26 ステータスを使ってみよう
ヤバイ。とにかくヤバイ。
早く何とかしないと危険が危ない。
ファムに拘束され、パンツを口に突っ込まれた俺は、人生で最大の危機に見舞われていた。
ウィルフレッドに好意を寄せていた彼女は、中身が入れ替わったのをこれ幸いとばかりに、その身体を好き放題に弄ぼうとしている。
苦痛を味わうのはなんの関係もないこの俺。
なんとかしてこの危機を切り抜けなければならないが、その手立てが思い浮かばない。果たしてどうやってこの難局を乗り切ったものか。
「ああ……もぅ、本当にかわいい。
こんなにおびえ切って……。
今まで我慢してきましたけど……もうだめ。
絶望に染まった顔が早く見たい」
そう言いながらファムは俺の目の前でブツをちらつかせる。
マジでこれを俺の消化器系の穴に突っ込むつもりなのか。
そこは排泄物を外へ出すための器官だ!
決して何かを入れるための器官じゃない!
んなこと言ったところで、彼女はやめたりしないだろう。
泣こうが喚こうが、かわいい顔して哀願しようが無駄。欲望を満たすために、暴虐の限りを尽くすはずだ。
残念ながら、俺は彼女に対抗するすべがない。
ステータスを使った身体強化では、数値が高い彼女が有利。
と言うか……ステータスでの身体強化ってどうやるんだろうな? ステータスをいじればいいのか?
ふと……あることを思いついた。
「もごーごご! もーごご!」
ブンッ……。
目の前にステータスが表示される。
どうやら口をふさがれていても、発音さえすればいいらしい。
「おや……まだ抵抗するおつもりですか?
何をしても無駄だと思いますが……。
試しに私と力比べでもしてみます?
その貧弱なステータスで」
鼻で笑うファム。
彼女は比較的、STRやVITの数値が低かった。しかし、俺よりはずっと高い。
そのため、いくらステータスを消費して抵抗したところで意味がない。
しかし一つだけこの状況で役に立つステータスがあった。
それは……。
「ぺっ……! LUK消費!」
なんとか口の中で丸まっている下着を吐き出して叫ぶと、ステータス画面のLUKの数値がみるみる減っていき、ゼロになった。
使い方は叫ぶだけで良かったのか?
「無駄ですよ……多少、幸運度があがったところで……」
どがああああああああああああん!
突然、部屋の床がぶち破られ、何かが飛び出してきた。
「あいたたたたた」
飛び出してきたのはソフィア。
彼女はこんなところで何をしているのか?
「え? ソフィア⁉ どうして?」
「あっ、ウィル様……実は落ちていた画びょうを踏んで、
痛さのあまり思わずあまり飛び上がってしまったんですけど、
気づいたらこんなことに……」
画びょうを踏んだだけで家に穴をあけるのか……。
恐ろしい子にもほどがある。
しかし、彼女のあまりに常識はずれな力のおかげで助かった。
「申し訳ありません……ウィル様……」
「いや、謝らなくていい!
そんなことより助けてくれ!
こいつが……」
「え? ファムさん? 何をしてるんですか?」
背後から俺を抱きしめるファムを見て、ソフィアは首をかしげる。
「別に、ちょっとたわむれていただけですよ」
彼女は俺の身体から手を離して拘束を解いた。
「はぁ! はぁ! 助かったぁ!
ソフィアあああああ!
ありがとおおおおお!」
九死に一生を得た俺はソフィアに抱き着く。
「え? 本当にどうしたんですか?
何かとても怖いことでも……」
「ファムが……あの女がっ!
あれで俺に酷いことをしようと……!」
「え?」
ファムが俺に何をしようとしたか、彼女が手に持っている物を見れば一目瞭然だろう。
それを目にしたソフィアは……。