは、ああいう奴を言うのだろう。


「たっ……助かったぁ」

「え? ウィル様?」


 ファムが部屋から出て行くと、緊張の糸がほぐれて身体から力が抜ける。脱力した俺はソフィアの肩にもたれかかってしまった。


「ええっと……大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃない、全然だめだ。

しばらく、このままいさせてくれ」

「はぁ……」


 俺はソフィアの肩にもたれかかり、何も考えないで全身から力を抜いた。


 もう二度とファム(あの女)とは二人っきりになるまい。

 胸の奥でそう誓った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 膝枕の後のやり取りできゃー!えっち!と思っていたらファムちゃんの行動が予想の斜め上過ぎてビックリしました!! まさかそんな性癖を持っていたなんて……素敵!!
2022/09/25 00:51 退会済み
管理
[良い点] 27 変態駄メイド まで読みました。 ファムさん、行動が凄いですね! いろんな意味で激しいですね~。 楽しく読ませていただいています。(*´∇`)
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