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171 サリサさん

「きゃはははは!

 ファム、あなた本当に変わらないね!

 相変わらず辛気臭い顔してて!

 見るからに地味で、ブスで、陰キャで!

 笑っちゃう! きゃはははは!」


 キーの高い声で笑ながら近づいて来るのは、小さな女の子だった。


 身長はソフィアよりも低く、かなり幼く見える。

 髪はボブショートの金髪。

 深緑のマントをはおり、その下にはレザーアーマーを身に着けている。


 ううん……なんだこの人。

 なんかキノコみたいな見た目だな。


 どうやらファムとは知り合いみたいだ。

 彼女もエルフ族のようで、耳がとんがっている。


 もしかして……同郷の親戚とか?


「どうして……あなたがここに?」


 ファムはうろたえた様子で、どうしてと繰り返した。

 彼女が現れたのが意外だったのだろうか?


 英雄学校に通う生徒はみんな人間なので、ファム以外のエルフに会うのはこれが初めて。


 というか、今までファム以外の亜人種と出会ったことがない。

 ちょっと新鮮な気分である。


「どうしてって……説明する必要ある?

 まぁ、話してあげなくもないけど」

「まさか……私を追って……」

「んなはずないでしょ。

 あなたと出会ったのは本当にタダの偶然。

 私、この子の家庭教師をしてるの」


 そう言ってヘレーネルを指さす少女。


 家庭教師?

 こんな小さな子供が?


「なぁ……彼女の言ってることは本当なのか?

 あんな小さな子が家庭教師?」

「彼女はああ見えて、老齢のエルフです。

 狡猾で猜疑心が強く、おまけに嫉妬深い」

「ちょ! 誰が老齢よ!

 まだ三桁行ってないんだから!」


 ファムの言葉にかみつく少女。


 三桁というのは多分、年齢のことだろう。

 80~90歳くらいなのだろうか?


「エルフって100歳超えないと、

 身体が成長しないの?」

「いえ、彼女が特別幼い容姿をしているだけです。

 他のエルフはちゃんと成長しています。

 ここも……」


 ファムはそう言って、自分の乳を両手で下から支えるように持ち上げる。


 それを見たエルフの少女は忌々しく舌打ちをした。


「ちっ……相変わらず、嫌らしい性格してる。

 本当に変わってないね、アナタ」

「サリサさん、あなたも相変わらずですね。

 あの時のままで、とても可愛らしい」

「きー――――ッ! なんなの⁉」


 金切り声を上げるサリサさん。

 ヘレーネルといい、この人といい、すぐ感情的になる。


 こんな家庭教師で大丈夫か?


「えっと、二人はどういう関係なの?」

「同じ里で生まれ育った仲ですね。

 ただそれだけの関係です」


 ファムはつまらなそうに言う。


「はぁ⁉ 何を言っているの⁉

 同じ一族の血を引く仲でしょ!

 他人みたいに振舞わないでくれる?」


 同じ一族?

 つまりこの人は……。


「王族の人?」

「はい、しかも分家ではなく、宗家。

 王位継承権を持つ血筋です」


 へぇ……つまりは王が本妻との間に設けた子孫ってわけか。


 たしかファムのお父さんは側室との間にできた娘と結婚したんだよな。

 彼女からしたら、サリサの方が地位は上になるのかな?


「そう! この私は誉れ高きボストールの子。

 サリサレヴィアート・ボストール・エルリーゼ・スィフェード・エルン・ビート・コルスウェーヌよ!」


 なっが!

 名前、長っっっ!


 ファムが小声で解説してくれたが、ボストールは父親の名前、エルリーゼは父方の祖母の名前、スィフェードは住んでいる森の名前、エルンは里の名前、ビートはご先祖様が好きだった野菜の名前、コルスウェーヌが家の名前。


 つまりサリサレヴィアート・コルスウェーヌが名前と名字。

 後はなんかノリでつけたみたいな感じになってるな。


 ちなみにファムは短縮してサリサと呼んでいるそうだ。

 俺もそれに倣ってサリサと呼ぼう。


 全部覚えるのは面倒だ。


「その由緒正しき王族のお方が、

 どうしてクルセルドなんかの家庭教師なんかに?」


 なんか、と二回続けて使うファム。

 腕を組んで見下すようにサリサを見つめ、明らかに馬鹿にした態度を取っている。


「きー――――――! 馬鹿にして!

 あんたなんか! あんたなんか!」

「今、僕の家も馬鹿にしたよね?

 主人も主人なら、従者も従者だね。

 二人そろってホント無礼」


 俺たちの態度に腹を立てる二人。

 本当に分かりやすい性格をしてるな、この人たち。


「ふんっ!

 クルセイド家の当主が家庭教師を派遣して欲しいって、

 とーさまに直接、依頼しに来たの!

 だから里で一番優秀な頭脳の持ち主である、

 この私が抜擢されたってわけ!」


 ぺったんな胸に手を当ててどや顔で言うサリサ。

 小学生がふざけてるみたいで、見ているとなんかむず痒い気分になる。


「そうですか、よかったですね」

「うん!

 …………じゃない!」


 ファムが笑顔で言うと、つられて笑顔で返事をしてしまうサリサ。


 この人……本当に小学生なんじゃないか?

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