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184 昨日のこと

 それから談話室へ行って、朝が明けるまでソファで寝転んですごした。


 あれからファムは俺の前に現れなかった。

 どんな顔をして彼女に会えばいいのか分からない。


 やはり予想していた通り、ファムは父親を殺してなかった。

 殺したも同然と言っていたのだから、何かしら死に関する出来事はあったのだろう。


 でも……直接手にかけたわけじゃない。


 いったい何があったのか。

 そのことを考えると全く眠れなかった。


 幸い、カテリーナがスキルと魔法で全回復してくれたので、体力的には問題ない。

 今はただただお腹がすいた。


 何か食べないと動けそうにないなぁ。


「よぉ! 親友! 昨晩はお楽しみだったか⁉」


 談話室へダルトンが入って来た。

 俺は彼の顔を見てため息をつく。


「いや……色々あって、ダメだったよ」

「え? なんで⁉」

「わけを話すと長くなるから、勘弁してくれ。

 カテリーナさんには謝らないと」

「うわぁ、お前……何かやらかしたのか?」


 やらかそうとして、ダメだったんだよ。


 冷静になって考えると、ファムに止めてもらってよかったのかなと思う。

 カテリーナに手を出したら色々と面倒なことになりそうだ。


 本人は誰も見ていないと言っていたので、関係を持っても秘密にしてくれるかと思う。

 でも……それを信じるのはちょっと無謀だよな。

 彼女が秘密を守るとは限らない。


 ファムに言われてあれこれと考えた。

 俺が好きなのは誰なのかと。


 マイスやソフィアの顔が思い浮かんだが、カテリーナではなかった。好きでもない相手と一晩だけの関係を結ぶのは、男として不誠実かもしれない。


「俺はダメなやつかもしれん」

「ああ……頭は良いけど、バカな奴の典型だよな」

「たまにお前みたいなやつが羨ましくなるよ」

「俺だって悩みくらいあるんだぞ」


 微妙に噛み合ってない会話をしていると、談話室の扉が開く。

 入って来たのはカテリーナだった。


「あっ、昨日はごめんなさい……」

「いえ……私の方こそ無理やり……」

「いやいや、俺がハッキリしなかったから……」

「でも私が……」


 お互いに謝罪し合う。


 謝って済む問題ではないかもしれないが、やはりちゃんと謝罪すべきだと思った。

 カテリーナの気持ちを踏みにじるようなことをしたのだから。


「え? 無理やり? マジ?」


 信じられないと言った顔でカテリーナを見るダルトン。

 変な誤解をしそうなので、釈明しておく。


「無理やりじゃない。彼女がそう表現しただけだ」

「そっか、まぁ……いいけどさ」

「なぁ、今の話は聞かなかったことにしてくれよ。

 あと、昨日のことについても……」

「分かってるよ。本命にばれたら大変だもんな」


 ダルトンはにんまりと笑って言う。


 俺が言うのもなんだけど、コイツも結構えげつない性格してるよな。


「それで……今日はこれからどうするんだ?」

「バートンさんに会いに行こうと思ってる。

 ここから冒険者ギルドまで遠いけどな」


 とりあえずバートンを勧誘して、どんなリアクションを取るのか確かめたい。

 ゲルグからの手紙があるとはいえ仲間になってくれるとは限らない。


 それと……他にも冒険者で有能な奴がいたら、スカウトしたいな。

 もしかしたら神スキルの持ち主がいるかもしれないし。


「まぁ、馬車に乗ればすぐだろ。

 この後すぐに行くのか?」

「ああ……でもその前に……」


 ぐぅ。

 腹の虫がなる。


 お腹が減りすぎてもう限界。

 早く何か口にしたい。


「そんな調子じゃ、何も出来ねぇな。

 食堂でもいくか!」

「ああ……そうしよう」


 手持ちは心もとないが、朝食を食べるくらいの金はある。

 とにかく何か口にして活力を付けよう。


「私もご一緒してよろしいですか?」

「ええ、もちろん構いませんよ」

「よかったぁ……てっきり嫌われたものかと」


 ホッとしたようにカテリーナが言う。

 やはり不安にさせてしまったらしい。


 申し訳ない気分だ。






 食堂へ行って、料理を注文。

 パッサパサのパンに味の薄いスープ。

 そして何かの肉を煮込んだ料理。


 こんな粗末な食事でも、空腹になると奇跡でも起きたかのように美味しく感じるから不思議だ。

 空腹って最高のスパイスだよな。


 俺は次々に料理を平らげ、あっという間に完食。

 二人が食事を終えるよりもずっと早く食べ終えてしまった。


「食べるのはえーよ。

 もっとよく噛んで食べろよ」

「ごっ、ごめん」


 ダルトンに言われて、非常に恥ずかしい。

 まさかこいつから注意されるなんて。


「あの……ウィルフレッドさん」


 マイスがやって来て声をかけて来た。

 何やら不穏なものを感じる。


「お話がありますので、よろしいでしょうか?」

「ああ……いいよ」


 話ってなんだろう?

 まさか……。

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