25 禍々しきもの
「えっと……ファムさん? それは……」
俺は彼女が落としたブツに目が釘付けになる。
それは男性器を模した大人のおもちゃだった。
「見て分かりませんか?
快楽を求める時に使う道具です」
ファムは落としたそれを手に取り、俺の方へ差し向ける。
「ええっと……」
彼女の持つそれは非常に大きい。んなもん入れたら性器が壊れるんじゃないかと思えるほどのサイズ。
この人は……普段からこれを?
「ははっ……良い趣味してますね」
「ええ、自覚はしています」
この人はこんな太くてでっかい物を自分のアレに挿入して楽しんでいるのか……見る目が変わってしまうな。
しかし……趣味は人によってそれぞれ。安易に否定していいものじゃない。
「ええっと……それ使うんですか?」
「よろしければですが……」
「別にいいと思いますよ。
ファムさんの趣味なんでしょう?
最後までお付き合いします」
「えっ⁉ いいんですか⁉」
いつも無表情で淡々としていた彼女が嬉しそうに微笑む。
なんだ……急にどうした?
「えっ……ええ……別に構いませんけど」
「ふっ……ふふふ……ずっと願っていた夢がかなった。
こんなに早く実現するなんて……じゅる」
垂らしたよだれを手で拭うファム。
そのブツをプレイで使用できるのがそんなに嬉しいのか?
一人でも使えるだろうに……。
「さぁ……ではさっそく始めましょうか。
いい声を聴かせて下さいね」
そう言ってファムはそのブツを俺のほほに当てる。
「……うん?」
「何を分からないふりをしているのですか?
これをどう使うかくらい、分かっているはずでしょう?」
「ええっと……」
俺はファムの顔を見る。
すると、彼女の視線がある一転へ向けられていることに気づいた。
それは俺の下腹部……ではなく……。
「まっ……まさか⁉」
「その様子だと、本気で気づいていなかったようですねぇ」
にやりと笑うファム。
背筋がぞくりと寒くなる。
「これを使うのはアナタですよ」
「ひっ……ひゃああああああああああああ!」
彼女の言葉に気が遠くなる。
叫び声をあげて後ずさるが……。
すぅーっ……。
ファムの足元にできた影が彼女の身体を飲み込み、床の中へと引きずり込んだ。影はたちまち消失。かと思うと、不意に背後から何者かの気配を感じる。
「つかまえた」
「ひぎぃ⁉」
突然、背後から抱きしめられる。
背中に押し当てられたおっぱいの感触と、耳元でささやく甘い声が、その正体がファムであると教えてくれた。
背後から俺を抱きしめたファムは、見せつけるようにブツを俺の目の前に持ってきた。燭台から放たれるほの明るい光が、それの表面を艶々と照らしている。
なんて……禍々しい。
「さぁ……これをあなたの……」
「いっ……いやだぁ! やめてくれぇ!」
「どんなに叫んだとしても無駄ですよ。
私からは逃れられませんので……ふふ」
頭を動かして彼女の顔を見やると、ニタリと吊り上がった彼女の口元が目に入った。
このままでは捕食される。
そう悟った俺は何とか拘束を振りほどこうとしたが……。
「無駄ですよ、無駄無駄。
ステータスを消費して力を強化していますので」
彼女の言う通り、何をやってもびくともしない。
白くて細い腕はまるで鋼のように頑丈で、ピクリともしなかった。まるで鎖で縛りつけられたかのよう。
「さぁ……ご覚悟を……」
「嫌だああああああ……むぎゅ!」
口に何かを突っ込まれる。
なんだこの匂い⁉ まさか……。
「しばらく私の下着を咥えて大人しくしていてくださいね」
ファムがそう言ったのを聞いて、俺は気が遠くなるのを感じた。
コイツ……ただの変態ってレベルじゃねぇ。




