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23 目的は身体だけ

「かっ……身体を⁉」


 俺は自分の顔が引きつるのを感じる。

 何を考えているんだ、この女は。


「ええ、私の身体で……」

「ちょ……ほんと待って下さい!

 そんなこと急に言われても……。

 って! 下着を脱いでどうするつもりですか⁉」


 ファムは履いていた下着を下ろし、脱ぎたてのパンティを見せつけるかのように右手でくるくるともてあそんでいる。


「別に大した意味はありません。

 そっちの方がそそるかと思いまして」

「え? でも……え⁉」

「ご安心を、姦通するつもりはありませんので」

「ほっ、よかった……って、どゆこと⁉」


 じゃぁ、なんで下着を下ろしたのか。

 俺が疑問に思っていると、彼女は下着をポケットにしまい、ベッドの端に腰を下ろした。

 そして、ポンポンと自分の膝を叩く。


「さぁ……おいでください」

「……え?」

「膝枕ですよ、膝枕。

 この程度なら浮気にならないでしょう?」

「ううん……」


 膝枕?

 別に構わないが……なんで下着を脱ぐ必要が?


 まぁ……別にいいけどさ。


「膝枕くらいだったら……」

「では、こちらに」


 俺は彼女の隣に腰かけ、ゆっくりと身体を横にする。

 太ももの上に頭を置いたら身体から力を抜いてリラックス。


 ……なんだかなぁ。


 膝枕なんてしてもらったの何年ぶりだろう。

 記憶にないなぁ……。


 ファムの膝の暖かさをほほで感じながら、俺は何も考えないモードに入る。頭の中を空っぽにして目を閉じると、嫌なことを全て忘れられる気がした。

 このまま眠ってしまってもいいかな。


 しかし……何で下着を脱ぐ必要が?


「どうですか、サトルさま。私の膝枕は」

「ええっと……心地いいですよ」

「それだけですか?」

「……うん?」


 他に何を感じればいいんだよ。


「私が折角、下着を脱いだというのに、

 感じたのは癒しだけなのでしょうか?」

「ええっと……」

「劣情を覚えたりはしませんか?」


 しない……と言えばウソになるか。

 ノーパン状態の女性の膝の上に俺は今、頭を乗せているのだ。考えようによってはかなりの変態プレイ。

 つっても、結局はただの膝枕だからな。

 それ以上でも、それ以下でもない。


 劣情を催すにはちょっとプレイの度合いが弱すぎる。


「それなりには……まぁ……」

「もっと好きに私の身体を弄り回してもいいのですよ?」

「それは……」


 それはさすがにまずいんじゃないか?

 一線は越えないと言っておきながら、実はやる気まんまんとか?


「さすがにそれは……ちょっと……」

「誰も見ていませんよ。サトルさまがお望みなら私は……」


 えっと……待って?

 なんで俺がウィルフレッドではないと分かっているのに、男女の行為のお誘いをするの?

 逆に俺がウィルフレッドでなく、サトルだと分かっているから、こんなことをするのか?


「すっ……すみません、ちょっと待ってください」


 俺は慌てて身体を起こす。


「俺はウィルフレッドさんではなくて……」

「存じております。あなたは全くの別人です」

「じゃぁ……どうして?」

「私が欲しているのは、心ではなく、

 あなたの身体だからです」


 ええっと……つまり……。


「このウィルフレッドの身体を、好き放題にしたいと?」

「つまるところ、そう言うことです」


 そっかぁ……身体目当てかぁ。


「……すみません、理解が追いつきません」

「別に複雑に考えなくてもいいのです。

 私はずっとウィルフレッドさまを見守ってきました。

 彼の傍にいるうちに、彼のことが好きになってしまいました。

 けれども……その想いは決して叶わない。

 今まではそう思っていました。ですが……」


 彼女は俺の顎に指を添える。

 真っ白な指には傷一つない。


「今のアナタはウィルではなく、サトルさま。

 多少火遊びをしたところで、問題はないかと」


 そう言って口元を釣り上げる彼女から、得体のしれない不気味さを感じた。

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