165 危険から遠ざけるため
ソフィアについてアルベルトと話していたら、当の本人に聞かれてしまった。
まずいと思った俺は慌ててフォローに入る。
「ソフィア……その、今の話なんだけどさ」
「うん、聞いちゃった」
「あの……どこから聞いてたの?」
「え? どこから?
ええっとそれは……『ちんぽこ』から」
がっつり全部聞いてましたね。
これは完全にアウトです。
「そうか……『ちんぽこ』聞かれてたかぁ」
「うん。あの……その……」
もじもじと恥ずかしそうにしているソフィア。
これ下手したら大爆発しませんか?
「あとは任せた、二人でゆっくりと話すといい」
そう言ってアルベルトは俺の肩を叩き、さっさと小屋の中へ入っていく。
くそったれ!
人に全部押し付けやがって!
恨むぞアルベルト!
「あのっ……ウィル様。
男の人の股にぶら下がってるって言ってたけど……。
『ちんぽこ』ってなんなの?」
「ええっと、それは……」
この様子だと、男性器の存在すら知らなそうだな。
下手に口を滑らせたらソフィアが大爆発して何もかもが灰になる。
慎重に言葉を選ばないと……。
さて、なんて答えればいい?
「その……あれだよ。
男の股の下にはさぁ……
女の子にはついてない物がぶら下がってるんだ。
それを『ちんぽこ』って呼んだりもするよ」
「そっ……そうなんだ……知らなかった」
「うん、そうなんだよ」
納得してくれたかな?
いや……頼むから納得してくれ。
間違えても見せろとか言うんじゃない。
「その……ウィル様。
良かったらだけど……」
あーこれはぁ……絶対見せてって言う流れですね。
このままだと完全にあうあうな展開になりそう。
ざざざざざっ!
物音がしたと思って目を凝らしてみると、小屋の後ろの方から勢いよく四人がかけて行くのが見えた。
どうやら俺たちの会話を盗み聞きして、このままだとヤバいと思って中にいた四人が揃って脱出したようだ。
爆発に巻き込まれたら大変だもんね。
だとしても……俺一人置いて逃げるのは酷くない?
「見せてくれないかな?」
「何を?」
「ちんぽこ」
「ううん! どうしよっかなぁ!」
ついにソフィアは『ちんぽこ』を見せるように要求。
このままだと本格的にヤバイ。
いや、普通に断ればいいんだよ。
でももし彼女が『ちんぽこ』について興味を持ち、その正体が分からないままモヤモヤした状態で日常生活を送ったとする。
するとある日『ちんぽこ』に巡り会ってしまうわけだ。
何気なーく『ちんこぽ』について調べていたら、その先の行為にたどり着いてしまい、大爆発を起こしてしまう可能性もある。
ソフィアがエッチな情報に少しでも触れたら危険。
なので、できるだけ彼女が『ちんぽこ』に興味を持たないように仕向けたい。
しかし……無理があるよなぁ。
ソフィアくらいの年になれば、異性の身体にも興味を持つだろう。
俺だって小学生の高学年の頃には、『おっぱい』に目がなかった。
彼女が『ちんぽこ』を見てみたいと思うのは、至極まっとうな欲求だと思う。
だとしても、直接彼女に見せつけるのは危険だ。
不意に変なスイッチが入って大爆発を起こすかもしれない。
では……どう伝えるべきか。
考えろ、考えろ俺。
ソフィアを爆発の危険から遠ざけるために、『ちんぽこ』についてどう伝えるか。
腕の見せ所だぞ。
「ソフィア……聞いてくれ。
『ちんぽこ』はな……『ちんぽこ』は……」
「ちんぽこは?」
「それは……」
ダメだ、どう考えても詰んでいる。
そう思った途端、俺の脳にあるスイッチが入った。
「はい、それでは今回特別にですね、『ちんぽこ』の仕様をご紹介いたしますね。巷でよく耳にする『ちんぽこ』なんですけど、実はそれほど怖くないというか、むしろ親しみが持てるというか、割と身近なものなんですね。『ちんぽこ』と一口に言っても様々なタイプがございますが、今回ご紹介するのは最もスタンダードで扱いやすいタイプとなっております。導入を検討されているのであれば、是非とも最後までお聞きください」
「……え? なに? 急にどうしたの?」
俺は前世の経験をフルで生かして、『ちんぽこ』がいかにありふれているか、触っても危険がなく安全なものか、長々と説明した。
もちろん、ただ話すだけではだめだ。
とにかく延々とそれっぽいことを語り続けることが大切。
相手に口をはさむ余地を与えてはいけない。
反論や疑問など思い浮かぶ間もなく言葉で圧倒し、最後までノリと勢いで押し切る。それが現役だったころの俺のスタイル。
そう……この方法であればソフィアも……。
「ですから『ちんぽこ』は……」
「ウィル様じゃない」
「……え?」
「あなたなんかウィル様じゃない!」
ソフィアが叫んだ。




