173 スペックの確認
手続きを済ませた俺たちは、それぞれのスペックを確認するために現存ステータスとスキルとその他の技能を書いたキャラシートを作成することにした。
現存ステータスは、それぞれ十分な数が溜まっているが、ダンジョン攻略が長期に及ぶことを考えると心もとない。
と言っても、ステータスは他人からの評価を上げないとストックできないので、補充もままならない。
切り札として使うのがベストだろう。
ちなみに、俺とファムは生徒会との戦いにより、ほとんどのステータスを消費してしまった。
特にファムはHPの値をほとんど使いきってしまったので、新たに補充する必要があった。
この世界では、評価ポイントを教会でステータスに変換することができる。
手数料を支払うとポイント消費に応じた数値をストックできるのだ。
ちなみにこれは誰でも簡単にできて、時間もかからないのであっさりと終わった。
しかし……いちいち教会へ行かないと補充できないのは厄介だな。
ステータスを消費すれば驚異的な力が発揮できて便利なのだが、気軽に使うものではない。
やはり普段から戦闘能力を身に着ける訓練を行い、基礎能力を底上げすることが大切だ。
「そう言えば、魔法ってINTを消費して発動するんでしたっけ?」
「はい、だから他のステータスに数値をふれないんですよ。
戦闘面ではお役に立てないかと思います」
申し訳なさそうに言うカテリーナ。
彼女は評価ポイントのほとんどをINTにふっており、他のステータスはほぼ0。
戦闘での活躍は期待できないという。
魔法科の生徒は基本的にINTを消費することを前提としているので、評価ポイントが得られないと役に立たない。
普段から礼儀正しく振舞う必要があり、人前で横柄な態度を取ったり、他人の悪口を言ったりできないのだ。
そのため、魔法科の生徒はしばしば、いじめの対象となる。
やられてもやり返せず、ただ耐えるしかない彼らは、格好の標的となるのだ。
傭兵科よりもずっと不遇かもしれないぞ。
「ダルトン、お前は?」
「俺は騎士科だからな。
普段から戦う訓練を受けているし、
それなりに役に立つと思うぜ。
ほら、力こぶだってこんなに」
彼は腕を曲げて力を入れて見せる。
それなりに筋肉はついているようだが……。
「ステータスは?」
「機械操作のためのINT以外はSTRに全振りしてる」
「…………はぁ」
「なんだよ?」
いや……いいんだ。
お前が大して頭良くないことは、最初から分かっていたさ。
「ちなみに身体はどうなってる?」
「は? 身体?」
「ちょっと脱いでみてくれよ。
上だけでいいから」
「へ?」
俺はダルトンを上半身裸にさせる。
確かに騎士科の生徒だけあって、それなりに立派な体つきをしていた。
無駄な肉が付いていない絞られた身体。
しかし……それでもやはり筋肉が足りない。
ゴッツのように筋肉があって体躯が大きいわけでもなく、身長は俺と同じくらい。
試しに俺も上半身裸になってみたが、体格や筋肉量で大した差はなかった。
むしろ……。
「なぁ、ちょっと腕相撲してみようぜ」
「え? いいけど……」
俺はダルトンと腕相撲をすることにした。
テーブルに肘を付けて手を組み合わせ、ファムの合図で勝負開始。
結果は、3戦やって俺の一勝二敗。
最初の二回は負けたが、最後の勝負だけ俺が勝った。
「ふんっ、なかなかやるじゃねぇか」
全勝できなくて悔しかったのか、ダルトンは口をとがらせる。
普段から訓練を積んでいるコイツが3勝すべきなのだが、結局俺に一敗することとなった。
うん……多分だけど、ダルトン弱い。
腕相撲をしてなんとなく分かったことだが、コイツは効率の悪い力の使い方をしている。
実は最初の二戦、俺はかなり力を抜いて戦った。
できるだけ防御に徹するようにして、無駄に体力を消耗しないように心がけ、できるだけ勝負を長引かせたのだ。
すると、最初の二戦で力を使い切ったダルトンはすっかりと弱ってしまい、三戦目はあっさりと勝つことができた。
こちらの思惑にすっかりはまってしまった彼は、筋力で勝っているにも関わらず、敗北を喫することとなる。
「ダルトン、ちょっとゲームをしてみないか?」
「は? ゲーム?」
「ああ……手押し相撲って言うんだけどさ」
「テオシズモウ?」
手押し相撲とは、二人がお互いに向かい合い、手と手を押し合って行うゲームだ。
先にバランスを崩して倒れたら負けという単純なルールだが、手を引いて敵に空振りさせたり、フェイントをかけて態勢を崩したりと、駆け引きが重要になってくる。
単純に力で相手の手を押すだけではないのだ。
ダルトンは簡単にルール説明を聞いて、やる気になった。
負けるとはこれっぽっちも思ってないらしい。
「じゃぁ、始めようぜ」
さっそくダルトンと向かい合い、勝負を開始する。
果たして結果は――




